終わる平穏
その昔、世界に邪悪なる者で溢れていた。
邪悪なる者達を統べるのは邪神と呼ばれし者
邪神達に立ち向かうべく闘いに挑んだのは聖女セーランド
そして、勇者
聖女と勇者の活躍により、邪神は滅び世界に平穏が訪れた。
この世界には五つの大陸がある。
一つの大陸に一つの種族が住み、それぞれの問題はあるが大きな戦争も無く均衡を保っていた。
文化と知恵で発達する人間が住む、ニュールベン大陸
巨大な山と技術で発達する精霊族が住む、シルエ大陸
肥沃な大地と作物で発達する獣人族が住む、トルティア大陸
雄大な翼と運搬で発達する龍翼族が住む、グルバイア大陸
学問と魔術で発達する魔族が住む、サーメル大陸
それぞれの大陸に行き交う者もおり、世界は平和である……はずだった。
ニュールベン大陸
この大陸には三つの大国と幾つかの小国で成り立っていた。
その内の一つの大国、かつて世界を救ったとされる聖女セーランドが作った国で突如として内乱が勃発した。
セーランド王国、玉座の間にいるのは剣を握り締めるアデル王と彼に庇われているヘリア女王
彼らが見つめる先には、複数の反乱兵達だ。
「ガイア……まさかお前が…お前が反乱を起こしたのか。」
「そうさ、あんたに任せられねぇからな。」
反乱兵を割るように、ガイアはアデル王に近付いていく。
「ガイア!どうしてなの?あんなにも平和を望んでいる貴方がこのような……」
「ヘリア女王、平和を望むからこその反乱だ。……まぁ、平和ボケしていた俺は死んだ。平和を保つには力だ、絶対的な力を持つことが平和に繋がるんだ!!」
ガイアが吠えるように叫ぶと彼の周りに風が吹く、尋常じゃないその様子に二人は圧倒される。
「死ねぇぇ!!」
「ヘリア!」
彼の周りに吹いていた風が刃となる、アベルはヘリアを守るように立ち、剣を構える。
「はぁ!」
一気呵成、風の刃を切り裂く。
「流石に無理か。」
「無駄だ、ガイア。例え魔術をその身に宿そうと、この剣の前では無意味。良く知っているだろう?」
セーランド王国には代々伝わる一振りの剣がある。
斬魔の剣アルター、この剣は有りとあらゆる魔術を斬る事が出来る。
「だからこその兵士さ、魔術は斬れるが兵は斬れんだろう?平和ボケの王様」
「この国を乱すならやむ無し。斬られたい者から前に出よ!」
アベル王の気迫はガイア程の脅威は無いが、反乱兵に動揺を与えられは出来る。
反乱兵達は動こうとはするものの、一向に踏み出せない。
「なら、これならどうだ?」
ガイアが右手を上げる
「また魔術か、無意味だと行った筈だ!」
アデルが右手を下ろす、だが魔術は発動しない。
「動くなアベル王」
「うぁ、ア……アベル…」
「なっ!?ヘリアァ!!」
全く気付けなかった、ヘリア女王の首もとに、刃物をつきつけている黒づくめの人間が立っていた。
「アサシン…!ガイア、まさか貴様!!」
「終わりだアベル!少しでも動けばヘリア女王は死ぬぞ?」
「くっ、くっぅぅ……!」
「ヘリア!……わかった、好きにすればいい。」
アベルは足元に剣を捨て、抵抗の意思を無くした。
「心優しい王様で助かるぜ…ま、だから死ぬんだがな?」
ガイアがアベルに歩み寄りながら、剣を拾う。
そのままアベルの腹に剣を突き刺す!!
「ぐぁっ!うっ……く…っ……ヘリア……レナ……リ………」
ガイアにもたれ掛かるように、アベルは息絶えた。
「いやあぁぁぁ!アベルぅぅぅ!!」
「はあっはっはっはっ!!!これでこの国は俺の国だぁ!俺は選ばれたんだぁ!!」
玉座の間にはガイアの狂った笑い声と、ヘリア女王の絶叫がこだました。