もう、隠すのは終わりにしよう
どうも、透冴翡翠です。大変お待たせしました。
レイモンドのちょっと違う面を書くのが難しかったです。彼でありながらも、彼でない感じがなんとも言えませんでした。w
レイモンドは、水をたっぷり入れた桶を持って、ベッドの方へと向かった。
ベッドの上には、リンが横たわっている。
「まだ顔色が悪いな……」
リンの額に置いたおしぼりを水に浸し、しっかりと絞る。
それを畳み直し、また額に置く。
この数時間、レイモンドはその動作を繰り返していた。
医学や魔法にまったく知識の無いレイモンドにできることが、これくらいしかなかったのだ。
当の本人はそれがとてももどかしくて、悔しかった。
いつも笑顔だったリン。
その面影はすっかりと消え、ただただ苦しそうにしている。
それでも美しい彼女の顔は、余計にレイモンドの心に響いた。
膝の上に置いた拳を、ギュッと握る。
「なぁ。何があったんだよ、リン」
搾り出したような声で、レイモンドは意識の無いリンにそう言った。
「最近お前、何か隠してただろ。これでも気づいてたんだぜ? でもお前が『詮索するな。』みたいな目で見るから、俺は止めておいたんだ。今となっては、すごく後悔してるがな」
低くて、囁くようなその声は、怒りと悲しみを滲ませていた。
彼の肩は次第に震え始め、小さな嗚咽が聞こえてきた。
頬から拳に、涙が何粒か流れ落ちる。
「……前に俺が、『何でいつも俺を歓迎してくれるんだ』って聞いたことがあったよな。それにお前は、『初めてできたお友達だからです』って答えた。あの時俺、嬉しかった、んだと思う。俺、村だとそんなに仲良くしてる人、いないから。お前みたいに気軽に接することができるやつがいなかったんだよ」
レイモンドは突然、過去の話をし出した。
涙は止まらず、声も震えている。
リンは無論、返事をしない。
「気づいたら、お前は俺にとって、大事な人となっていた。そんな人ができるなんて、俺は夢にも思わなかった。だから、俺はこれでもお前に、すごく感謝している。できれば、こんな穏やかな日々が続いたらいいな、なんて思っていた。
……だから目を覚ませよ。またお茶を飲もうぜ。そん時は、お前の話を聞かせてもらうからな」
涙声で囁いた小さな告白は、横たわる魔女の耳へと届いたかどうか、誰も知らない。
だけど心なしか、リンの表情に安らかさが少し戻っていた。
「……はい。約束です」
レイモンドは目に涙を溜めながら、スッとリンの方を見た。
彼女はまだぐっすりと寝たままだった。
でも、彼にはちゃんと分かった。
理屈とかではなく、心で感じられる何かで。
間違いなく、リンの声だった。
彼は、思わず笑った。
介護を続けていると、布団からはみ出たリンの柔らかい手に気づいた。
それを手に取り、布団の中に戻そうとした。
しかし、彼はその手を止めた。
そして、その小さくて愛おしい手に、そっと、静かに口付けをした。
この小さな少女に、このことが知られないのが、大変残念である。
どうか、どうかこの二人のこの時間が、永遠と続きますように。
そんな光が、微かに二人に降り注がれた瞬間であった。
余談ですが、テスト当日直前に書き終わったものなので、綻びが色々あるかもしれませんが、そこも楽しんでいただけたなら幸いです。
―Hisui Tougo