9、発見
寂れたとある商業区の倉庫に声が響く。
「これが本当に、金になるんすか」
銀行を襲った男達のが持って来た物を見て留守番をしていた者たちが訝む。
バックの中にはデータチップのような物が何百枚と入っていた。
今時たかだかデータチップ如きに、大金をかける者などいない。もし機密情報が入っていたとしてもこんな大事にしてしまっては意味がないからだ。その為、余計に疑ってしまうのは仕方ないことだ。
「問題ない、後はこいつを約束の場所に時間内に持っていけば金と交換出来る」
念のため遠回りして追跡がない事を確認していたせいで遅くなり、仲間からの不信感を買ってしまったためバックの中身を公開する事で払拭する事になったが。
「お前ら、いい加減にしろ‼︎見終わったら離れろ」
いつまで経ってもバックを閉じずに中身を見続けていた者たちに言い放ち、バックを回収した丁度に車を出しにいた奴らが戻ってきた。
「準備できました。いつでも移動できます」
「見張りの奴を呼んでこい、さっさとここから離れる」
「分かりました。それと、人質として連れてきた男はどうします?」
銀行から拉致して来た男は邪魔になるので車中に放置していた。
「ああ、もう暫く連れて動く。此処がバレないように途中で捨てる予定だ何かと此処は便利だからな」
そう言うと、数人を残して用意された車の方へと歩いて行った。
支持された通りに見張りをしていた者たちに出発する事を伝えようと倉庫の入り口へと向かったが、見張りが壁に背をつけて座り込んでいた。
「おい、何サボってんだよ。リーダーに見つかったら伸されるぞ」
一番近くにいた男の肩を叩きサボっている男を起こそうとするが勢いよく叩きすぎたのか起きる事なくそのまま、倒れてしまった。
それでも起きない男に呆れながら近寄ろうとしたが、首筋にチクリと針が刺さったかのような痛みを覚えそのまま意識が無くなった。
『全く気づかれませんでした』
「ま、楽に越した事は無いからいいけど」
あれから急いでここに来たけど、まるで見つけてくださいと言わんばかりに人を配置していたのですぐに見つける事がてきた。
『だから、言ったでしょ。こんな仲間作ら無いって』
「ただの強盗にお前と比べる事自体間違ってる。それはいいとして、こ奴らどうしようか」
『出来るだけここら辺の物には触ら無い方がいいかもしれないわ。殺人事件じゃ無いから指紋を取られる可能性は低いでしょうけど』
「分かった。勝手にこんな事してるのはバレたく無いからな、態々先輩を巻いた意味がなくならない内に取り返してしまおうか」
入り口の先には人気が無いが念のため戦えるようには準備しとこう。
奥へと入りながら還霊術を使う。
「いいか、存在させる迄は作らない。意識を刈り取るために不完全の状態で作るからな」
『一眞の役に立てるのならなんでもいいです』
『あら、焼けるわね。でも、私は実在させている物を触りたいわ』
泉璃はご褒美が目的だろうけど大した物じゃないし放っておこう。由羅は、気を付けないと大変な事になりそうだ。
「刃渡り、80㎝ほどの物で良いな。長いと他の物も切りそうだし」
そう言って、掌を上に放出した霊力の形を整え濃度を増していく。
掌より少し浮いた状態でできた刀を握る。
武器を出して準備がてきたあたりで、隠れられる場所が少なくなってきた。
「この部屋には何人残っているのかな」
さっきの見張りを倒した時に、こっちの方から来たということは何かあった可能性がある。警察などはこの場所を見つけたには早すぎる。大方、ずらかる用意でもできたのだろう。
自身の体が霊力の塊に感じられるほど意識を集中する。あまり意識を集中しすぎると感じなくても良い微量の霊力も感じてしまうためこれくらいで十分だ。
この部屋に感じられる霊力は少なくも3つ位置は都合よくバラバラにいるようだ。
「泉璃、サポートよろしく」
『はい、一眞』
体をここまで来たように活性化させる。
3人の死角になっているところから、素早く15㎝程の千本を作り出して一番遠くにいる一人の頭部を狙って投擲する。
「こう言うのは、由羅が得意なんだけど」
狙いはズレたがこめかみに突き刺さる。3人のうち1人が倒れて残りの2人の注意が逸れる。1人は倒れた奴に駆け寄り、一足遅れたもう一人の意識を一撃で飛ばしすぐに移動する。距離があるためいくら薄暗いと言ってもこれが限界だった。一瞬で仕留められるにはだけど。急に2人もの人間が倒れてしまい混乱している最後の男の体に刀を根元まで差し込んでその刀を捻り上に跳ね上げる。
『一眞、なかなかエグいことをします』
「半端な攻撃して意識残ってて顔見られても困るし、これは仕方ない」
そこまで霊気を凝縮した物では無いのでどんなに遣り過ぎで意識の回復が遅れるだけなのでやり過ぎた感はあったが特に問題ないため気にしないことにする。
刀を血振りし手を離す。その刀はさっきまで存在しなかったかのように砂のように崩れて消えていく。
最初に千本を突き刺した男に近寄り首元の千本に触れる。すると、刀と同じように消え男の首元は傷一つ付いていない。
『狙った場所より、1㎝離れてるわよ』
由羅から厳しいお言葉をもらう。下手したら、完璧に外す可能性もあったから自分的には褒めて欲しいくらいだったのだが。
今使った、刀と千本は霊力の圧縮率が小さく作った物で霊体に傷をつけることができるほどのでは無い。精々、霊体に乱れを生じさせ昏倒させる程度だ。力を強めれば霊体にそして、肉体をも傷つけることができる今回はそこまでやる必要性は無い。
「此処には、強盗した奴らはい無いみたいだな……ん?」
目的の学生証を見つけ無いと帰る訳にはいかない。実際たかだか強盗なんてどうでもいい学生証さえ見つかればとっとと帰るつもりでいたが……そうはいかなさそうだ。
『一眞きます』
『結構いるわね、そく殲滅なら私と交代しない』
効率を考えるなら頷いてもいいが、『嫌です!』と俺の代わりに泉璃が拒否をする。
「痕跡が残りやすいから、今回はパスだ。時間があれば消すこともできたがあまり此処に長居はしたく無い。少し手間取ってもこのままで行く」
顔バレも困るが、痕跡を残す方がもっと困る。ま、泉璃のは純粋に嫌だからだろうけど。
由羅は仕方ないわねと言った感じに引き下がり、泉璃はとても嬉しそうだった。あえて理由は聞かないでおこう。
「さて、まず隠れて様子を見てみないとな」
身体能力を上げた状態で積荷を足場にし、天井付近の鉄骨で息を潜める。