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8、捜索

「連絡は!」

「それが…「追い掛けるな」と」

本当は強盗が銀行から出て来たところで追いかけようとしたが突然学園からの連絡あり、こうして足止をくらっている。

「ちぃ。学園は何考えてやがる」

大義名分はあり、暴れても良い絶好のチャンスを逃す手は無かった。それに、強盗が銀行を襲ってから出てくるまで約10分。余りにも手際が良すぎて、警察への通報から到着、そして包囲網の準備をしていては間に合わない。

一般の事件に出しゃ張るなと言うのなら追いかけて、居場所を警察に教え恩を売っておけばいいものを。

ま、どさくさ紛れに暴れるつもりではあったが、干渉すら許されない今の状態では何もできない。

連絡を受けていた生徒は言われた通信内容を言うとそのまま担当の生徒の見張りに戻った。

たまたま、銀行強盗に出くわし、緊急で集まっただけの急なチームだったため何のもめ事もなく解散した。

「引き続き新入生の見張りをしろだと、はぁ…。詰まらん」

違反をするとしばらく学園から出られなくなる。勿論、任務も外に出る都合上なしだ、暴れることが出来なくなることは本意じゃない。

暫くして、担当の生徒が銀行から出てきたので面倒くさいが見張っておく。

「おいおい、学園はそっちじゃねぇだろ…」

銀行から出てきた生徒は学園とは反対側の路地へと入っていった。

「迷ったか…方向音痴にもほどかあるだろーが」

仕方なく見失わないうちに路地へと駈け寄る。

「はぁ?」

担当の生徒が入っていった路地は、真っ直ぐ向かいの大通りとつながっていた。そう、その様子が一望できた。

「振り切られたのか…」

真っ直ぐな通路には人影が無い。

「ド素人に撒かれるとか、恥だな。なかなかおもしれー事してくれる。…塞蓮路 一眞」

担当の生徒の名前を確認し呟く。

さっきまで、やる気のなさそうにしていた顔には、口の端を釣り上げた笑みが浮かんでいた。


銀行から出てすぐに、学生証を探しに行こうとしたが誰かに見られているような気がした。

強盗の騒ぎで野次馬がチラホラ見受けられるが、その殆どが中の様子を見ている者達で此方に視線を向けている者も直ぐに興味を失い銀行の中の様子に目を向けていた。

「一様、撒いておくか」

すぐに離れた視線と微かにまだ見られている様に感じる視線、自意識過剰ならそれで良い。念のため今向けられている視線から抜け出すことにする。

銀行の側の路地裏に入り体内の霊力を活性化させて、擬似的に筋力を向上させる。後は壁蹴りの要領で建築物の桟に脚をかけて上に登る。

「よっ、ほっ。ほいっと…ふぅ」

ギリギリ、登る事が出来て一息付いてると、誰かが路地に入ってきた。

「当たりか…」

「知り合いですか」

「知らないな、学園の制服着てるし、新入生…いや、雰囲気からして先輩か」

突然人が消えたのに殆ど動揺している様子が見えない事から予想して見る。

「てか、なんで出てきたんだ。泉璃」

隣で何の前触れもなく顕れ、同じように下の様子を見ている白色の少女。

腰まで届くほどの長い髪は太陽の光を浴びると淡い水色に光る銀髪、その髪を左右の一部が後ろで束ねられていて、束ねられた部分には二つの鈴が付いている。澄んだ水色の瞳と汚れ一つない真っ白な色のワンピースに身を包んだ少女は一眞の問に答える。

「寝てたのに叩き起こされました」

どうやら霊力を活性化させたことでショックを与えてしまったらしい。

「それは悪いことしたな」

「はい、びっくりしました」

まともに会話を始めたあたりからまるで何かを要求するかのように。

じー。

そう擬音が付きそうなほど見つめてくる。

「謝罪じゃダメなのか」

「私は誠意を所望します」

さっきまで表情とは違い何かを期待するように見つめてくる。

一眞は謝罪の気持ちではなく、精一杯の慈しみを込めて頭を撫でる。

「んぅ」

泉璃は霊体の所為で物や人に触れることができない。その為、触れることのできる一眞とのスキンシップを好むのだ。

「ありがとな」

撫でられていた時の無邪気な笑顔が、一瞬でキョトンとした顔になった。

「気付いてたのですか」

もう少し笑顔を見ていたかったので早まったことをしたなと思いつつ頷いた。

「まぁな」

路地から上がるときに泉璃がサポートしてくれたおかげで、左程苦労せず上がることができた。

いくら筋力を底上げたと言っても、身のこなしが素人だと充分に力が生かしきれない、そこを泉璃が補ってくれたのだ。

「一眞、付けてた人いなくなったわよ」

泉璃より少し大人びた声が突然聞こえてきた。

全体的に大人びた雰囲気持った夜色の少女。

身長は泉璃より2、3㎝くらい高く、髪は黒とも紫とも見て取れる夜色。髪の左側に簪を付けていて。瞳は髪よりも紫に近くパープル色と髪の色と同じ夜色のワンピースを着ている。まるで、相対するかの様に泉璃とは真逆の色合いをしている。

「由羅も出てきてたのか」

「その子は良いのに私はダメなのかしら」

「そう言う訳じゃないが」

特にそう言うつもりで聞いたわけではないのだが気を悪くさせてしまったようだ。

気を紛らわすために話題をそらすことにする。

「そういや、聞きたいことがあったんだ。由羅が強盗をしたらどこを隠れ蓑にする」

「突然ね」

「記憶を探ればわかると思うが、強盗に盗まれたものがあってな」

訳あって、脳の記憶媒体を霊力で補っている。それの副作用で泉璃や由羅が覗き見ることができる。

「そうね、商業区の使われていない

倉庫かしら」

「倉庫か」

「ええ、人数はわからないけど人質がいるのなら、移動距離を伸ばしたくないし下手に目立ちたくたいでしょうから」

「それが、由羅だったらの話か」

「違うわよ」

強盗の逃げる場所の目処として、由羅の話を参考にするために聞いたつもりだったが違ったようだ。

「大体、私だったら人質なんか取らずに身軽になって逃げるわよ、荷物がバック一つだけだもの。それに、あの程度の足手纏いにしかならない仲間作らないわよ」

どうやら根本的に違ってたらしく参考にはできないらしい。

「ま、倉庫と目処付けるなら…」

一眞は、小型機器を取りどす。それは、弐年生が持っていたものと同じものだ。

「使われていない倉庫といっても、人気のない周りの建物に出入りがない場所なら少しは絞れる」

何かを操作するように指が動くと、小型機器の液晶に地図が表示される。

「思ったより範囲は少ないな」

「でも、ここから少し遠いですね」

「相手は車だからな」

出てきた地図は随分前に大きな企業が移動したため、後を追うようにいくつかの商業や商社が移動したことで出来、破毀仕切れなかった建造物群。

普通は、建造物ごと土地売りするかテナントなどにするものだが、一気に移動があった所為で寂れてしまったらしい。

企業などの建造物は防犯システムがあるため潜りめないだろう、それと違って倉庫はいくつかはただの物置として使われていたらしく防犯システムはないらしい。

防犯システムのない倉庫だけに絞ればもっと狭くなる。

一眞は体内の霊力をもう一度、活性化させる。

「泉璃、サポート頼んでいいか」

『はい、一眞』

さっきまで隣にいた泉璃はいなくなり、声も頭に直接響くように聞こえる。

「跳んでくの」

「ああ、いま下には降りるのは不味い。それに、人が多いところでスピード出せないからな」

下には路地に入ってきた先輩?が近くにいるため降りれない。それに、擬似的に筋力を上げているだけといっても、それなりの高さの建造物を壁蹴りの要領で登れるほどの力がある。そんな力で街中を駆けるのは危ない。

「人がいたら知らせるわ、その方があの子もサポートしやすいでしょ」

人に建物の上を飛び越える所を見られるのは好ましい事ではない、基本的に人がいない所を通るが万が一があるためそうしてもらうと助かる。

「そうだな…。ありがとう」

建築物を飛び移る時にすれ違い際に感謝の言葉を伝える。

もう振り返っても、さっきの場所には誰も居ない事が分かっているため振り向いても意味はない。

「さっさと片付けて、学園に戻らないとな」


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