4、自己紹介
「せっかくの雰囲気が台無しになったけど、今から自己紹介をしてもらいます。基本的には名前や得意還霊、得意なこと後はここでの生活での希望とか言ってもらえると助かります。最初は真菜に手本を見せてもらいます」
「私から?」
「ええ、お願い」
「別にいいけど…」
咳払いをして自己紹介を始める。
「弐年の藤波真菜よ、得意還霊はアドリビュート。得意なこととかは特にないかな。後は一緒に生活して行くのに堅苦しいのは嫌だから名前で読んでね」
藤波先輩、もと言い真菜先輩の自己紹介が終わった。
次は誰が自己紹介をするのか生徒会長の指示を待つ。
「次、私の番ね。弐年で生徒会長をしている山名部華耶よ。得意還霊はボーダー、得意なことは人をまとめることかしら伊達に生徒会長はやってないし。後、生徒会長だからってそんな緊張しないで欲しいわ、この部屋では一生徒であって同室の先輩それ以上でもそれ以下でもないもの」
「みんなの前では完璧超人を演じてるものね、ここでだけでも息抜きしたいのよね〜」
「ランクがSだから周りからの期待も強いし、それに弱みを見せると漬け込んで来る奴がいるから仕方ないのよ。そういうことだから、出来ればこの部屋でだけでも自然体で接してくれると助かるわ」
自己紹介の途中からどんどん言葉が砕けて行ったことに困惑しない様。真菜先輩が言添え、それに山名部先輩は付け足す様に話した。
「こんな感じで自己紹介してもらうつもりだけど、質問とかあるかしら」
普通自己紹介をするだけなのだから質問などないはずなのだ。実際に話すべきことは指示をされているのだから。
だが、手を上げる者は3人いた。
「あれ?俺だけ」
その中で唯一手を上げてなかった者は、突然部屋へと入ってきた男子生徒だけだ。
「何かしら」
手を上げている者を満足げに見ながら、質問を促す。
「じゃ、俺からでいいか?」
「はい、兄さんと同じ内容だと思いますのでお任せます」
「はい、えっとお任せしますね」
聴きたいことは同じだった様で二人から許可をもらい山名部先輩に質問をする。
「この、学園は弌年・弐年・弎年・弍年の4年制と記憶してます。なのに、生徒会長が弐年なのはおかしく無いですか?」
山名部先輩も予想をしていた質問だったのだろう、言い詰まることなく質問に答える。
「確かに4年制で間違いないわ。但し、弌・弐年とは授業内容が違うためにそうも行かないの」
ただ単に、学んでいる内容が違うとい言うだけでは生徒会長が弐年生である必要性は無い。とすると、常にこの学園の状況を分かっていなければ務まらない生徒会長を出来ない理由。それは、この学園にあまりいない…強いて言えば常に何処かへと出かけていると言う状態。
山名部先輩の言葉で手を上げていた3人は授業内容はあくまで想像だが推測する。
「流石ね、今年の弌年生はいい人材が揃ってるわ」
考え込んでいる3人を見て嬉しそうに見ていた。
「あの〜、すいません俺にはさっぱりなんですが」
唯一、手を上げていなかった男子生徒は置いて行かれた状態で理解していなかった。
「仕方ないわね。じゃ、塞蓮路…一眞君。説明して上げて」
最初、苗字で呼ぼうと思ったが紗弥と被ると思い言い直し名指しする。
「ほとんど推測なんで当たっているかわかりませんけど…」
一様そう前置きし答え合わせとばかり話す。
「弌年生や弐年生はこの学園内で、もしくは敷地内で出来る授業を行い。弎年生や弍年生は、この学園外での授業…実戦を行っているため。学園のことは学園に居る弌年生と弐年生が取り締まることになっている」
ま、だからと言って弌年生や弐年生が全く学園の外にで無いということは無いだろうが…。
「半分正解ね、確かに弌年生や弐年生は基本的には学園内での授業だけど、毎月2回か3回は実戦に駆り出されるわよ。特に、成績優秀なものには個別に政府から依頼は来るけどね」
実戦。
その言葉は、学園に来た弌年生はまだ経験してないだけに、その場の空気が張り詰める。
「ま、実戦をまともに経験していない弌年生をその場に放り出しても使い物にならないから、弐年生と合同になるんだねどね」
後から付け足された言葉に、何処からか安堵の溜息が聞こえ幾らかは場の空気が緩む。
「質問は終わったことだし、弌年生。自己紹介を始めて頂戴」
山名部先輩に催促され、誰から自己紹介するか周りを見ると何故かみんなの視線が俺に集まっている。
「俺からか?」
「お願いしますね、兄さん」
周りも異論は無い様だし、さっさと終わらせるか。
「弌年、塞蓮路一眞。得意還霊はアスペクト。得意なことは特に無いな。紗弥とは兄妹で苗字だと被るから、名前で読んで欲しい。これからよろしく」
呼び方の都合で紗弥の名前を出したため自然と次の順番は紗弥に回ってくる。
「弌年、塞蓮路紗弥です。得意還霊はアドリビュート、あと家事が一通りできます。兄妹共々よろしくお願いします」
自分の紹介と、然りげ無く俺のフォローもして自己紹介を締めくくった紗弥は北御さんの方へ向く。
北御さんはすぐに察して自己紹介に入る。
「弌年、北御由梨架です。得意還霊はアスペクトです。私も家事は一通りできます。いろいろご迷惑をかけると思いますがよろしくお願いします。」
そして、北御さんの自己紹介が終わると男子生徒は溌剌に自己紹介を始める。
「最後は俺だな。弌年、川倉伍享。得意還霊はボーダーだ。こんな性格だが一様腕は器用でな。出来るだけ仲良くしてもらえると助かる」