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異能使いと居候

発作的に書きたくなった。

「あーーつっかれたぁーーー」


仕事帰り、暗い夜道を歩きながら私こと天羽梓は愚痴を吐いた。

今日の仕事は言うほど大変だったわけではない。むしろ楽な部類に入るだろう。

だがそんなことは関係ない。

どんな内容でも仕事というものは疲れるものだし、特に自分の仕事は神経を使うのだ。

それに今日は仕事の関係でスーツを着ている。あまり堅苦しい服は好きではないこともありそれが余計に疲労を感じさせる。

ああ、早く帰ってお酒飲みたい。


夜の住宅街を歩くこと十分。住宅街の端に私の家はある。

いわくつき物件だということで非常に安く借りることができたそこは立地はそこまで良くないが周りに建物が少なくそれゆえ静かで気に入っていた。

天羽心霊探偵事務所。

ここが仕事場兼住居。普通の人から見ればうさんくさいことこの上ないだろうがこれが私の仕事なのだ。

仕事場である一階の入り口の横にある階段を上がり二階の住居スペースの扉を開ける。


「梓さん、おかえり」


出迎えてくれたのは弟子の朝桐つきひだ。

16歳になったばかりだというのにエプロン姿が板についている彼が私を出迎えた。喜怒哀楽が薄めなのが残念だが人の温もりを感じるのには十分過ぎる。

彼は一年ほど前から私の弟子としてこの家に居候している。詳しい理由は後回しにするが彼が居候するようになってからずいぶんと助かっている。

なにせつきひが来る前の私の部屋は汚部屋と言っていいほど散らかっていたのだが今ではその頃の面影もない。非常にありがたい。

まあその働きのせいで近所で私が若いツバメを囲っているという噂の元凶にもなっているのだがその辺は我慢するしかない。

まったく、私はまだそう言われるような歳じゃないというのに。


「ただいまぁー。 今日も疲れたわー」


「ご飯まだできてない。 お風呂沸いてるから先入って」


「はいはーい」


つきひの言う通りにスーツを脱ぎ捨てお風呂に入る。

お風呂から出て部屋着に着替えるといい匂いが漂ってきた。どうやら夕飯が出来上がったらしい。

冷蔵庫から缶ビールを出してテーブルに着くとつきひがテーブルに料理を並べた。

出来立てでほかほかと湯気をたてる料理は

その匂いを楽しみながら缶ビールを手に取るとそれを肴にぐい、と一気に飲み干した。


「くーっ、やっぱ疲れてるときはビールよねー」


続いて二本目に手を伸ばそうとして、だがその手はつきひに止められた。


「お酒、ご飯食べてから」


「えー、いいじゃない。 こういうのはお風呂上がりが最高なのよ?」


「何度も言われたから知ってる。 だから一本目飲むの止めなかった」


最近こうして飲酒を止められることが多い。

一人暮らしの時より自由がなくなったのは悩みの種だ。無論それは贅沢過ぎる悩みだとは理解しているのだが。



食後、つきひが食器を洗う音を聞きながらテレビをつけた。画面にバラエティー番組が映し出されたのを横目に缶ビールを開ける。

それからソファーにだらしなく体を預けながらさきいかを噛みビールを流し込んだ。

うん最高だ。


「うーん、堕落してるなぁ」


堕落している自覚はあるのだがやめられない。

というかここ一年まともに家事をした記憶がない。

つきひが居候し始めてから家事は彼が率先してやってしまうので私の仕事が残らないのだ。まあ現状に甘えきっている私にも問題はあるが。

そう思いながらつきひの方を見れば洗い物を終えた彼は台所のテーブルにぐたりと突っ伏しながら新聞を眺めていた。

だらけるならもっといい場所があると思うのだがつきひは何故かそこがお気に入りらしくよくそこでくつろいでいる。

そのおかげで私はソファーを独占できているのでなんともいえないがいつも気になっていた。


しばらくバラエティーを見ながらお酒を飲んでいるとふと視線を感じた。

台所を見ればテーブルに突っ伏したままつきひが顔だけこちらに向けジト目で睨んでいる。何故そんな目で見るのか。

その理由を探すためにテーブルに視線を向ければそこには空になった缶がいくつも転がっている。

しまった。考え事をしていたせいかペースが早くなっている。飲み過ぎだ。


「飲み過ぎ、駄目」


「だーいじょーぶよー」


「……もう酔ってる」


この子は何を言っているのだろう。この程度では酔っている内には入らない。せいぜいほろ酔いだ。

だけども思い直す。そういえばさっき冷蔵庫から缶ビールを取り出した時、残りが少なくなっていた気がする。

これは明日買いに行かなければなくなってしまうかもしれない。

なにせつきひは未成年。買いに行ってもらうことは無理だしそれ以上にそれをやってしまえばいろいろと終わりな気がする。

つきひがため息をはいた。


「お酒、ほどほど」


それだけ言うと諦めたのか再び新聞に目を落とした。

今更だがなぜこの時間に新聞を読むのだろうか。つきひに関してよくわからないことのひとつだった。


しばらくぐだぐだとドラマを見ていると眠たげな目をしたつきひがあくびをしながら明日炊く分の米を洗っているのが視界に入った。当然洗剤を使うようなへまはしていない。

それを終えると「そろそろ寝る。 おやすみ」とだけ言って寝室に行ってしまった。


「あーうん、おやすみ」


見れば時刻は既に11時近かった。

そろそろドラマも終わりだ。私も寝る準備をするとしよう。


ドラマを見終えると歯を磨く。それから部屋着からパジャマに着替えれば寝る準備は万全だ。

寝室に行くとつきひはすでに眠っていた。相変わらず寝付きが良いようだ。

自分の布団に潜り込むと何気なく眠っているつきひを眺めた。


こうしてつきひを見ると思い出す。

一年前、この子と出会った時のことを。

あの忌々しい事件のことを。

そして―――自らの失敗を。


かつての出来事を思い出しながら私はゆっくりと目を閉じた。


そう、あれはたしか。


―――助けてください。


そう記された一通の手紙がすべての始まりだった。


プロローグとはいえ短いな・・・。

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