第1話 異世界転生で頑張ります!!
光がおさまると、オレは、水の中にいた。だが、不思議と息苦しさは感じない。
ここがどこかは分からなかった。真っ暗で何も見えないのだ。
まあ、転生と言っていたのでお腹の中だろう。
意識があるのにお腹の中なんて変だなぁと思っていると、いきなり引っ張られた。きっと、オレは産まれるのだろう。
目の前が明るくなる。あまりの明るさの違いに、思わず目を瞑る。
「おお、産まれたか、我が子よ」
父親らしき声が聞こえる。とりあえず、使われている言葉が日本語だと分かって良かった。よくある、「知らない言語聞こえてくるけど意味は分かる」って感じでは無かったので、公用語が日本語なのだろう。
「オギャ―――」
「おお、どうした我が子よ」
喋ろうとしたがダメだった。声帯がまだ発達していないからだろうか。それでは、生まれてすぐに「天上天下唯我独尊」と言ったブッダは何なんだろう。逸話か。
まあ、すぐに喋ったら、何か怖がられるかもしれないから、喋れなくて良かったかも知れない。
とりあえずは、この世界で生きる第1歩を踏み出したというどころか。
周りには父親らしき男と、使用人らしき男女数人がいる。そして、オレが今出てきたところには、母親がいる。笑っているし、安産だったようだ。
産まれてきて「安産だったな」って思っている赤ちゃんってどうよ。
それはさておき、異世界生活頑張るか。
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産まれてから3年程がたった。
また、大抵の事は分かってきた。
まず、暦、や食べ物などは、大抵は日本と一緒だ。しかし、お金だけはちがう。
銅貨、銀貨、金貨があり、それぞれ100円、1000円、10000円位の価値だそうだ。
また、ファンタジーのような事が数多く存在する。
1つめは、魔法があることである。魔法は、火、水、地、光、闇の5種類からなっている。それらは、「一般魔法」と呼ばれている。そして、1人当たり最低1つの種類には適正がある。適正が無い魔法は、使う事ができない。多い人では、3つほど適正があるそうだ。
また、その他にも、「雷」や「氷」など、珍しい適正を持つ人もいるらしい。それらは「固有魔法」と呼ばれている。これを持つ人は、エリート街道まっしぐらだそうだ。
この家は使用人を雇っている位金持ちだが、それは、両親が二人とも「固有魔法」の適正があったからである。
父親には「強化」、母親には「治癒」の適正があり、昔は、「強化」で強化した体てモンスターに突っ込み、怪我をしたら「治癒」で治すという連携で、それなりに名を知られていたらしい。
いい忘れていたが、父親の名前はエンカ・ベール、母親の名前はユーリ・ベールである。ベールは家名である。
そして、オレの名前は、セル・ベール。
適正がある魔法は、検査をしたら分かるそうだ。検査は、5歳の誕生日にすると決まっているらしい。それまでは魔法は使えないようだ。5歳が楽しみである。
2つめは、さっき少し出てきたが、モンスターという存在がいることである。
モンスターとは、様々なところにいて、人間を困らせる生物である。スライムからドラゴンまで、多くの種類がいるらしい。
しかし、中には人間と契約して人間に協力している使い魔や、神聖で、滅多に人前に姿を見せない神獣がいる。神獣なんかには、是非会ってみたいものだ。
3つめは、ギルドの存在である。この世界にはギルドがあり、家事の手伝いからモンスターの討伐まで様々な依頼を受けることができるという。登録は、魔法適正の検査をしていればできるらしい。
ランクというのがあり、EからSSSまであるらしい。しかし、最近はSS以上の冒険者はおらず、Sランクの冒険者は国に仕えてしまっており、実質依頼を受けている人の中での最高ランクはAらしい。
Cまでいけば、1流だという。
父親と母親は、二人ともBランクだそうだ。しかし、実際はAランクの実力はあるらしい。Aランクになると、国からのお誘いもあり、面倒くさいので、ならなかったらしい。
オレは、いつかは両親を越えたいと思っている。
4つめは、亜人がいることだ。犬耳がついた犬人や、猫耳がついた猫人である。
これらの人は、特に差別されることもなく、普通に暮らしている。
エルフや竜人などもいるらしいが、両親も見たことが無いらしい。
「おーい、セル。下に来ーい」
下から、父親の声がする。
「はーい、おとうさん。」
そう言って返す。因みに、2歳で完全に言葉を喋れているのだが、「頭がいい子」ですまされている。まあ、そのほうが都合がいいが。
下に降りると、父親が待っていた。とりあえず、父親の前に行く。
「セル、お前がとても頭が良いことは、ここらでは有名だ。親として、誇りにおもう」
「ありがとうございます」
「しかし!!」
父親が大声を出したので、ビクッと体が震える。
「知力だけではこの過酷な世界は生き抜けない。よって、今日から、修行を始める」
父親の言葉に、オレは驚いた。3歳の子供に「修行をしろ」なんて、酷すぎる。
だが、オレには好都合だった。将来ギルドで活躍するために、小さいうちから体を鍛えておきたかったのだ。
「返事は!!」
「はい!!」
「では家の周りを10周、腕立て伏せ100回、腹筋100回、背筋100回、スクワット100回だぁ!!」
「えぇ――――」
「返事は!!」
「は、はい!!」
こうして、地獄の修行が、幕を開けたのだった。