アルオトコノイマワシキカコ
短っ
ある男は、浮かれていた。
人生がうまくいきすぎていて。
その男は、名門国立大学を首席で卒業し、大手の会社に入社した。
入って2年でその天才ぶりを発揮して、新しく自分の会社を設立するまでに至った。
しかも、恋人もできた。
そして、自分の会社も大手になり、恋人とも1週間後に結婚という所だった。
そんなある日のことである。
その日、男は普通に会社で仕事をしていた。普通と言っても、そのスピードは常人は到底及ばないようなものだった。
会議で状況についても話し合った。黒字報告ばかりだった。
仕事が終わり、恋人に会う。
そのまま高級レストランへ行き二人で会話を交わす。
一般人にとっては夢のような生活だが、男はそれを認識していなかった。その天才性から。
そして、レストランで食事を終えた男は、恋人と空港へ向かう。一足早い新婚旅行だ。
真面目な男にしては珍しく、向こう1週間は男は休みをとっていた。
男は、飛行機に乗り込む。行き先は、ラスベガス。
男は、幸せでいっぱいだった。
しかし、運命は男を見放した。
エンジンの故障。飛行機を待つのは、墜落という悲劇。
脱出のため、乗員はパラシュートでの避難を始める。
男は、このような命懸けの場面でも状況適合能力を駆使して、乗員全てを助け出した。
そして、残るは男と恋人。飛行機長達はとっくに逃げ出している。
男は、恋人を抱えて空へ。
このまま、助かるかと思えた。
しかし、二人ともパラシュートが開かない。実は、パラシュートの中には不良品が紛れ込んでいたのだ。
しかも、強風が吹き、二人は離ればなれになる。
男は海に落ち、一命をとりとめた。しかし、恋人は近くの島の森に落ちていき、そのまま行方不明となった。
救助ヘリの中でずっと男は考えていた。何で恋人が死んだんだって。何で自分が死ななかったんだって。
しかし、悲劇はそれで終わらなかった。
帰ったオレに待っていたものはさらなる悲劇だった。
第二次関東大震災。
オレの両親と会社は、それに巻き込まれた。
家族、恋人、仕事、全てを失った。
男は嘆き、悲しんだ。
しかし、たまった負の感情を発散することができない。恨む相手もいないのだ。
男は、負の感情を溜め込んでいった。
――――――――――――――――
ちょうどその頃……
「っ!!」
「どうした」
女に声をかける男。
「今、強烈に強い負の感情を感じた……」
「冥土の女神が身震いするほどの負か……。ぜひ仲間に入れたいな」
男が不適な笑を漏らす。
「この計画に、『負』は必要だからな」
「ああ、そうだな……」
「邪神ゼロスさん」
この女神と負の感情の持ち主が、後々巡り会うなんて、誰も思わなかっただろう。
明日より、都合上更新ストップします。
次の更新は、3月の始めになります。