新たなる地獄への序章
俺はそのブロンドの髪をかき上げ、首もとから腰にかけて締めてあるマジックテープを外す。服をすり下ろすとしなやかな身体が現れる。白い肌、細い腰………って待て。官能小説かよバカ野郎。
言っておくけど、俺、人形に性欲感じるタイプじゃねぇから!
『…やらしいこと考えてんじゃねぇだろうな』
「馬鹿かコノ野郎」
『あっはっはっ。あたしのナイスバディにムラムラしてるくせに』
「燃やすぞ」
『ハッ。娘の悲しむ顔が見たいのかよ』
手の中のクソ人形は鼻で笑っている。
俺は苛立ってそいつを湯船に投げ込む。
『何するんだよ!投げんな!』
「うるせぇ」
人形は湯船の縁に掴まってこっちを睨んだ。
俺もシャワーで軽く体を流して湯船に浸かる。
「はぁ〜っ」
気持ちよさに溜め息が漏れる。
『気持ちいいなぁ。これぞ極楽』
「お前はオッサンか」
暫く湯に浸かっていると、リサが湯船から出た(と言うか、湯船の縁から飛び降りた)。そして俺に洗面器に湯を入れろと命令し、その湯で体を洗い始めた。俺はその様子をぼーっと眺めていた。…俺、人形と風呂に入ってるぜ…?
その後俺たち(俺たち?)は風呂から出てリビングへ戻った。
「リサちゃんきれいになったぁ?」
「ああ」
自分で自分の頭洗ってましたよ…。
「じゃ、あたしがドライヤーしてあげるぅ」
夏樹は俺の手から裸のままのリサを取った。するとリサが叫んだ。
『雅樹!ダメだ!止めてくれ!ドライヤーはダメだ!髪が縮れるぅ!』
…ぶっ!(笑)
俺は笑いを堪えながら、夏樹にやめるように言った。
ドライヤーの熱で縮れたリサの髪も見たかったように思う。ふふふ。
俺がリビングで風呂上がりのビールを飲んでいると、夏樹が部屋から出てきた。手にはピンクのネグリジェを着せられて不機嫌そうなリサが握られている。俺はまた笑いを堪えるのに必死だった。
まぁ、何はともあれ今日も1日が終わる。
…俺、死んでまうわマジで…。
このままじゃ俺はいい年こいた人形オタクだ。アキバだ。…地獄だ。
どうする……燃やすか…?いや、そうすれば夏樹が泣く…ああ、俺はどうすればいいんだ!!
その時悪魔の囁きが聞こえてきたのだ。
『なぁ、雅樹よ。今度の日曜日夏樹と一緒にトイザ●ス連れて行ってくれよな』
…ああ神様ぁ!!




