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避暑地にて〜その2〜

前回の続きです

「夏樹、いっぱい食べなさい」

華夏美が夏樹にそう言った。俺たちは今、バーベキュー場でバーベキューをしています。蜜柑はお留守番。

「うん、いっぱい食べる〜」

俺たちの他にも、バーベキュー場にはたくさんの家族やグループがいた。早くも出来上がっている人もいる。

「あ!」

突然、夏樹が声を上げた。

「どうした?」

「杏ちゃんだ!」

夏樹はそう言うと、箸と皿を持ったまま走り出した。「こら! 置いて行きなさい」

「そうよ! 肉を返して!」

…華夏美さん、何か違います。


少し待っていると、とある家族がこちらに近づいてきた。

「こんばんは〜! こんなところで会うなんて!」

「あら、岡本さん!」

「知り合い?」

「ええ。夏樹のお友達のご家族よ」

子供の顔を見て思い出した。何度かうちにも遊びにきたことがある。

「いつも夏樹がお世話になっております」

「あら、夏樹ちゃんのお父さん?うちの旦那より男前ね〜!」

「…どうも」

奥さん…旦那さん横で目を潤ましてますよ?

「ところで茨木さん、そちらのお嬢さんは?」

岡本夫人が俺に尋ねた。

「友人です」

『桃色いちごで〜す』

「まぁ!!」

その名前を聞いて岡本夫妻は絶句。

「握手してちょうだい! ロリータじゃないからわからなかったわ!」

『こういう場ではああいうお洋服は不向きかな〜って』

…あれ?なんか周囲がさっきよりザワザワしてきた? しかもやたら俺たち家族の方見てる…?


「…桃色いちご?」

「マジかよ!」

「え! どこどこ?」


あ…そっか。こいつ何気に有名人なんだった…。忘れてたよ。


『雅樹ちゃん…私、部屋に戻った方がいいかしら?』

「いや、いいんじゃないか? 気にすんなよ」

俺たちは何食わぬ顔でバーベキューを再開した。

「じゃ、私たちも戻るわ。またキャンプファイヤーで会いましょうね」

岡本一家も自分たちの場所のバーベキューへ戻って行った。その後もしばらくはザワザワや視線は感じたが、みんなプライベートだから気を遣ってか、俺たちに寄ってくることはなかった。


「パパぁ、いちごちゃんは凄い人なの?」

「まぁね」

「ふ〜ん」


俺たちは協力して後片付けをしてキャンプファイヤーの場所に移動した。櫓を囲んで既に大きな円ができ始めていた。俺たちも輪の中に入れてもらう。するとここのオーナーが来て、櫓に火をつけた。段々炎が大きくなる。

「凄いね〜っ!」

夏樹の目はキラキラ輝いている。

『ミラクルね〜』

おぉ、いちごも楽しそうだな。

『みなさ〜ん! 今からビンゴ大会をやりま〜す! カードを配ります!』

オーナーがビンゴを配り始めた。

『商品は、オオクワガタの幼虫、ペア温泉宿泊券、ワイン、などなど! 頑張って下さい!』

『やるぜ〜雅樹ちゃん! 燃えるわねっ!』

そうですか。

『では最初は〜…62! 62です!』

ビンゴは楽しく進んでいった。

「あっ! 見て〜あたしリーチ!」

華夏美に手伝ってもらいながらの夏樹がリーチになったらしい。

『ふふふふふ。私はダブルリーチよ、夏樹ちゃん』

『次の数字は…8!』

『あのハゲー! トリプルリーチになっただけじゃん!』

いちご!オーナーまだハゲてないよ!

『次35じゃなかったら殺すわ!』

「えっ!」

夏樹、きっと冗談だから大丈夫だよ。

『次は…38!』

『きょえぇぇぇぇ!』

…ヤバい!目がイッてる!!


そんなこんなで俺たちは何の商品もゲットできずに終わりました。

それから歌を歌ったり、オーナーによる星座講座を聞いたり、楽しい夜は過ぎていきました。


それから俺たちは部屋への帰り道に、カブトムシの蜜を仕掛けて帰った。



〜翌朝〜


俺たちは元気に昨夜の仕掛けに向かいました。

「…あ!」

夏樹がカブトムシを発見した。

『雅樹ちゃん! バッチリだわ!』

仕掛けには大きなオスのカブトムシが掛かっている。

『どんな味なの?!』

…食べないよ?

「パパぁ、おっきいね〜」

俺は目をキラキラさせている夏樹に、カブトムシを取って見せた。

「あたしも触る〜!」

『私も握る〜!』

…やめて下さい。




俺たちの夏の休日は、そうして幕を閉じました。


ちなみに、余談ですが、帰りの車の中は、俺と人形以外、全員爆睡でした…。

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