避暑地にて〜その1〜
避暑地に家族旅行! ほのぼのまったりリラックスな皆さんです。
「あなた?」
「ん?」
寝室のベッドの上で、隣に横たわる麗しき妻が俺に話しかけてきた。
「会社、連休取れないかしら」
「取れないこともないけど、どうして?」
「夏の思い出に、旅行なんてどうかと思って」
「家族で?」
「そうよ。いちごちゃんも一緒に」
「…あいつ家族じゃないよ?」
「家族も同然よ。可愛いしいいじゃないの」
えー…。
と、いうわけで俺たちは家族(?)旅行をすることになりました。車で避暑地の山へ行きます。
『どうしよう!楽しすぎるわ夏樹ちゃん!』
「いちごちゃん、まだ車の中だよ。しかも高速道路だよ?」
『でも楽しいわ! ありがとう、連れてきてくれて』
車の後部座席には、右から順に、チャイルドシートの夏樹、いちご、何故かちゃんと3バカ。助手席には妻と、彼女に抱かれた蜜柑。
『雅樹〜楽しいぜ』
『楽しいです』
『あたしも』
まぁ、そんなに楽しんでくれてるなら、3バカが一緒でもいいや。
『雅樹ちゃん、どんなところに行くの?』
「山の中のロッジだよ。小さな村の集落みたいに、家族ごととかでコテージに泊まるんだ」
『じゃぁ、至れり尽くせりのお料理が出たり、温泉の大浴場があったりっていうタイプの旅行じゃないのね?』
「ああ。自然と戯れるタイプの旅行です」
『まぁ!』
「川で遊んだり、夜は外でバーベキューだし、いくつかのコテージで集まってキャンプファイヤーもあるし、早朝にはカブトムシとかを取りに行ったりね」
『楽しそうね!』
「だろ?」
『あたし、一応ジーパンとTシャツ持って来たのよ〜。よかったわ。こんなフリフリじゃ大変だものね』
あ、そういう服も持ってるんだ。
『でもおばあちゃんのなんだけど…サイズ大丈夫かしら』
遺品かよ!!
…数時間後…
『着いたね〜! 涼しいね! そして山だね夏樹ちゃん!』
「山だね〜!」
どういう感想だよ。
「さぁ、荷物持って降りるから手伝え」
『え〜! もうちょっと都会の喧騒から遠のいた雰囲気を味わおう!』
「…働かざる者、食うべからず」
『何を運べばいいんですか?』
俺たちは豊かな森の中に佇むちいさなログハウスへの玄関前へ、車から荷物を運んでいく。
「あ、見て。いちごちゃん、あそこに可愛い鳥がいるぅ!」
夏樹が木の上を指して言う。
『まぁホントね。夏樹ちゃんは焼き鳥好き?』
…え。
「あなた〜、あたしは本部にチェックインして鍵を貰ってくるわ〜」
「ありがとう」
華夏美はそう言って走り去った。その後ろ姿はまだまだイケてるぜ、華夏美よ。
俺たちはそれから夕刻前までそれぞれでくつろいだ。
俺は蚊取り線香を焚いたラウンジで読者をしていた。俺の座る木製のリクライニングチェアの隣で、蜜柑も寝息を立てていた。蜜柑に寄り添うようにして3人も羽を伸ばす。都会よりもかなり涼しいし、自然の音が心地いい。
華夏美は、着替えたいちごと夏樹を連れて、近くの小川へ散策に行った。そう言えば、いちごの育ての親のおばあちゃん、若い頃スタイルよかったのな。
『いいな〜。こんな所に住みたぇな〜』
『あたしも。前世のモデル業もずっと都会暮らしだったしね』
『あたし、幸せです』
楽しそうだなぁ。
「もう少ししたらバーベキューの準備に取りかかって、その後はキャンプファイヤーの集合場所に行って、カブトムシの罠を仕掛けに行って…」
『おぉ、楽しい企画が盛りだくさんだな!』
『…? 雅樹さん、寝てますね』
『ハゲ、ずっと運転してきたしなぁ』
『ミス茨木が帰ってくるまでそっとしておきましょう』
次回に続きます