ロリータ服がいっぱい!
「パパぁ?」
「ん?」
「いちごちゃんのお家にはいつ連れていってくれるの?」
「……。」
…そんなこんなで俺はせっかくの休みを返上していちご城へ来ています。可愛い我が子のためだ…。
『夏樹ちゃん、飲み物は何がいい?』
いちごがキッチンから俺たちがいるリビングに呼びかける。
「ん〜?」
夏樹は答えられないでソファーに座ったまま首を傾げている。
『おいで〜』
夏樹はそう言われてキッチンへ走って行った。キッチンから楽しそうなふたりの声が聞こえる。
「うわ〜いちごちゃんの食器はみんなかわいいね!お鍋とかも全部かわいいし!」
『可愛いでしょ?可愛くないやつは割ってやったわオホホホホ』
「へ〜」
…真似するなよ?
『…あのね、これは緑茶、こっちはココア、それからコーヒー、冷蔵庫に牛乳、カルピス…あ!私のオススメはね、私のオリジナルブレンドのお紅茶よ!』
「それって甘い?」
『甘いっていうか…うーん…ミラクルな味よ』
「じゃぁそれ!」
夏樹、お前意味わかってねぇだろ。
『雅樹ちゃんは〜?』
「…緑茶で」
『ジジくさっ!』
じゃかぁしいわ小娘!
しばらくするとふたりがキッチンから戻ってきた。夏樹が俺の前に花柄の湯呑みを置く。ふたりの手にはお揃いのウサギのマグカップ。
「夏樹、ひとくちだけちょうだい」
「え〜」
娘よ、わかれ。別に飲みたくはないんだ。お前のために毒味をしてやるんだよ。
俺はエクセレントティーを口に運ぶ。
「!?」
『美味しいでしょ?』
「ああ…驚いた…ミラクルだな」
マジで美味いんだけど!今までの人生で味わったことのないタイプの美味だ!
『初めから遠慮せずに飲んでみたらよかったのに〜』
「すいません」
謝るしかねぇな、こりゃ。美味いわ…。
「いちごちゃん、何が入ってるの?」
『ふふふっ。秘密よ。私が死ぬときに夏樹ちゃんにレシピを遺言してあげるわね』
「ゆいご〜ん?」
『そうそう。ま、そのうち意味わかるわよ。隠し味だけ教えてあげるとね…それは愛よ!オホホホホ!』
はいはい…。
『あ、夏樹ちゃん。この前言ってた人形の服、あげるわね』
いちごはそう言い席を立った。そして2階へ上がって行った。10分くらい経って、いちごは小振りなダンボール箱を持ってきた。俺たち親子は、テーブルの上に置かれたその箱の中を覗く。
「うわぁ!!」
中にはロリータ服がてんこ盛り入っていた。夏樹の目が輝く。『型が古いし、何のブランドでもないお洋服なのよ。今はもう、流行のものや、ブランドもの、限定品ばっかり着せてるから』
あんな小説で何故そんなにド金持ち?!
「ありがとう!いちごちゃん大好き!」
『どういたしまして』
帰宅してから3時間、着せ替えごっこだったのは言うまでもない。
『雅樹!もうロリータはイヤだ!!』
『雅樹さん、目まぐるしく着替えさせ続けられるとしんどいですね!』
『何着か、外人タイプのあたしには、ヒップが見えるくらい短いんだけど!』
各個人の悩みはそれぞれだな…。