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魔女、来たる

「おはよう雅樹ちゃん。お紅茶はいかが?」

「…お構いなく」

俺はいちごのエクセレントティーを断って、椅子を拝借した。

「で、なんで俺呼んだの?」

「暇だったから」

「友達とか呼べばいいじゃん」

「学校行ってないから友達いないの。ってか人形が友達」

「あっそう…」

そう、俺は今日、突然呼ばれてきたのである。

「っていうか、俺ケイタイのアドレスとか番号とか教えた記憶がないんだけど?」

「…ふふふっ。私にわからないことなどないわよ雅樹ちゃん」

「……。」

部長…俺ダメっす…。

「夏樹ちゃんと華夏美ちゃんは元気?」

「うん。今朝も目玉焼きを失敗して夏樹に笑われてたよ」

「華夏美ちゃん料理下手くそだもんねぇ」


…待て。


「…なんで家族のことを?」

「しつこいわね雅樹ちゃん。私にわからないことなどないのよ?」


魔女だ!


「今度お宅にお邪魔してもいい?私のスペシャルブレンドの茶葉をお持ちしますわ」

「いや…来なくていいよ」

「なんで?」

だって…キャラ的にうちに溶け込むタイプっぽいもん…。


「そう言えば、夏樹ちゃんもリサちゃん人形を持ってるのよね?」

どこまで我が家の内情を知っているんだ…!

「まぁね…」

「最近新たに3体になったとか」

魔女め……。

「話が合いそうだなぁ。しゃぶしゃぶとか用意して招待してよ」

「そんな豪勢な晩御飯を他人の君になど…」

「雅樹ちゃん!」

いちごを見ると目に涙を溜めている。

「うわわわわ!泣くなよ!」

「だって…だって…両親もいなくて…友達もいなくて…そんな私が鍋料理を囲むことなんて…できると思う?そんな小さな願いすら叶わないなんて…ああ…」

「…わかったから」

「決まりねっ!」



…数日後…


「ただいま〜」

俺はいつものように玄関のドアを開ける。

「おかえりパパ」

夏樹と蜜柑が玄関まで迎えに来た。俺はふたりの頭を撫でながら家に入る。台所では華夏美がエプロンをつけて俺に微笑みを向ける。なんて温かい家庭だろう。

「おかえり雅樹ちゃん!」

「…ただいま」


どうしてリビングにいちごがいるのかな??


「パパぁ」

「ん?」

「あたし、いちごちゃん大好き!」

うわぁ…あの魔女…娘に魔法かけたな…!!

「あなた、今日は豪華にしゃぶしゃぶよ」

お前もか華夏美ー!!


「美味しいです、華夏美ちゃん!こんなに美味しいしゃぶしゃぶを食べたのは一人暮らしになってから初めてです」

「ま〜!」

いちご、ダメだ。華夏美は料理を誉められると有頂天に…。

「いちごちゃん、今度は何が食べたい?」

「サーロインステーキかな!」

「任せろ!!」

あー…また来るんだね…いちごさん…。


腹も膨らんで、俺はソファーで新聞を読み、華夏美は後片付け、魔女と夏樹は床で蜜柑と遊んでいる。

「私も犬飼おうかな」

「でも一人暮らしでお世話大変じゃないの?」

「だよね〜」

「うちに蜜柑がいるからまた遊びに来たらいいじゃん!」

「だよね〜!」

いやいや…エンゲル係数が上がるからもう来るなよ…。

「それにいちごちゃんにはたくさん人形がいるでしょ?」

「うん」

「今度遊びに行かせてね!」

「いいわよ」

うわぁ…夏樹絶対あの家気に入るぜ…

「あたしがもう使わなくなったカチューシャとかリボンとかもあげるわよ。リサちゃんの服もいらないのあげるわ」

「やったぁ!」


うちの娘を釣るな!!


「あたし、いちごちゃんみたいなお姉ちゃんが欲しかったなぁ」

「私も、夏樹ちゃんみたいな娘が欲しかったなぁ」

何じゃそりゃ…!それを言うなら妹だろう!

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