001 プロローグ、とある日の屋上
この小説は昨年行われたスニーカー大賞に応募したものです。
反省点も多く、投稿をするべきか考えたのですが、経験になると思い投稿させていただきます。
全編そのままではなく、加筆修正・推敲してからのアップになる予定です。
「さて問おう。氏には選択肢が二つある」
目の前に立つ女は、芯のあるよく通る声でそう言った。
この一言で、俺の人生は百八十度変わった。
いや。変わってしまった。
女の名前は明智。下の名前はまだ知らない。
未だ残暑厳しいこの九月。
学校の屋上で、明智は仁王立ちよろしく表情も変えることなく俺の解答を待っている。
さあと吹く風にその髪がさらさらと揺れる。
前髪は眉とほぼ同じ高さで真っ直ぐに切りそろえられ、後ろ髪は腰まで届きそうに長い。スカートの下は膝上まである黒いニーソックスがその肌をギリギリまで隠している。そのバランスは、すらっと細い明智にはとてつもなく似合っていた。
答えは決まっていた。
初めから決まっている。
悩んでいたのは、選んだ先が想像出来なかったからだ。
でも、それを考える意味はきっとない。
選んだ先を想像する必要なんてきっとない。
きっと重要なのは、選ぶか、選ばないか。それだけなのだ。
言い換えれば覚悟。
更に言えば踏み出す勇気。
それが俺の中にあるかどうか。
それも改めて問う必要なんてない。
その答えは、もう俺の中にはある。
この目の前に立つ明智という女によって気付かされた。
でも答えはあまりにも単純で、きっとそれだけでは何の意味もなくなってしまう。
だからそれを言う前に、俺はこいつについて語らないといけない。
説明しないといけない。
この日までの平凡な俺の人生を変えることになったこの女について。
始まりの日は、夏休みの開けた九月一日。
そう。それは二学期の始まりの日。
始業式の日だった。




