1.もんじゃ焼き
靴並べ、落ち葉掃除、食器の片付け。
今日は、たくさんお手伝いをした。
だからお母さんが、
お駄賃を、ちょっとだけ奮発してくれた。
花ちゃんこと、山本花は、今年で九歳。
おうちのお手伝いをすると、
お駄賃がもらえることになっている。
財布の中には、百円玉が三枚。
今日は――
駄菓子屋で、豪遊できる!
「お母さん、駄菓子屋に行っていい?」
「いいけど、遅くならないでね」
ゴーっと掃除機を操るお母さんは、
こちらを振り返らずに、
遊びに行くのを許してくれた。
私の家から、駄菓子屋までは、
あまり遠くない。
夕方まで、まだ時間はあるから、
のんびり目指そう。
細い裏道を通り、
可愛いワンコを見つけた。
少しだけ、構ってあげる。
お地蔵さまに手を合わせ、
景色を見ようと、土手に上がる。
道草も、たくさん食った。
自転車を避けながら、
アスファルトじゃなく、土を踏みしめる。
バス停の先にある、
駄菓子屋の前に辿り着いた。
古ぼけた家屋の、いかにもという風貌。
でも私にとっては、お菓子の家だ。
魔女じゃなくて、店番のおばあちゃん。
怖くない。
とても、優しい。
店の中を、行ったり来たりしながら、
何を買うか、悩む。
一通り眺めて、
いつもと違う物が、食べてみたくなった。
少し高くて、
リッチ感があって、
ちゃんと満足できる物。
ソースの匂いが、鼻をくすぐる。
土手を作って、
それをヘラで操る姿は、
まさに職人芸だった。
――あれが、食べたい。
駄菓子屋のおばあちゃんの、
エプロンの端を、ちょんと引っ張る。
「おばあちゃん、
私、もんじゃ焼き、食べたいな」
そう言った。
「わかったよぉ。
それじゃあ、花ちゃん。
もんじゃ焼き、作ろうかね」
「うん」
おばあちゃんの笑顔が、シワで寄る。
そこがまた、味がある。
「トッピングは、どうするかねぇ」
うーんと、唸り。トッピングを目で追いながら、
タコ、明太子、チーズ、たくさんあって、
つい悩んでしまう。
「チーズとカレー、それとホタテがいい」
うんうん頷き、ちょっと待ってねっと、
奥に消えた。
具材の入ったボウルを、持ってきたおばあちゃんは、
ホタテを鉄板で炒めながら、具材を混ぜていた。
「ほわぁー」
見ている間にも、土手ができ。
グツグツと泡が立っていた。
おばあちゃんが、食べていいよの合図で、
私は、ヘラを持って、掬うように口に運ぶ。
……濃い!
いろんな味がする。紅しょうが、キャベツ、
カレー粉の味が強いが、ちゃんと混ざって、
とても美味しい。
カレーに、チーズは神。
ホタテ、これも小さな主役。
満足して、食べ終わり。
私は、デザートを欲した。
十円の四角チョコ、
ちっちゃいけど、これがいいの。
一口で味わえる、甘さの暴力。
「ご馳走さま」
懐は冷えたが、お腹は膨れた。
今日も、大満足。




