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あな

作者: とまと

思い付いたので書いてみました。 お読み下されば幸いです。


彼は穴に落ちた。


この時世になんで穴がこんなとこに……と思ったが、なぜだか穴にはまってる内に居心地が良くなった。


その穴は、別に出ようと思えば簡単に出られる位の深さだ。


しかし落ちてから少しここにいるだけで、何だか落ち着いてきた。


今日は1日休みだからずっとこの穴にはまっていようかな。

他人がもし今の自分の姿をみたら驚いて、周囲の人との話のネタにするだろうか。


そんなことを考えてるだけで自分のことが笑えてきた。


しばらくして、彼は穴から出て家へ帰った。



数日後、彼はあの穴が恋しく感じた。


入った所で何も現れないし、別に楽しいわけでもないが、まずはこの前の場所に行った。


まだ穴はあった。

早速、入ってみた。


前より若干深くなってる気がした。


はまるとやはり落ち着く。

目をつぶって考え事をしてても気分が軽くなる気がした。


“もしも…" 何かの声が聞こえた気がした。

はい…と彼が返事をすると、“あっ、分かりますかな、私の声"と返ってきた。

“あなた、はまりましたね"

“えっ…?"

彼には理解出来なかった。


“この穴にはまった人は前にもいましたよ。"

“あなた、誰ですか"

“近隣住民と言うところでしょうか"

“はあ……"

“まあ、あと何回かは大丈夫でしょうがお気をつけなされ"


と言うと、声は消えた。

何者だったのか。


彼は穴から出て家へ帰った。



しかし何だかへんな感じがした。

妙にベットに横になっても寝づらい。

夕食には好物の天ぷらが出たが吐き気がする。


数日後、息苦しくなって倒れたので病院に運ばれた。

母親は心配そうに彼の顔を覗き込む。

が、彼はそんな母親や自分の状態を理解せずにずっと考えていた。


穴に入りたい。 いや、穴に帰らなければ。


病院は診断を下せなかった。

なんせ、彼は呼吸困難に陥りかけて倒れたが、いたって体は正常だったからだ。


調子が少し戻ったので帰宅した。


ベットに横になると“あらあら大変でしたな" とあの時の声がした。

誰だ、というと、目の前に一匹の虫がいた。

“あなた、あれから穴に入りましたか?"

と聞かれたので、あれから入っていない と答えた。

すると、“じゃあ、あなた、穴に選ばれちゃいましたね。 覚悟は出来てます?"

と言った。


覚悟? 何だそれ?


“もう二度とあの穴に入ってはいけません。勿論、近づいてもね。でなければ…"


分かった。行かなきゃいいんだろ。

“必ずですよ" というと虫は飛んでいった。



半年が経って、ふと穴のことを思いだした。



行ってみると穴はなかった。


“ああ、あなた、来たんですね"

あの時の虫だ。


穴は? と聞くと、

“かわりの人を見つけたみたいだから、旅だったよ"

という。


旅だったって?


“あの穴は中にいる中毒者を巻き込んで移動するのさ。私は前の人の肩にたまたま留まってたところで巻き込まれてここに来ました。 前はポルトガルにいたんですよ"


ポルトガル……でもなんで会話ができる? 前のはまった人はどうなった? と聞くと、

“あなた、まだ穴に酔ってますね。だから言葉が通じるだけです。 前の人は……穴が寂しいと感じた時に同化されてしまったようです"


と言うと虫は飛び去り、“もうすぐ治りますよ、その感覚も" と答えると飛び立った。


彼はその場に立ち尽くした。



穴はまたどこかに現れる。

いまいずこ。

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― 新着の感想 ―
[一言] なんだか不思議な作品でした。 あと、穴にはまっているうちに居心地がよくなった主人公がなんだか笑えました。猫は狭い所が好きでよくはまってますけど、それに近い感覚なんですかね。 執筆お疲れ様でし…
2010/06/06 23:25 退会済み
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