8話:救い…!
やあ”アキレス”!
お、俺はさっきミルクを飲んで寝たばかりじゃ…外は暗く、世界は寝静まっている。
聞き慣れない…いや、聞き覚えのある声だった。しかもその声は、どこか馬鹿にしているような、面白がっているような響きを帯びている。
俺はこの声を知っている。
(シリウス…か…なんで)
頭の中でそう思った瞬間、
(やあやあ坊や)
またしても馬鹿にしたような声が返ってきた。いや、ちょっと待て。今、俺は声を出してないぞ!?この世界ではテレパシーができるのか!!カッケー!!!
あとから考えてみると、テレパシーって意外と地味でダサい。けど、もっとダサかった俺にとっては、今はめちゃくちゃ輝いて見えたのだ。
(そうさそうさ、テレパシー?でも君の前世でのテレパシーは相手の顔までわからないだろう?ごめんな、赤ん坊からだから俺のこと呼べないよな)
少し、本当に申し訳なさそうにしている。
(あと母乳飲めなくて残念だったな笑)
…シリウス、やっぱりいいやつだな、と思ったのも束の間、いつもの調子に戻った。
(もしかしてあの人にわざと母乳が出ないような設定にしたんじゃないだろうな?)
俺は少し冗談っぽく言った。
(おいおい、あの人とはなんだ。いまのお前はアキレスなんだからお母さんと呼んでやれよ。あと僕はそんな設定とかできないよ。なんたって君のお母さんがあまりにも可愛い…間違えた、可哀想じゃないか)
…可愛いと可哀想は似てるけど、間違えるか?
シリウスは続ける。
(君のお母さんは、ある魔法のようなものがかかっていてね…おっと、今日の分の時間が来てしまう。あと一つくらい話せそうだ。なにか僕に話すことある?)
いろんな情報が出てきて頭が混乱していたが、さっきから気になっていたことを口にした。
(なんで俺が呼んでないのに来てくれたんだ?俺は嬉しいけど、制限時間まであるくらいだから結構大変なんだろ!)
転生の時もそうだったが、やっぱりシリウスはいいやつだ。そこまでしてくれるなんて…。
(そんなの転生前に約束したじゃないか!君は僕の話相手になるって!今度、明後日くらいになると思うけど、いっぱい話そうな!)
シリウスはそう言って、手を振った。
俺も「ありがとう」という意味を込めて手を振り返した。赤ん坊の小さな手で。
すると——
おやすみ。
…それは頭の中ではなく、耳から聴こえたような気がした。




