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5話 おはよう、世界 いや今何時か分からんから一応こんにちは、世界

「じゃあ……ここからが本番だぁ!!」


神様が元気よく宣言した。


(……なんか“神様”って呼ぶのもなあ)


俺はもやもやした。なんというか、ありがたみはあるのに、身近に感じすぎるというか……いや、身近に感じさせてるのはこの人――いや、この存在のせいだろうけど。


(“神”って英語だと“God”だっけ……“Good”と似てるな)


「よし……お前、今日から“グッドさん”な!」


と、脳内で勝手に命名した瞬間――


神様の鼻の穴が、軽く広がった。もしかして俺の思っていることが分かるのか?


「……さっきから君の頭の中を覗いてるけど、なんか馬鹿らしいな。」


……言われてしまった。


しかしグッドさん(仮)は、すぐに言葉を続けた。


「グッドさん、ちょっとナンセンスだね。僕にも名前くらいあるよ。シリウスっていうんだ。ちゃんと名前で呼んでくれれば……うーん、たまに会ってあげるよ。気が向いたらね」


「たまにって会ってくれるのはありがたいと思うよでも……どうやって?」


「どこでもいいよ。何か“反射するもの”……鏡とか、金属とか。君の姿が映ればそれでOK。そこで僕の名前――“シリウス”って呼んでごらん。」


(なんか白雪姫にでてきた名前は知らないあのやつみたいな…)


などと考えていたら、神――いや、シリウスが手をすっと差し出してきた。


「じゃあ……異世界転生、スタートだ。もう一度、この本に触れてごらん」


目の前に現れたのは、あの見覚えのある本。ページが少しほつれ、触れた瞬間に指先にざらりとした古さが伝わってくる。久しぶりに触った。少し色々あったからな。


その瞬間、目の前が眩しく光った。



目を開けると、そこには疲れた顔のヨーロッパ系の女性が座っていた。けれど、その顔には確かに笑みがあった。やさしく、どこか安心する目で俺――いや、“赤ん坊の俺”を見つめていた。俺いま産まれたのか?!!


「ママでちゅよ〜」


そう言って微笑んだその瞬間――なぜか俺の口元がにやけて…と、思ったら自分でも制御できないものが込み上げてきた。


(あれ……なんか……泣きそう……っていうか泣いてる!?)


涙が止まらない。感情が溢れてくる。


(あ、そうか……これは“転生”なんだ。だから赤ん坊スタートなのか!)


冷静に納得する一方で、別の思考も駆け巡る。


(ていうかママ、美人すぎない?)


しばしうっとりしながらも、ふと疑問がよぎった。


(親父はどこ行った!? まったく、こんなときに……頼りないやつだ)


……たぶん、嫉妬だ。ずるい。ずるい。ずるい。


(ふっふっふ……だがこれで、俺の異世界ライフがスタートだ! 無双の始まり! お決まりのやつだぜぃ!!)


と、意気込んだその時。


(あっ)


脳内に寒風が吹く。


(この世界……トラウマを口にすると死ぬんだった……)


(……どうやって無双すんのコレ!?)


絶望のまま、母の腕に抱かれながら、この世界にきて初めての俺は情けない声を頭の中で上げていた。


(ああ……早く喋りたい。コミュニケーションとりたい……)


その思いに、自分でも少し笑ってしまった。


引きこもりだった俺が、“話したい”なんて。

人生、何が起こるかわからないもんだ。


美人ママ…

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