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1話 ロード長すぎん?!

ロード?!

目を開けると、見たことのない風景が広がっていた。


けれど、不思議と懐かしさのようなものが胸に差し込んでくる。うん。これは醤油と味噌の香りだな。カツオ節も香ってんのか?とりあえず日本を感じさせる、そんな風景だった。


「……なんだろう、この感じ。ちょっと安心…安心…できるか!!」


少し安心した愚かな自分に腹が立った。


「いやいやいや、全然知らない場所だろここ!! 俺、なんか落ち着いてるけど、だいぶヤバい状況じゃないか?」


ふと、記憶が頭をよぎる。


「あれ……たしか俺、本に吸い込まれて――」


言いかけて、自分の身体を見る。くたびれたTシャツに、どこか絶望を詰め込んだような腹まわり。自分で言うのもなんだが…やっぱやめだ。これ以上辛い思いをしてどうなる。


「……うん、だらしない。絶望と脂肪のハーモニーって感じだな。なんかラッパーみたいだな。『YO、絶望と脂肪!』……笑えんわ」


下手な韻踏で無理にテンションを上げてみたが、気はまったく晴れなかった。とにかく、今のところ分かるのは――


「これはたぶん……ラノベでよくある転移、だよな。異世界転移ってやつ」


残念。転生じゃなかった。

だが、ここがどこの国で、どんな人が住んでいて、言葉が通じるのかも分からない。


「……まずは人を探すか」


心細いので人に会いたいとは思うがやっぱり人には会いたくなかった。会ったとして会話することはできるのだろうか?ただでさえいままで家族とも話す機会がなかったのに。


そうして少し歩いた先、ツタが絡み合っている古びた建物の壁に一人の老人が座っていた。髪は白く、顔には深い皺。手には細い杖を握っている。


「……すみません、こんにちは」


思い切って声をかけてみたが、老人はびくりとも動かない。返事もない。まるで何かを拒むかのように、固く口を閉ざしていた。


(もしかしてここは日本じゃない?日本語が通じないとなると結構ムリゲーだぞ、こりゃ)


もともと自分の人生自体がムリゲーでいままでプレイしていたのだが。全くレベルは上がらない。なぜなら引きこもりだったからだ。どうして経験値が得られるのであろうか。


軽く気が重くなったそのとき、老人がゆっくりと顔を上げ、沈んだ声でこう言った。


「……申し訳ない。それは……私にとっての、トラウマなのです」


時が止まったようだった。風の音さえ遠くなった気がした。


「……は?」


主人公はただ、ぽかんとするしかなかった。頭は疑問で沢山だった。何が?トラウマ?


主人公は知らなかった。この世界では、人はトラウマの言葉を口にすると、命を落としてしまうのだと。誰もが、自分の心の深くにある「言葉」を口にすることを恐れ、避けて生きていた。


老人が返事をしなかった理由――それは「こんにちは」という言葉が、彼にとっての禁句だったからだ。


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