19話:処刑を免れるべし
「とりあえず処刑を免れよう」
俺は胸の内で固く決意した。ゴールは明確、ただ生き残ること。
そこで考えた。方法はいくつかある。
一つ目――言葉を喋って、俺が悪いやつじゃないことを必死に訴える。
二つ目――なんか信用されるようなことをやる。(アバウトすぎるけど仕方ない)
そして三つ目――できれば使いたくないが……赤ちゃんらしく可愛く振る舞い、処刑を阻止する!
……うん、ないな。これは絶対にいやだ。羞恥心で死ぬ。
現実は非情だ。けれど諦めるわけにはいかない。
まずは言葉を覚えること。それが第一歩だ。
俺は深呼吸して呟いた。
「ドランストレート!解除!」
シリウスに教わったやり方だ。――が、なんか違和感。
(え、ラノベならもっとかっこいい単語出てくるよな? “リバース・トランスレート”とか?)
……まあ、普通は「解除」でいいんだろう。
さて、勉強相手が欲しい。やっぱりママに頼るしかない。
「ママ召喚魔法」といこうじゃないか!!
俺は片足を抱え込む――そして全力で叫んだ。
「オギャー!オギャー!!!」
……ふう。これで完了。
妙な達成感が胸に広がった。なんというか、一仕事終えた感ってやつ。引きこもってた頃には、絶対味わえなかったやつだ。
「よし……これで、言葉マスターへの第一歩だ!」
ドランストレートとドランストレート解除を繰り返し、この世界の言葉を必ず習得してみせる。
――最強に情けない赤ん坊の戦いが、今始まった。