15話:トラブル・吸引
森に行ってから一週間。今日はシリウスが来るらしい。
実に一ヶ月ぶりだ。昨日なんか“脳の伝達”みたいな感覚で「シリウスが来るぞ」って通知があったんだよな。なんだったんだ、あれ。
ふあっと、目の前にシリウスが軽く現れた。
「よっ」
「何してたんだよ、一ヶ月も」
「ごめんごめん。僕も君に会いたかったけど、ちょっと用事があってね。まあ、あの調子なら大丈夫だったでしょ?何もなかったはずだ」
「いや、あったけど!? 森に行ってトラウマ植え付けられそうになったんだけど。シリウス、それ知ってるか?」
「えっ!?僕そんなの知らない…って、トラウマ!? 新しく植え付けられなかった? もしトラウマが入れ替わってたら……もうお仕舞いだよ!!」
「なに言ってんだよ。変わってねーよ。……てか、お前の目から見た俺ってそんなに弱そうなのか」
「ギクッ」
「さてはトラブルあったな! あれだけ会いに来てたのに急に来なくなって!」
シリウスは黙り込む。
「おい! なんか言えよ!!」
「……分かった。話すよ。ただその前に言わせてくれ。僕は悪くない。悪くないんだぞ!」
シリウスは早口になった。
「僕はね、君がこの家に転生したとき思ったんだ。“なんかボロくない?”って。本来なら転生者って結構な貴族とか、城とかで生まれるんだよ。でも君は没落貴族か、少し裕福な平民。おかしいと思って調べたんだ。住民票をね。そしたら……ただの平民だったんだよ! どうやって生きていくのか。トラウマがすごいだけじゃないか」
……けど俺はそこまで驚かなかった。
なんなら自分でも思ってたし。
「おい、なんか言ってくれよ。まさか死のうとしてるんじゃないだろうな? 重要なお母さんの問題もあるし、最強のなんかもないし、どうすればいいってんだよ! 本当にごめん。でも転生はもうできないんだ」
必死のシリウスに、俺はため息をついた。
「だから森に行ったって言ったろ? そしたら分かったんだ。俺のおじいちゃん、元騎士団長だったんだよ」
「……本当か? でも嘘なんじゃないのか?」
「いやいや、あの森の王“ノックデントステスト”を一切りで倒してたぞ」
「まじか……もしかして、そのおじいちゃんの名前は……デックじゃないのか?」
「デック? 違うよ。デンケンだ。デンケンおじいちゃん」
シリウスは口を開けたまま固まった。
一分は経った。
そして――満面の笑みを浮かべた。
「……そっか。なぜそうなったのかは知らないけど、君の最強無双は確実だよ! よかった、本当に!」
デンケンおじいちゃん、マジで頼もしすぎる。
……乳首吸わせてくれ。




