14話:最強が近くに
いま俺たちは森に向かっている。トラウマを“植え付ける”とか物騒なことを言ってる道中だ。
いや、俺にはもう立派なトラウマがあるんだけどな。立派…かどうかは怪しいが。
でもさっきからなんか変な感じがするんだよな。そう、違和感ってやつ。
――おっと気づけばお母さん(クレフィ)の腕の中で、すでに森の手前に来ていた。
異様に濃い靄が漂っていて、前世で見た「森」なんかより数段ヤバそうだ。
あ、違和感の正体はこれか!
メンバーが心もとないんだよな。親戚が4人、俺とお母さん、そしておじいちゃんデンケン。
……いや、少なすぎない? こんなん魔物出るに決まってるだろ!前世で見た異世界アニメ情報によれば、森=モンスターは常識だ。
そう思っていたら、みんな立ち止まった。どうやら着いたらしい。
ふと気づいた。そういえば俺、最近ぜんぜん泣かなくなったな。赤ん坊なのに。
それでもまだ座っていない首を持ち上げてお母さんを見ると――顔がめっちゃ引きつってる。そりゃそうだ、怖いに決まってる。
しかも周りの大人たち、頼りなさそうだし……。全く、もっと若くて腕っぷしのある奴いないのかよ!
森に足を踏み入れる前に、みんなで掛け声をしていた。
「やー! やー! おー!」みたいなやつ。
なんか笑いそうになったけど、こういう儀式は大事なんだろう。俺は前世で一度もやったことないけど。
その時――草むらが「ガサッ」と鳴った。
うお、なんかいるぞ。ポケモンでもこういう演出あったよな。
……音が変わった。重い「ドンドン」という振動に。
でっっけーーーッ!!!
木くらいの高さ……いや、3メートルはあるだろう。とんでもないデカブツが姿を現した。
親戚の一人、ダリルが呟く。
「運が悪いな……カウロス森の王、ノックデントステストだ」
名前長ぇ!! てか恐竜映画かよ!
思わず俺、赤ん坊なのに泣いた。
「危ないぞ! デンケン! 逃げろ!!」
心の中で叫んだが、俺のおじいちゃんは涼しい顔で前に出て、剣を――めっちゃ重そうに――抜いた。
やばい、心配だ……と思ったら、なんか誰も下がる気配がない。
むしろお母さんなんか楽しそうに見えるし。ドン引きなんだけど!?
次の瞬間。
――ズバァッ!
一閃。デンケンじいちゃんは、カウロス森の王の首を一撃で落とした。
「カッケェ!!!!」
親戚たちが口々に言う。
「さすがだなデンケンさん」
「なまっちゃいない、やっぱ元騎士団長様!」
……えっ?元・騎士団長!?
ちょ、俺ってその孫じゃん!? え、最強血筋確定じゃね!?
デンケンおじいちゃんは静かに剣を納めて言った。
「これで孫にカッコいいところも見せられたし、トラウマになりそうな場面も作れた。だが……光はなし、か。わしと一緒でなかなかタフだな」
そうか、ノックデントステスト。なんか言いにくいなと思った。こういうトラウマを植え付ける名前としてはある意味最適かも知れないな。
とにかく今日はここでお開きらしい。
だが分かったことも多かった。とくに――俺のおじいちゃんが「王国元騎士団長」だってこと。
これって、もう属性診断で良い結果が出る未来しか見えないんだけど!?
なんか最強っぽさが一気に出てきた感じだ!!




