表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/19

本当引きこもりってやつは…

本当本

つまらない毎日だ。

冗談抜きで、俺の人生、ほとんど「待機画面」って感じ。


なにしてるかって? そこのマイ(イマジナリー)フレンド、よくぞ聞いてくれた!

FPSだな。シューティングゲーム。

あと、本。読むやつな。ラノベとかファンタジー系とか。


……他? うん、たぶん、ある。はず。あると思いたい。俺のことはどうでもいいんだよ。なぁ、聞いてくれよマイフレンド!


先週な、とんでもねぇ強いプレイヤーとマッチしてさ。

@vusydxjb。読めねぇよ。なんだその暗号。

それでいてめちゃくちゃ強ぇ。開始2分で俺、画面の端で寝てたよ。仮想世界でトラウマ植え付けられた引きこもりって俺ぐらいだろ。笑えよ。笑え……ないな、うん。引きこもりでもトラウマが出来るなんてな。


まあ、そんなこんなで今日も一日、部屋の隅でぬくぬくと過ごしていたわけだが。

昨日だ。昨日の夜、ふと立ち上がった拍子に――床が抜けた。


いやマジで。突然。綺麗に、ぺりっと。


慌てて戻そうとしたら、そこに……本があったんだよ。


古びた装丁、よくわからない表紙。でも、なぜか手が伸びた。

開いてみたくなった。なんか、引かれる感じ。


「ヘイ、新人book! なんか面白いことやってみろよ〜」


……って、言ってみたはいいけど、だんだん虚しくなってきてな。

俺、何やってんだろって。声に出して言ってる自分に泣きそうになった。


でも、まあ……読むか。

それしか、ないしな。


ふむふむ……と俺は声に出して読んでいた。


「余は終日、書斎に蟄居し、身をもてあそばすこともなく、ただ徒らに日を送るばかりなり。」


おぉ、文語体。古い日本語ってやつか。

でも不思議とスラスラ読める。さすがに本を読みすぎて活字には耐性がついたらしい。


それにしても……なんだこの文章。まるで俺じゃん。


書斎? 俺の部屋。

蟄居? 完全に引きこもり。

日を送るだけ? まさにそれ。


「……なんか俺みたいじゃね?」


自然と笑みがこぼれた。

笑った。ゲーム以外で笑ったの、いつぶりだ?


なんかこう、同士を見つけたような気がして。

時代も場所も違う誰かが、同じ孤独を過ごしてたってだけで、ちょっと救われた気がした。


「この世界、行ってみてぇな……」


憧れだった。

間違いなく、これは憧れだった。


そしたらさ――本が、光り出した。


「……え?」


いやいや、待て待て。SFかファンタジーか知らんけど、物理的に本が発光するってどんな状況だよ。


と思った矢先、俺の身体が粒子になった。


マジで。


バチバチバチッ……と音がして、指先から肩へ、肩から胴体へと、光の粒になって崩れていく。


「は? ちょ、え? まっ、まってまってまって!!」


やばいやばい、ガチじゃん、ガチ転生系じゃんこれ。


そして俺の脳内に浮かんできたのは――


「いや!! 俺が太ってるからといっても魔人ブウちゃうねん!!

やっとわかったぜ、お前の片付け方が! ……ってか??」


なんでこのタイミングでドラゴンボールの感動シーンが浮かぶんだよ、俺。


ああ、そうか。

この前、好きなVTuberが配信でやってたな……「ブウ編、マジで泣けるぅ〜」って。


それか、子供の頃の記憶か。

どっちにせよ、家族とか、現実とか、未練とか、一切浮かんでこなかった俺って、どうなん?


でも――少なくとも俺は、そんな自分のことを、ちょっとだけ気に入ってる。


この男とてつもなくつまらない。…ただ僕個人的には少し面白いと思うよ。そのボケ?ツッコミ?


そして、光は完全に包み込んだ。


世界が反転し、重力がなくなり、視界が真っ白になる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ