表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朽ちぬ女王  作者: 水無適
58/61

58

俺は節操のないルヴェイン子爵が、メイドに手を出して生まれた庶子だ。

母と二人、小屋で暮らしていた。


母は、ろくでなしの血が流れる俺のことも大切にしてくれた。

時折、俺の中にあいつの影を見つけて怯え、手をあげることもあったが、根は穏やかな人だった。


だが、八歳のあの日、人生は一変した。


小屋を訪れたあいつは、俺を気に入った。

そのまま襲おうとしたあいつの顔を、母は果物用のナイフで切り裂いた。


激昂したあいつは騎士を呼び、母を殺した。


その日、俺は初めてナイフを握り、人を刺した。

何が起きているのか理解する余裕はなかった。

顔に生温かい血がかかっても、ただ必死に腕を振るうしかなかった。


あいつは俺を連れ帰ろうとした。

その瞬間、梟が現れた。


あいつはカトリーヌ伯爵の暗殺を企てていたが、失敗したらしい。

その報復として送り込まれた暗殺者に、命を狙われていたのだ。


混乱の中、俺は物陰に身を潜め、息を殺した。

長く続いた悲鳴が止み、足音が一つだけ残った。


その人は、指示ひとつであいつの首を落とせるほど、追い詰めていた。


だが俺は見つかり、首を切られかけた。

それを見たあいつは、俺を差し出すことで命乞いをした。


「ふざけているのか?」


「本気ですよ。アレをあげましょう」


「私に何の得がある?」


「見た目がいい。きっと満足していただける」


「……もういい。撤収だ」


「ですが……」


「ああ、そうだ。そのガキを連れて帰る。

 お前、名前は?」


「ギルバード。ギルバード・ド・ルヴェイン」


「そうか。ギルバード。今日からお前は私に仕えろ」


「……はい」


カトリーヌ伯爵は、俺を丁重にもてなしてくれた。

そして騎士となり、仕えることを許してくれた。


俺にとって、あの人は救世主だ。



「話してくれてありがとう。辛いことを話させてしまって、ごめんね」


「いえ。ここまで問題が大きくなってしまえば、仕方のないことです」


「あなたは、ルヴェイン子爵とは血筋以外、何の関係もないのね?」


「はい」


「……そう」


おかしい。

私らしくない。


謝ることも、人を庇って自分の身を危険に晒すことも。


情が湧いてしまったの?


このままでは判断力が鈍る。

このままでは、アルスに滅ぼされる。


だから、前のように感情を切り捨て、合理的な選択をすべきなのに。


それなのに、体は逆に動く。


目の前で人が死ぬのを見たくなかった?

私が原因で人が死ぬのが、嫌だった?


そんなこと、百も承知でこの計画を進めている。


――答えはもう分かっている。

でも…認めたくない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ