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「耳寄りな情報があるのだが……聞くか?」
「いくらだ?」
「我々の味方になってくれればいい」
「内容にもよるな」
「あなたが探している“灰色”を見つけましたよ」
「……そこまで調べがついているのか」
「どうです? 差し上げますが」
「いいだろう」
「では、こちらに署名を」
「ああ」
「これで契約は成立です。近いうちに、あなたの可愛い灰色も手に入るでしょう」
「それで、協力というのは?」
「こちらです」
「……旧王家の生き残りがいたのか」
「はい。金髪に緑の瞳。たいそう美しいそうですよ。場所は聖国です」
「……おや。運命とは皮肉なものだな」
「見つけ次第、始末してください」
「心得た」
ドアを閉め、男は手を二度叩いた。
すると三つの人影が姿を現す。
「聖国へ向かい、こいつらを捕らえてこい。殺すなよ」
「承知」
影は音もなく消え、廊下には男ひとりが残った。
「また会えるとはな……期待を裏切ってくれるなよ」
雷光に照らされた男の顔には、深い古傷が刻まれていた。
*
「おかえりなさい」
「おう、ただいま……随分と綺麗になったな」
「……レオン殿」
お嬢様の顔色が変わる。
「呼び捨てでいいと言っただろう?」
「……レオン、あなた何を連れてきたの?」
乾いた銃声が響く。
あの日と同じ、耳障りな音だった。
「初めまして」
「ずいぶん物騒な訪問ね。ご用件は?」
「あなたと……そこの方を連れて帰らねばなりません」
「……私とギルを?」
「ええ。ですから、抵抗はなさらぬよう」
周囲を見渡すと、すでに完全に包囲されていた。
「カリスタ様……お逃げください!」
「……あなた、なぜここに!?」
エリンのこめかみに、銃口が押し当てられる。
「撃たれたくなければ、大人しく従うことだ」
……まずいですね。
エリン様は紫の国の王が直々に遣わした方。
ここで失えば、国際問題に発展しかねません。
しかし、だからといって従うのも――。
「……わかったわ」
「お嬢様!?」
「いいから、従いなさい」
『分身して、私たちに半分つけなさい。人質を取られた以上、従うしかないの』
頭の中で、短い会話が交わされる。
『お嬢様……人質程度でご自身の命を差し出す方でしたか?
私たちの記憶にあるあなた様は、自分の命が最優先だと理解していたはずですが』
『……いいから従いなさい』
『このままでは破滅を招きます。侍従は替えがききますが、王は違いますよ』
『……わかっているわよ』
『それなら、よろしいのですが』
「カリスタ様! 従ってはいけません!」
「ついていくから、その子を離して」
「…そんなっ!」
「断る。途中で逃げられては困るのでね」
「ギル、悪いけどついてきてもらうわよ」
「……」
「ギル?」
ギルの顔は、血の気を失っていた。
まるで、この世の終わりを見たかのような表情だった。
「ついていくわ。その代わり、私とギル、エリンには指一本触れないで」
「ご協力、感謝します」
滞在場所の外では、アルスの戦闘機が静かに待機していた。
*
「申し訳ありません……! 私のせいで、カリスタ様が……」
「大丈夫よ。エリン、怪我はない?」
「ありません。でも……カリスタが捕まってしまって……」
「気にしなくていいの」
「……っ」
エリンは涙をこぼし、何度も頭を下げた。
「いい子ね。
ねえ……ギル、そろそろ話してくれる?
あなたはなぜ、敵対関係にあるカトリーヌ伯爵のもとで騎士をしているのかしら?」
「……それは……」




