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一見平凡に見えるその街は、微かに、でも確かに神聖な空気を纏っていた。
「カリスタ様ご一行ですね? 赤の王から話は伺っております。すぐに王との謁見ができるよう取り計らっております」
私たちを迎えたのは神官だった。
言葉通り、すぐに謁見が執り行われた。
「同盟を締結しましょう」
教皇の宣言と共に、右目に聖痕が刻まれる。
――赤の国
「うっ」
「オズワルド様?!」
「大丈夫だ。カリスタがやり遂げたんだ」
――橙の国
「陛下?!」
「あの子ね」
――黄の国
「英雄の新たな時代の幕開けか」
――緑の国
「陛下?!」
「カリスタ様が無事に同盟を締結しきったのよ」
「なんと……!」
――青の国
「おっ……あいつら元気にしているかな?」
――藍の国
「陛下、同盟が締結されたのですね」
「ああ」
「……あの子には悪いことをしました」
「その分、力になろう」
「ええ」
――精霊の泉
「精霊王様……!」
「あの小娘が宣言通り虹を完成させたんだ。ますます気に入った」
――紫の国
「これにて虹の同盟は正式に締結されました」
「これでやっと……!」
「はい。詳しい話をしたいところなのですが、生憎今は忙しい時期でして……我が国には治癒の泉があります。ぜひ楽しんでいってくださいね」
「お忙しいところありがとうございます」
「時間を確保でき次第、使者を送ります。それまでは旅の疲れを癒やしてください。案内係をつけましょう」
「ありがとうございます」
あっさりと同盟は結ばれた。
「お嬢様、今日中に治癒の泉に行きましょう」
「わかったわ」
「お初にお目にかかります。案内係を任されました、エリンと申します」
「はじめまして。私はカリスタよ。まずは治癒の泉に案内してちょうだい」
「かしこまりました」
治癒の泉。それは神殿の地下にあった。
入る頃には日は落ち、月が見え隠れする時間になっていた。
同伴者は私たちだけ。
カリン様、ギル、殿下、エリン様は外で待機しています。
「……染みるわね」
「……!」
月明かりに照らされた水がお嬢様をさらに美しく彩る。
柔らかな金髪は水に濡れ、重さを帯びる。
纏わりつく衣服は彫刻のよう。
薄暗い空間に妖しく光る緑の瞳は、すべてを支配する。
動いていることに違和感を覚えるほど、芸術品のようだった。
「この傷、神の力だと治るのね……」
「美しい……」
「拭くものをちょうだい」
「かしこまりました」
久々に、魔法のかかっていないお嬢様の顔を見ました。
やはり、本物に勝るものはありませんね。
できるだけ、目に焼き付けておきましょう。




