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朽ちぬ女王  作者: 水無適
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本話には、過去の搾取やトラウマを想起させる心理描写が含まれます。

苦手な方はご注意ください。

「あなたは……リサを殺した人ね」


「リサ? 誰のことだ?」


「あなたが戴冠式で殺した、赤髪の女よ」


「ルビギナのことか」


「覚えていたのね」


「そんな話は置いておいて、今、何があった?」


人を殺したことを“そんな話”で済ませるなんて……。


「……あなたに答える義務はないわ」


「フロリスは、あんたのことをそれなりに嫌っていたよ」


「……そう。嫌っていてくれたのね。

 優しいから、きっと赦してしまっているのかと思っていたわ」


「あんたが、自分の過去を知る人間だって言ってた」


「……聞きたいことは何?」


「何があったのか。フロリスが死ぬきっかけを知りたい」


「……話の途中で、私を殺さないと約束できる?」


「ああ」


彼は、この約束を破らない。

そう思った。


「彼と、二人きりにして」


「!? お嬢様?」


「今回は譲れないわ。いいから従いなさい」



「まず、あなたは私の過去について、どこまで知っているの?」


「フロリスと同じ組織にいた、ってことだけだ」


「なんだ、何も知らないのね」


「あんたのことを知りたいわけじゃない」


「話が複雑なの。結果的に、私の話をする必要があるだけよ。そうでなければ話さないわ。

 この話をするのも、あなたが初めて」


「わかった」


「いい子ね。

 まず、私とフロリスが出会ったのは、組織の宿だったわ。

 私たちは“商品”だった。私は新入り、彼は先輩」


「商品? 何を売っていたんだ?」


「決まっているでしょう?身体よ、身体。

 ……話を戻すわね。


 私たちは容姿が良いから、組織の上層部と関わりの深い貴族の相手をすることが多かった。

 私はすぐに売れたから、穢されることはなかったけれど……彼は違った」


彼女は一瞬、言葉を選ぶように息を置いた。


「特に多く、私たちの一晩を買っていたのが――ルヴェイン子爵。

 あそこにいる剣士の父よ」


名前を口にするだけで、彼女の声が僅かに震えた。


「多分、彼は戦闘中にフラッシュバックを起こしたの。

 私ですら、名前を聞くだけで震えが止まらない。

 彼は……それどころじゃなかったでしょうね」


「フロリスの過去が、あいつから生きる気力を奪った……?」


「……恐らくは」


「なんてことを……」


「この話、誰にも漏らさないで。

 私だけじゃない。彼の名誉のためにも」


「わかってる。……そんな話をさせて、悪かった」


「いいのよ。あなたは、彼を救ったのでしょう?」


「どうだろうな」


座っていた彼女を立たせ、そしてあの剣士に告げた。


「あんたは、親諸共俺が殺す」


「……わかった。覚悟して待っている」


俺は動かなくなったフロリスを抱き、静かにその場を去った。

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