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「お久しぶりです。お姫様」
「ええ……ノエル。私を殺しに来たの?」
「結論から言いますと、そういうことですね」
「お嬢様?!」
私たちの警戒をよそに、お嬢様は銀髪の少年のもとへ歩み寄った。
「そう……なのね。こっちを見て」
少年が、ゆっくりと顔を上げる。
「どうしても、あなたと殺し合わなくてはならないの?」
「……虹の同盟を締結しないのなら、考えようはありますよ」
「そう……では、無理なのね」
そう言って、お嬢様は静かにこちらへ戻ってきた。
「貴方たち、私を守りなさい」
覚悟を決めた声音だった。
懐かしさと悲しみを帯びたその瞳は、なおも彼を映している。
「ネレウス、交渉は決裂した。出てきていいよ」
「最初からそうすればよかったのに」
「……そうかもね」
「行くよ」
黒髪の少年が構えを取る。
そして迷いなく、私たちとレオンへ向かって踏み込んできた。
「ギル、カリン様、頼みます!」
「はい」
「私はカリン様の防御に徹します。相手はあなたに任せます」
「わかりました」
二人の間に、短い沈黙が落ちる。
「はじめまして、そして…さようなら」
手首を切ると、薔薇の香りが立ちこめ、周囲を支配した。
「ギル、鼻を覆いなさい」
「はい!」
「カリンもよ」
血が落ちた地面は、その全てが死んでいく。
「これは……直撃したら危険ですねっ!」
「あなた、人間の割に素早いですね」
「まあ、王太子殿下直々に身体強化の魔法を教わったのでね」
「面白い冗談です」
「冗談じゃないんだが……」
「それでも不思議ですね。あなたを見ていると、苛立つ。なぜでしょうか」
「知るかよ」
降り注ぐ血の攻撃を完全には避けきれず、ギルの皮膚は爛れ落ちていく。
焦げたような匂いが、空気に混じった。
「酷い傷……。でも、魔法で隠していなければ、私のほうが酷い姿なのでしょうね」
「カリスタ様、そのようにご自身を貶めてはいけません」
「……そうね。でも、私はこういう時、護られていることしかできない」
「私も、戦うことは得意ではありません」
「それでも、手段は持っているでしょう?」
「それは……そうですが」
「意地悪なことを聞いたわ。忘れて」
時は緩やかに流れ、戦いは激化していく。




