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時というものは残酷なほど早く過ぎていく。
クロードを失ってから、もう四ヶ月。
今日は彼の葬儀の日だった。
喪服に身を包んだお嬢様を先頭に、私たちは静かに墓所へ向かう。
そこにはすでに多くの貴族と王族が集まっていた。
クロードの氷塊はもうなく、彼は棺の中に安置されているようだった。
深く掘られた墓穴へ、順番に花を手向けていく。
そして、私たちの番が来た。
「クロード、今までありがとうございました。あなたに会えて、本当に嬉しかった」
「クロード様、本当にありがとうございました」
「なあクロード、あっちでも鍛錬は続けるんだろ? 次に会ったとき、手合わせできたら嬉しいぜ」
レオンは約束通り、小さな声で語りかけた。
「どうか、安らかに眠れますように」
死は、生者には恐怖そのもの。
けれど、生きている限り逃れられぬものでもあります。
だから私たちは、クロード様の死を否定しません。
もちろん、肯定もできないけれど。
私たちは白い花を添えた。
その後、国王、王妃、王太子たちが順に別れの言葉を述べる。
そして最後にカリンが静かに呟き、魔法で土をかけ始めた。
少しずつ、丁寧に、まるでクロードを優しく包むように。
一時間ほど経ち、作業が終わった瞬間だった。
光が差し込み、温かな風が参列者全員を包み込んだ。
それは――明るくて元気な、クロードそのものだった。
「クロード、私……頑張るから。だから、見守っていてね……」
カリンの言葉に呼応するように、彼女の心臓の上に淡く魔法陣が刻まれていく。
「あなたは、本当に私を驚かせるのね……」
クロードを失ったあの日以来、屍のように生きていたカリンの顔に、初めて笑みが浮かんだ。
困ったように、それでもどこか愛おしそうに。
それから国は一週間、喪に服した。
国民たちも深く悲しんでいた。
クロードは、それほどまでに慕われていたのだ。
困っている人には自然と手を差し伸べる――そんな彼だからこそ。
***
「____という状況です」
「わかった。同盟を結ぼう……と言いたいところだが、虹の盟約には精霊王と妖精王、両方の承認が必要だ」
「精霊王と妖精王……の承認、ですか?」
「ああ。我が国には“妖精の森”がある。その奥に“精霊の泉”があり、そこで精霊王を呼び出す必要がある」
「えっと……妖精王はどちらに?」
「ん? ああ、言っていなかったな。藍の国を統治しているのは妖精王だよ。国民も人間ではない」
「……え?」
「まあ、人間と大差ないがな」
「そ、そうなのですね……。とりあえず、私たちは精霊の泉へ向かえば良いのですか?」
「ああ。ただし、貴女たちだけでは辿り着けない。妖精王の承認を受けた“妖精の同行”が必要だ。……だから、カリンを連れて行ってくれないか?」
驚いたことに、この方は――まるでお嬢様の考えを読み取っているようでした。
***
その夜、葬儀が終わった後。
「お前たち、いるね?」
「はい、ここに」
「少し相談があるの」
「何でもおっしゃってください」
「同盟を結ぶために、カリンとクロードをオズワルド殿から頂いたけれど……カリンの故郷はここだし、療養が必要だと思っているの。紫の国へ連れて行くべきかどうか……迷っているのよ。カリンは優秀で、大切な仲間。でも、今のあの子は壊れかけている。あの子のためなら、ここに残した方が良いんじゃないかって……」
「カリン様に直接お聞きしてみては?」
「それすら負担になってしまうかもしれないじゃない」
「……そう、ですね。まだ時間があります。ゆっくり、ゆっくり考えてみてはどうでしょう」
「そうね……そうするわ」
***
「……お見通しですか」
「あの子がここに居続けたら、塞ぎ込むだけだからね。旅をさせて、心を休めさせたいんだ」
「私としても大切な仲間ですから連れて行きたいのですが……本当に、負担にならないのでしょうか?」
「今回は、そのためのお試しだよ」
「……本当に、素晴らしいお方ですね」
「ああ。準備に三日もらえるかな?」
「わかりました。では、失礼します」
「あ、そうだカリスタ殿、時間は空いているかな?私の妻の話し相手になってほしいんだ」
「もちろんです」
「案内させよう」
レオンとギルには下がってもらい、私たちとお嬢様は、王妃様の待つ温室へと向かった。




