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朽ちぬ女王  作者: 水無適
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バチン、とビンタの音が響く。

思わず目を見開き、その光景を私たちは見ることしかできなかった。


「なんでっ…なんで!!!」

「…申し訳ありません」

「なんで!!! あんたが謝るのよ!」


ついに女から涙が溢れ、カリンにすがりつく。


「すぐに帰ってきてよお…」


しゃくりあげながら泣きじゃくる彼女を止める者はいない。

彼女の護衛騎士ですら、遠くから見ているだけだった。


「…っ、おかえり」

「ただいま帰りました」


落ち着いたのか、彼女は私たちを客間へと案内した。


「大丈夫ですか?」

「はい」

「カリン、あいつは誰なんだ?」


レオンは、私たちが気になっていた疑問を投げた。


「あの方はあの子の…クロードの婚約者です」


時が止まる。

頬が赤く腫れたカリンは、こらえるように唇を噛んで俯いた。


静寂を破ったのはノックの音だった。

入室を許可すると、中年の女と男、そしてクロードの婚約者が入ってきた。


「ただいま帰りました」

「おかえりなさいカリン。おまえは無事…どうして頬が腫れているんだ?」

「そういうことを聞くのは無粋ですわよ、あなた」

「すまんなカリン」

「クロードの葬式の準備はできているわ。来月に行う予定です。カリスタ様、少しカリンを借りてもよろしいでしょうか?」

「勿論です」

「ありがとうございます。なにか不自由がございましたら執事に申し付けください」

「こちらこそ滞在を許可してくださりありがとうございます」

「それでは、失礼いたします」


カリンとよく似たその女は、カリンを連れて部屋を出た。


「レオン殿、お話があります」

「? わかった」

「くれぐれもあの子の葬式で失言をなさらないでくださいね。というか何も喋らないでください」

「どうしてだ?」

「あなたのその口は些か制御が難しそうですので」

「そんなあ…」

「あの子を大切に思っているのならば従ってくれますね?」

「…わかった。だが、あいつに最後一言言いたいことがあるんだ」

「小声ならいいですよ。その一言すら害になり得ることをご理解くださいね」

「わかったよ」

「わかったのならいいです。ギル、悪いけどレオン殿を見張っていてくれる?」

「承りました」

「カリンは藍の国の王女だったのね。青の国の王の姪と聞いたときから少し想像はしていたけれど」


ノックの音が響き、ドアが開く。執事が来て私たちを案内した。

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