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朽ちぬ女王  作者: 水無適
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朝を迎えた。

どんよりとした曇り空の下、湿気を含んだ重たい空気が肌にまとわりつく。


「おはようございます」


私たちはお嬢様に紅茶を差し出した。

いつも通り、あっさりとした味わいの紅茶。お嬢様はそれを飲み干し、顔を洗い、着替えを済ませる。何ひとつ変わらない、いつもの朝のルーティーンだ。


「おはようございます」


食堂に向かうと、すでにカリンが座っていた。

目元が少し腫れている。一晩中泣いていたのかもしれない。レオンもそれに気づいたのか、じっと彼女の顔を見つめていた。


「? 皆さん、どうなさいましたか?」


本人だけが気づいていないようだった。

それでも、明るく振る舞おうとしている以上、私たちからは何も言えない。――しばらく様子を見ましょう。


朝食を終え、謁見の時間を迎える。


「ドラゴン退治、誠にありがとうございました。同盟の締結と、武器の支援を約束いたします。有事の際には、必ず助けに参りましょう」


小柄ながらも堂々とした黄色の国の王。

お嬢様と同じく、支配者には独特の威厳と風格がある。

こうして流れるように同盟は結ばれ、私たちは見送られながら緑の国へと向かった。

緑の国でも同様に、形式的ではあるが同盟は締結された。


「私たちからは食料の提供と、有事の際の軍事支援を約束するわ。あなたたちには恩があるもの」


女王が目配せをすると、トーマスが姿を現した。


「カリスタ様のおかげで、この者も救われましたの。この間まで生きる気力を失っていた男が、希望に満ちて戻ってきたのです。

私たちは仲間を大切にします。その仲間の恩人ならば、皆の恩人に値しますわ」


女王はにこりと笑い、血判を押した。

これで四つ目。残りは半分だ。


次の目的地は青の国。知識を尊ぶ彼らには、ドラゴン退治の際に手に入れた本の山を贈る予定だ。その中に、彼らが興味を示すものがあればよいのですが――。


私たちは緑の国を後にし、山深くへと進んでいった。

周囲には木々ばかりで、精霊も妖精も、幽霊の類すら姿を見せない。

やがて、開けた一角に辿り着く。


「ようこそお越しくださいました」


着物を纏った人間が二人、笑顔で立っていた。


「対価をお支払いください」


その笑顔は、まるで貼りつけたように動かない。


「対価…?」


お嬢様が小さく首を傾げると、カリンが一歩前に出た。


「どのような情報が欲しいのですか?」

「あなたは、何を私にくれるの?」

「そうですね……新しく開発された魔法でしょうか」

「……」

「その魔法は、ドラゴン退治にも役立ちました。

バリアに“弾力”という概念を加えたのです。――それが、私たちの差し出せる情報かと存じます」


「入国を許可します。王が城にてお待ちです」


「ありがとうございます」


私たちは礼を述べ、城へと向かった。

だが、城に入るにも“知識”という対価が必要だった。


「対価をお支払いください」


そのたびに、私たちは橙の国の伝統や美味しい食事法など、さまざまな知識を差し出した。

玉座の間へ着く頃には、すでに日が暮れていた。


「やあ! カリン!」


玉座から飛び出してきた王が、勢いよくカリンに抱きつこうとした。

しかしカリンは動じもせず、軽やかにそれをかわした。


「ありゃ、また避けられちゃった」

「アルベルト様、お戯れもほどほどになさってくださいませ」

「久しぶりに会えたというのに……。クロードはどうした?」

「そのお話は後ほどにいたしましょう。今回は私ではなく、こちらのお方のご用件ですので」


カリンは一歩下がり、お嬢様の背後へ控えた。


「はじめまして、古き真の王よ」

「はじめまして、青の王よ」


クロードによく似たその男は、黒髪を揺らしながら微笑む。


「突然ですが、虹の同盟を結びたく存じます」

「対価は高くつくぞ?」


お嬢様が合図を送ると、私たちは亜空間からドラゴンが所有していた大量の本を取り出した。


「うっひょ〜!」


舞い上がる青の王を、お嬢様が穏やかに言葉で制す。


「ご検討いただける、ということでよろしいですね?」

「うん!」


本当に、彼はクロードによく似ていいます。

同じ立場の者であるにもかかわらず、緊張など微塵も感じさせない…どこまでも自然体で、礼儀に縛られない不思議なお方です。


パラパラと紙をめくる音が止まる。


「いいよ、同盟を結ぼう。――同盟を結ぶだけでは足りないほど、貴重な情報だったからね」

「ありがとうございます」

「うん! そうだ、お茶を用意させるから、そこで待っていてね」


そう言うが早いか、私たちは半ば強引に客室へと案内された。

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