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「カリン、立ちなさい」
お嬢様は、ほかにも厳しい声をかけた。
てっきり慰める声をかけるのかと思ったのに。
確かに今のカリンに必要なのは、奮い立たせてくれる声だ。
「前を向いて、“今”自分が何をすべきか考えなさい。あなたはそれができるでしょう? 私のカリンなら出来ます」
お嬢様の金髪は、血に濡れてもなお輝いていた。
カリンは涙を拭い、立ち上がった。
「カリスタ様。犯人を捕まえました」
黒ずくめの男が藻掻いていた。
この魔力……
「この人、ルベリアで私たちに盗聴魔法を仕掛けた者です」
「本当なの?」
「間違いありません。まさか赤の国から付いてくるとは思っても見ませんでしたけど……」
「あの国にアルスの息がかかったものがいるのね。後で連絡をしておきましょう。お前たち頼んだよ」
「かしこまりました」
「ギル、その者は情報を絞り出し次第、始末して構わないわ」
レオンが口を開いた。
「クロードを運ばせてくれねえか?」
「…いいですよ」
レオンが壊れ物に触るように、クロードを抱き上げ、鉱山の外へと運んだ。
私たちは分身し、一人を彼らに付き添わせた。
「…殿下、ありがとうございます」
お礼を忘れずに言うカリンに、レオンは苦笑した。
「自分の片割れが死んだんだ、泣いてもいいんだよ」
「カリスタ様が“今は泣くな”と」
「もういいんだ。クロードを殺したやつは捕らえた」
カリンは原っぱで泣き崩れた。
「私はこれからどうやって生きていけばいいんでしょうか? あの子は私の生きがいで、生きていて良いって信じさせてくれる唯一で……お母さんもお父さんも私を信じてあの子を任せてくれたのに、合わせる顔がありません…私が守るって言ったのに守れなかった。助け合おうねって、一緒に幸せになろうねって…もうあの子を亡くした私に価値なんか無いじゃない…」
「カリン。自分の価値は結局は自分で決めるしかないんだ。他人からの印象なんて、言葉一つで変わる。自分を知っているのは自分だけなんだ。自分を正しく評価できるのは、自分だけなんだ」
レオンは片手でクロードを持ち、片手でカリンの背中をさすり続けた。
そのまま、尋問を終えたギルとお嬢様、そして私たちが戻ってくるまで続いた。
私たちは分身をしまい、一つに戻った。
「両国に報せを飛ばしたので、同盟の手続きや報酬の受取は速やかに行われるはず。カリン、クロードはどうしますか?」
「私たちは藍色の国に行くんですよね?」
「ええ」
「ではそこに埋葬したいです。せめて故郷に帰してあげたい」
カリンはクロードを凍らせ、物となってしまったクロードを空間収納に入れた。
黄色の国の城門をくぐると、使者が待っていた。
私たちは城に泊まり、明日、謁見を行うことになった。
長く悲しい一日が、ようやく終わりを迎えたのだ。




