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朽ちぬ女王  作者: 水無適
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「…誰?」

『はじめまして』

「…誰なの?」

『私の名前は_____です』



「だいぶ動くようになったわ」


お嬢様の体も回復し、次の目標——ドラゴンの住む山へ向かうことになった。

約束通り、橙の国から旅のお供が派遣されてきた。…しかし、なぜこの男を?


「カリスタ様、この国で一番強いのは俺だ。俺でいいなら連れて行け」

「頼りにしていますよ」


握手を交わし、すっかり仲直りした橙の王太子が、旅の仲間に加わった。


「王太子殿下、蛇が出ますので注意してください」

「カリンか。俺のことはレオンと呼んでくれ」

「いえ、不敬になりますのでどうかご容赦ください」


カリンは頑なに名前を呼ばず、自分との距離を示していた。


「カリスタ様、大丈夫ですか?」

「ええ、大丈夫よ」


寝込んだ影響で体力が落ちたお嬢様は、少し息切れしていた。


「お嬢様、私たちが運びましょうか?」

「…じゃあ、お願いしようかしら」


私はお嬢様を抱え、先へ進む。


「もう少しですね。あの山です」


カリンが指差した先には、頂が鋭く尖った山がそびえていた。

突如、地響きが走る。


「うわっ!」

「地震?」

「いや、ドラゴンの咆哮だ」

「腕が鳴るな」


皆、戦意をみなぎらせていた。


「その前に、国へ挨拶してからね」

「はーい」


私たちは黄色の国と緑の国に立ち寄った。


「橙の国からお話は伺っております。こちらを…」


黄色の国は鍛え抜かれた武器を、緑の国は一人の案内係を差し出した。

名はトーマス。虚ろな目で、淡々と指示を出す。

国に命じられた仕事を「死ねと言われたのも同然」と受け取るのも無理はない。


「ここを右に曲がります」


カリンが静かに囁く。

「…カリスタ様、居ます」


しかし案内人は間抜けだった。

「居るって、ドラゴンですか?」

「ばかっ、そんな大声を…!」


咆哮が響き、ドラゴンが目を覚ました。

頼りない人材だが、仕方ない。


「ここで迎え撃つしかない」


レオンが袖を捲り、戦闘態勢に入る。


「お前たち、私を下ろしていいぞ」

「わかりました」


私たちはお嬢様を背から下ろした。


「では、この者と共にいる。あとは頼んだぞ」

「お任せください」


久々のドラゴン戦だ。腕が鳴る!



「私は悪くない、悪くない、悪くない…!」


男が震える。カリスタはため息をつきながら声をかける。


「ねえ、あなた」

「はい?」

「トーマスと言ったかしら?どうしてここに?」

「国に見捨てられたんです。ドラゴン退治なんて、ほんとにできるんですか…?」


(なんて無礼な…)

カリスタは言葉を心に留めた。いや、留めようとした。


「あなた、何様なの?」


留められなかった。


「先程からごちゃごちゃ五月蝿いのよ。男なら覚悟を決めて、国の命に誇りを持って立ち向かいなさい!」

「は、はい!」


トーマスは一喝され、背筋を伸ばす。

顔を上げ、戦いの行く末を見据える。


「それでいいのよ」


そこに、へこたれた小僧はいなかった。

今、目の前にはしっかり今を見据える男が立っていた。

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