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朽ちぬ女王  作者: 水無適
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「ごめん。カリスタ様を護る役目だったのに、俺が先に倒れちゃって」


クロードは意識を失ったお嬢様の傍らに座り、静かに呟いた。

ギルは少し離れたところで、その姿を黙って見守っている。


「そうやって寄り添うのも大事だけど、」

カリンは優しく、しかし少し厳しい声で言った。

「目が覚めたとき、すぐ動けるように準備を整えるのも“護る”うちよ」


「姉さん……そうするよ。少しでも役に立ちたいし」


クロードは名残惜しそうにお嬢様を一瞥し、ゆっくりと立ち上がった。

その背には、かすかな決意が灯っていた。



一週間が経つころには、お嬢様の体は再び動かせるようになっていた。


「では、包帯を外しますね」


侍女の手が慎重に包帯をほどいていく。

露わになった皮膚は、まるでひび割れた陶器のように痛々しい。


「……お嬢様」


声が震える。


「……まあ、助かっただけマシね」


お嬢様は、思いのほか平然としていた。

その冷静さにこそ、彼女の強さが滲んでいる。


扉がノックされた。


「失礼します。カリスタ様、謝罪に参りました」


「どうぞ」


入ってきたのは女王と、橙色の髪をした大柄な男――この国の王太子だった。

男は深く頭を下げ、搾り出すように言った。


「本当に、申し訳ありませんでした」


「……それで?」


「お詫びに、どんなことでも協力いたします。同盟を結び、これからは人の派遣も惜しみません」


お嬢様はわずかに目を細め、静かに頷いた。


「受け入れます」


二人は条件と出発の日時を決め、礼をして去っていった。



「お嬢様……本当に、よかったのですか?」


「ええ。かなりの好条件じゃない?」


「もともと同盟を結ぶつもりだったのでしょう。それでも詫びとしては足りない気がしますが」


「ちゃんと聞いてた? あの人、“これからは人の派遣を惜しみなくする”って言ったのよ」


「……!」


「そう。私が玉座を取り戻したあと、復興には人手がいる。その時に協力してくれる――それだけで十分」


「……お嬢様が納得されているなら、何も申しません。ただ……ご自身を、もう少し大切に」


「……考えておくわ」


はぐらかされた。

この方は、いつもそう。

“契約者だから心配している”とでも思っているのだろう。

けれど私たちにとって、それは違う――。


「次からは必ずお守りします。二度と、同じことは起こしません」


ギルが真っ直ぐに言い切った。お嬢様の目を、逸らさずに。


「……がんばって」


その言葉は、まるで他人事のように淡々としていた。

そして、お嬢様は静かに顔を背けた。

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