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朽ちぬ女王  作者: 水無適
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時々、夢を見る。

なんの感情も宿っていない青の瞳が、まっすぐにこちらを見つめている。

彼は倒れた私の上に跨がり、細い指で首を締める。


「だって、生きたくないんでしょ?」


その言葉を最後に、いつも夢は途切れる。

喉に残る冷たい感触を払いながら、息を吐いた。


「……まだ夜か」


紅い瞳は月を見つめる。布団を被り、暗闇に身を沈めた。



「カリスタ、旅にはこの者たちを連れていくといい」


オズワルドの声に促され、二人の男女が跪いた。

お嬢様と同年代ほどの若者たち。


「初めまして、陛下。私はカリンと申します」


短い黒髪に紫の瞳。静かな湖のような印象を与える女性だ。


「先日はありがとうございました。私はクロードです」


聞き覚えのある声。

庭園で出会ったローブの男だった。

同じ紫の瞳でも、彼のそれは輝きを宿している。

好奇心と無鉄砲さがそのまま光になったようだった。


「よろしくね。旅の間は“カリスタ”と呼んでちょうだい。ギル、あなたもよ」


「わかりました!」


ギルの顔がぱっと明るくなる。

……いくらなんでも素直すぎでは?


「今日中に出発したいです」

「そう言うと思って準備は万端だ。気をつけてな」


オズワルドの笑顔に見送られようとした時、カトリーヌが一歩前に出た。


「カリスタ。私はフランソワのもとに戻って、王家とアルスの動きを探るつもりです」

「あっ……」


寂しげに目を伏せるお嬢様の頭を、カトリーヌはそっと撫でた。


「……強くなって帰ってきます」

「はい。また会いましょう」


自分とは違う道を進むカトリーヌの背中が見えなくなるまで、お嬢様は立ち尽くしていた。そして、オズワルドに何かを耳打ちしたあと旅立ちを告げた。


「私たちも、行きましょうか」


彼女の瞳は、エメラルドのようにまっすぐ前を見据えていた。



「二人は双子なんですね」

「はい。先日は弟がご迷惑をおかけしたそうで、申し訳ありません」

「いえ、楽しい時間を過ごせましたから」

「寛容なお言葉、感謝します」


カリンは礼儀正しく、言葉にも無駄がない。


「カリスタ様って、魔法効かないんすよね?」

「ええ」

「うーん……あっ、ちょっと失礼しますね」


クロードが指を弾く。

瞬間、お嬢様の髪と瞳の色が変わった。

光を受けて揺れる金髪は栗色に、エメラルドの瞳は灰色にくすむ。


「お、やっぱりこれなら大丈夫っすね」

「……お嬢様の周囲に魔力の膜を張ったのですね」

「お、あんたはわかるんだ!光の反射を少し変えてるだけっす」

「おかげで問題が解決しました。ありがとう、クロード」


クロードは人懐っこく、姉とは正反対の性格だ。

その明るさが、どこか場の緊張をほぐしていく。


新たな仲間とともに、お嬢様は橙の国へと向かった。

南から吹く風が、出立の合図のように背を押した。

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