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朽ちぬ女王  作者: 水無適
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「時間もないですし、すぐにでも橙の国へ向かいたいです」

「カリスタ、旅に魔法使いは何人必要だ?」

「うーん……強い方が二人いれば十分かと」

「わかった、選んでおく。数日待ってな」

「感謝します、オズワルド様」


客間を辞し、滞在する部屋へ案内される。

ようやく一人になれたからか、お嬢様は小声で私たちを呼んだ。


「お前たち」

「はい、お嬢様」

「冬だし、ネズミが出ないか心配だわ」

「……承知しました。見つけ次第、報告いたします」


お嬢様の部屋を見渡す。

守りの魔法、人避けの魔法……それに――盗聴魔法。

信頼していたのに、残念です。けれど、陛下の意志ではないはず。


「耳の大きなネズミが四匹います」

「あら、そう。駆除しておいてね」

「かしこまりました」


魔法陣を一つずつ破壊し、上から盗聴防止の結界を張る。

全く、どこの誰がこんな姑息な真似を――。


「散歩したいわ」

「わかりました。ギルを呼んで参ります」

「そうして」


扉が叩かれる。


「入って」

「失礼します」

「少し歩きたいの。ついて来てくれる?」

「もちろんです」


ギルは笑ってお嬢様のあとを追った。



王宮庭園の奥――冬でも青々と茂る温室。

珍しい花々が咲き誇る中、お嬢様は立ち止まった。


「この花、見たことない……」

「当たり前だ。新しく開発したものだからな」


思わぬ返事にお嬢様は目を見開いた。

いつの間にか背後に立っていたのは、深いフードを被った男。

低く澄んだ声が、空気を震わせる。


「この花の花弁一枚でかなりの魔力が回復する」

「画期的ですが、戦場に持っていくには……枯れませんか?」

「枯れないように調整している」

「繁殖は?」

「根で増える」

「それでは広まりにくいのでは?」

「貴女はどう考える?」

「実の中に多くの種子を仕込めば、一つで百に増えるのでは?」

「――気に入った!」


次の瞬間、男の気配は消えていた。

お嬢様が顔を上げると、そこには風だけが残っている。


「……なんだったのかしら」

「陛下、どこにいたんですか!?」

「ずっとここにいたわよ」

「……空間魔法、ですか」

「私に効かないはずじゃなかったの?」

「空間に作用する類なら、可能かと」

「使いようね。――お茶にしましょう」



「姉さん、さっき面白い人に会ったんだ」

「……そうなの」


紅茶を啜る女。

隣で興奮気味に語る男。

ルベリアの宮廷の片隅で、またひとつ新たな歯車が回り始めていた。

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