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秋も終わりかけ、凍てつく冬が迫っていた。吐く息は白く広がり、庭の噴水も薄氷に閉ざされている。未だ新兵器の報告はなく、停滞したままの情勢に、お嬢様の瞳は日に日に憂いを帯びていた。
「私、冬は嫌いだわ」
ぽつりと落とした声は、窓の冷気に溶けて消えそうだった。
「私たちは好きですよ。だって、お嬢様に出会えた季節ですから」
「……そう。でも、やっぱり好きになれないわ」
「それでもいいんです。好みは人によって異なりますし」
「そうね。お前たちと会ったのも冬。熊に襲われたのも、リサが死んだのも」
沈む言葉は、さらに瞳に影を落とす。枯れ木立を見つめるお嬢様に、私たちは慰めの言葉を探したが、どれも口に出すことはできなかった。ただ、薪を焼べる火のはぜる音だけが部屋を満たしていた。
*
十二月の初め、まだ夜明け前。
轟音とともに、屋敷全体が大地ごと揺さぶられた。窓が震え、天井から塵が舞い落ちる。
「お嬢様!」
「ご無事ですか!」
私たちは駆け寄り、同時にギルが駆け込んできて剣を抜き、四方を睨む。
直後、通信機から低く鋭い声が響いた。
「……王家の攻撃だ。総員、戦闘準備! ギルバード、お前は陛下を守れ」
「カトリーヌ様……?」
普段の柔らかさを欠いた、研ぎ澄まされた声。聞き慣れたはずの声が、まるで別人のように響いた。
「なぜ……王家が? 後ろ盾があるにしても……お父様の家門を敵に回すほどの者が……」
轟音が近づき、三階の窓のすぐ外を炎を引く戦闘機が駆け抜けた。
窓ガラスが震え、冷たい風が室内に吹き込む。
「……そういうこと」
お嬢様は悔しげに髪をかき乱し、唇を噛む。
「地下へ。今すぐ避難するわよ」
私たちはお嬢様を囲むようにしてシェルターへ向かった。
そこで待っていたカトリーヌは険しい顔で言った。
「報告があった。……アルスが王家についた」
「やはり……厄介な相手が敵に回りましたね」
カトリーヌは黙ってうなずいた。
炎と轟音の中で、避けがたい未来の影が私たちを覆っていった。




