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爽やかな朝を迎えた。朝食を終えたあと、カトリーヌから部屋に呼ばれた。
「貴方の血魔法について、少し話しておきたいことがあります」
「血魔法?」
「ええ。読んで字のごとく、血を媒介にして継承されてきた魔法のことです」
「私にもあるのですね」
「ええ、人は必ず一つ持っています」
「一つ?」
「はい。血の強さによって優劣が決まります」
「私の場合は、王家の血でしょうか?」
「ご明答です。旧王家には魔法を無効化する力があります。ただし、他の血魔法とは違い、二十歳にならないと血が覚醒しません」
「無効化なんてあったら戦場がひっくり返るではないですか」
「それが故に旧王家は長い間帝国に君臨してきたのです。ただ、純粋な力には弱いのですけれど」
「そうなのですね…お父様の血魔法は?」
「私の血魔法は身体強化です。普通のものよりかなり強力なのです」
「へぇ…では、お強いのですね」
「まあ、それなりには戦えますよ」
「ギル、あなたのは?」
「私ですか…?」
「カリスタ、人に血魔法を聞くのは失礼に当たるので控えた方がいいですよ」
「そうなのですね。ギル、ごめんなさい」
「気にしないでください」
カトリーヌは私たちを見つめ、言った。
「ギル、席を外してくれるかな?」
「わかりました。失礼します」
ギルが退出したあと、カトリーヌは話を続ける。
「呪術に影響がないとは思わなかったのですが…」
「なんのことですか?」
「彼女たちのことです。どのような経緯で召喚に至ったのか、教えてくれませんか?」
お嬢様は少し俯き、やがて語り始める。
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12歳のときだった。その日は雪が降っていた。お義母さまを怒らせてしまい、物置以下の部屋にすら入れてもらえなかった。屋敷の裏は山で、冬眠していない熊が下りてきて襲ってきた。必死に逃げたが、土地勘がなく、行き止まりに追い込まれる。そこにあった人の死体に躓いて転んだ拍子に、その人が持っていた呪術の本が出てきた。わらにも縋る思いで、適当に開いたページにあった召喚陣を血で描いた。
「そうして出てきたのが、あの子たちです」
淡々と話していたが、手は震えていた。
「話してくれてありがとう」
「禁忌を破った私を殺しますか?」
「いや、そんなことはしない」
カトリーヌはお嬢様の頭をそっと撫でた。お嬢様は驚きと喜びで泣いていた。
「…あれ?なんで泣いているのでしょうか?」
強がりの奥に隠れた言葉に気づいたカトリーヌはそのまま、お嬢様が泣き止むのを待っていた。部屋には静かで温かい空気が流れていた。




