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街の探索を終える頃には、お嬢様はすっかり体力を使い果たし、ギルバードの腕の中で眠ってしまった。
「すっかり仲良くなったんですね」
「ええ。ほんの少しでも心を開いてくれたのが嬉しい」
寝顔を見下ろすギルバードは柔らかく微笑んだ。
「仕事仲間だし、ギルと呼んでくれ」
「わかりました、ギル」
どうやら彼は私たちとも親しくなる気があるらしい。
「ところで、カトリーヌ様から私たちについては?」
「カリスタ様の幼少期から仕える侍女たちだと」
「なるほど。……では、これからもお嬢様を頼みます」
「はい!」
頼られたことがよほど嬉しいのか、ギルは破顔した。カトリーヌが私たちの正体を伏せていることも確認でき、少し安心する。
それにしても……お嬢様の寝顔、可愛すぎです!!!!
寝息が天使のささやきにしか聞こえません!!!
*
翌朝。
「お嬢様、どうして籠っているのですか?」
閉じた扉をすり抜け部屋へ入ると、そっぽを向いたお嬢様が小声で言った。
「……一人にして」
「何かありましたか?」
「……人前で寝るなんて恥ずかしいわ。もう十六なのに」
思わず顔を見合わせて笑ってしまった。なるほど、それが理由ですか。
「お嬢様、部屋から出ましょう。ギルも心配していますよ」
「ギル?」
「昨日、ギルバードご本人がそう呼べと」
「……私は言われてないのに」
ふてくされた!?
外へ出る気になったのか、着替えを催促された。
食卓に現れたお嬢様は、頬を膨らませながら挨拶する。
「おはよう、ギルバード」
「……お嬢様?」
「何?」
「いえ、なんでもありません」
圧に負けたギルが黙り込む。……この状況、最高に面白いですね。
しばらくして、ギルが小声で私たちに尋ねてきた。
「お嬢様は、なぜお怒りなのですか?」
待ってました!とばかりに笑いをこらえる。
「怒ってはいません。拗ねているのです」
「……拗ねて?」
「昨日、私たちには“ギルと呼べ”と許可しましたよね?」
「ええ」
「お嬢様には?」
「……! そういうことですか!」
「お食事が終わったら、そのお話をなさるとよろしいでしょう」
「ありがとうございます!」
「では、邪魔にならないように私たちは席を外しますね」
まっすぐで素直な騎士だ。腹の探り合いばかりの生活に慣れていた私たちにとって、妙に眩しい。悪くありません。
「これからも、こんな明るい日々が続くといいですね」
そう呟きながら、庭に忍び込んでいた暗殺者を静かに始末した。
「今日はいい天気ですね」




