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「どうして、どうしてよ……!」
お嬢様の声が震える。裏切りと死は常に隣り合わせだ。王となる者にとって、近しい者の死であっても心を大きく揺さぶられてはならない。判断を鈍らせる原因になるのだから。
「カリスタ・ユニカ・オリュンテア様。あなたはすでに一国の主です。その自覚を忘れてはいけません。私たちとの契約も、もう忘れたのですか?」
初めて得た家族以外の親しい者の裏切り、そして死。それに心を乱されるのは自然だ。しかし、それで判断が鈍ってはいけない。やり切ると決めたのは、他でもないお嬢様自身なのだから。
強く唇を噛み、深く呼吸を整す。涙を拭い、落ち着きを取り戻す。
「…片付けをしましょう」
そう告げると、お嬢様は私たちと共に瓦礫の山へ戻った。ひとつひとつの瓦礫をどかしていくと、リサの姿が見えた。そっと目を閉じさせ、手を合わせる。来世は、どうか幸せでありますように。もう私たちには訪れることのない未来だ。瓦礫の隙間に、新しい風が吹いていた。
*
「まさか、あそこまで腕の立つ人たちがいるとは…」
「人ではない」
「いいえ、人だ。根本はそこにある」
「フロリス、君は甘い」
「私はあまり人を殺したくない」
銀髪の少年フロリスが、困ったように笑った。
一方、黒髪の少年ネレウスは終始冷静で表情を変えない。
「さっさと報告に行こう」
ーー
「逃げられました」
ゴッという鈍い音と共に、フロリスの腹に一撃が入る。
「っ」短い悲鳴が漏れた。
ネレウスはその様子をじっと見つめている。
「罰として、今後は積極的に最前線に立つことだ」
退出後、話を盗み聞きしていた人々の間で、憐れみと陰口が交わされる。
「まだ幼いのに…」
「でも強いんだ。毎回無事に帰ってくるから大丈夫だろう」
二人はその言葉を聞き流し、静かに自室へ戻った。
救急箱を取り出し、手当を始める。
「君は結局優しいね」
「あんなやつ、消せばいいのに」
「そう簡単にはいかないよ。私たちのような子供を雇ってくれる組織なんて、まともなところはないんだ」
「……まあ、僕は君に従うよ」
幼い身体に残った無数の痣と切り傷。どれだけの戦場を経験してきたのだろう。
フロリスは結んでいた髪をほどき、汚れた髪を丁寧に整える。
「お姫様から発せられた、強すぎる殺気も気になる……気になることだらけだ」
ニカッと笑うフロリスに、ネレウスはため息をつく。
「もう寝るよ」
二人は互いに背中を向け、眠りについた。




