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『リュック 沈黙の罪』  作者: 泉水遊馬
第一部:リュックの叫び
2/10

第2章:青あざ


七月、昭和区の夏は湿る。コーポ昭和の六畳で、綾は携帯を握る。Tシャツに汗。鏡は見ない。柴田彰の言葉がコンプレックスを覆う。


「今夜? 来ていいよ。勇気は寝る」


声は軽い。彰が笑う。


「マジ? すぐ行く。ビール持ってくか?」


「うん、いいね。待ってる」


綾は微笑む。彰の笑いに冷たさが混じる。


勇気はリュックを抱え、星を描く。ノートに「ママの声、きらい」。


「勇気、寝なさい。友達来るよ」


声は鋭い。勇気は布団に潜る。


「……うん、ママ」


扇風機がカーテンを揺らす。


夜、彰が来る。


「よお、綾。暑えな」


ビール片手にソファ。勇気を一瞥。


「ガキ、寝た?」


綾はビールを受け取り、笑う。


「寝るよ。勇気、静かだよ」


勇気は布団で目を閉じる。彰の声が低い。


「静かでいいな。騒ぐと面倒くせえ」


綾は頷く。


翌朝、勇気の腕に青あざ。昨夜、綾がトイレの隙、彰は勇気を引き寄せた。


「お前、ママを困らせんなよ」


低い声で、腕を抓む。勇気は震える。


「……ごめんなさい」


彰は笑い、ビールを飲む。綾が戻る。


「勇気、腕どうした? 痛いの?」


勇気はうつむく。


「転んだ……保育園で」


綾は眉を寄せ、彰の笑顔を見る。


「そう? 気をつけなさい」


黙る。まさか? コンプレックスが目を曇らす。


ーーーーーーーーーーーー



真琴は児相メモを広げる。佐藤が近づく。


「児相、進んだか?」


「四歳の男の子。調査中。一人で百件以上です」


佐藤は眉を上げる。


「保育園も行け。様子が分かるぞ」


「分かりました」


真琴は「保育園」と書く。


昭和保育園。真琴は名刺を差し出す。


「東海日報の坂井です。気になる子は?」


園長、六十代女性はため息。


「森山勇気君? 静かで大人しい子です。転園予定。親が忙しいようで。」


「傷や青あざは?」


「子供はよく転びますよ。私たちも忙しくて転んだぐらいでいちいち見られないんですよ。」


真琴はメモを取る。


「ありがとうございます」


違和感を覚える。


ーーーーーーーーーーーー

夜、綾と彰はビール。勇気は布団でリュックを抱える。


「勇気、生意気じゃね? 教えてやろうか?」


彰が笑う。綾は笑う。


「やめて、子供よ」


声は軽いが、目は曇る。


「子供でも、ママを困らせたらダメだろ?」


彰の声に冷たさ。勇気は震える。


「勇気、寝なさい!」


綾の声。青あざは、転んだだけ。

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