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闘病記

作者: 山谷麻也

 ◆鬼のかく乱

 体がだるくて(せき)が出た。晩酌も進まない。妻のたっての要請により、早々と床に就いた。

 翌朝、少しだるい。妻が体温計を持って、二階に上がってきた。三八度℃台だった。

「病院行って、インフルエンザの検査して、クスリもらってきたら」

 という。聞く耳をもたないので、妻はさっさと勤めに行った。


 一日、録音図書などを聴きながら、ゴロゴロと過ごした。

 隔離状態である。一階のトイレは使用禁止。食事は娘が運んでくれる。

 次の朝はさらに楽になっていた。例によって、妻が検温にくる。

 どういうことか、熱が三九・七度℃あった。

「今日あたり、患者さんの予約を入れようか」

 という目算は見事に外れてしまった。


 都合、四日、仕事を休んだ。こんなことは初めてである。どうも回復力が落ちているようだ。もう若くはない。 


 ◆熱はむやみに下げるな

 熱や咳には気長に付き合うことにしている。どれも免疫反応だからである。

 咳は肺・気管支に溜まった老廃物や濁気を外に出そうとするもの。封じ込めてはいけない。

 熱はこの場合、免疫系が体温を上げ、体内に侵入した外敵と戦ってくれている(あかし)である。解熱剤で下げるのは、前線で戦う勇敢な戦士たちを背後から撃つのと同じ。利敵行為に他ならない。


 昔、よく耳にした養生法がある。

「子供の熱は下げるな」

 というものだ。

 子供は免疫力が弱いので、外邪が侵入しやすい。このため、すぐ熱を出す。よほどのことがない限り、この熱を下げてはいけないことを、先人は知っていたのだ。


 ◆痛いものは痛い

 偉そうなことを言っても、やはり生身(なまみ)の体である。私は多くの男性諸氏の例に漏れず、痛みには弱い。


 昨年、左足首が痛くなった。我慢していると、トイレに行くのも、ままならなくなってきた。そして、ついには、じっとしていても悲鳴をあげるほどになった。


 恥ずかしながら、救急車を呼んでもらった。

 幸か不幸か、近くの病院に運ばれ、血圧や脈拍など簡単なバイタルチェックの後、血液が採られた。結果が分かるのは二日後。取り敢えず、痛み止めが出され、家に帰された。

 行きは救急車、帰りは車椅子だった。過疎地とはいえ、何人かの知り合いに、姿を見られてしまった。復路のなんと遠かったことか。


 さすがに妻は現役看護師である。ペットボトルで簡易尿瓶(しびん)を作ってくれた。薬を飲んで寝ると、翌朝、なんとか歩いてトイレに行けるようになっていた。


 ◆体は訴える

 痛みも免疫が起こす反応のひとつである。多くの場合、発赤・腫脹・発熱を伴う。

 懸命に敵と戦ってくれている状態なので、なるべくなら、クスリで免疫の足を引っ張りたくない。本当はじっと耐えたかったが、用足しにも行けない状態では一一九番しかない。


 それにしても、体内に何が起きていたというのか。体をいたわり、その呼びかけに耳を傾けることの大切さを、痛感した。

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