デビュタント
「飾りつけもシンプルでいいわ」
「でも お嬢様 デビュタントですから もっと華やかにされたほうが」
「いいの! いいのよ このままで お願い」
リサを困らせたくないけれど 譲れなかった
「では これだけは付けてくださいませ」
と取り出したのはお母様が大事にしていた淡いブルーのサファイアがちりばめられたネックレスだ
流石にこれは断れない
「わかったわ 」
鏡を見ると まるでお母様が立っているかのよう
「お嬢様すっかり大人になられて マリエル様にそっくりでございます。」
リサが涙ぐんでいる
私も涙が出そうだったけれどぐっと堪えた
階段をおりると3人揃っていた
ミシェルは華やかなピンクのドレス ピンクサファイアのネックレスとイヤリング 周りの注目を浴るだろう
私はシンプルすぎるドレスに髪型も下ろしたまま
3人は降りてくる私を見て呆然としていた
「お待たせしました」
お義母様は
「と、とても綺麗よ ねえ 貴方」
お父様は暫く黙っていたが
「あ、ああ では 行こうか」
会場に着くと大勢の人達が来ていた
「さあ並ぼうか」
お義母様は離れて3人で入場の入り口へ向かった
順番に名前が呼ばれ 次は私達の番だ
お父様は真ん中に立ち両脇にミシェルとシェリルが立った。
「さあ お手をどうぞ」
ミシェルはお父様の腕に手を回しシェリルはそっと手を添えた
名前が呼ばれ扉が開いたと同時に私はスッと離れた
2人を前に出し 私は一歩後を歩いた
周りはざわついた お父様は後ろをふりむいたが前に進むしかなく 私は1人まっすぐ前を見て歩いた。
その後 国王の前で挨拶をして
ダンスの時間になった
お父様にダンスを声をかけられたが、ミシェルとどうぞと譲り私は2人のダンスを見ていた すると背後から
「デビュタント おめでとう」
その声に振り向くと 見覚えのある人が
「アントニー叔父様!」
私は思わず抱きついた
「久しぶりだね シェリル 姉上の葬式以来か」
「嬉しい 叔父様に会えて」
「よく顔を見せてくれ 美しいレディに成長したね」
「叔父様はどうしてここに?エリオットも来てるの?」
「やぁ シェリル 久しぶり!」
「エリオット!」
従兄弟のエリオットも5歳の時以来10年ぶりだ。
「エリオット 背が伸びたわね」
「かなりね シェリルもう〜ん 」
「なっなに? おかしいかしら?」
「綺麗になった!」
「もう 相変わらず 意地悪ね!」
「アハハ」
久しぶりに笑ったら 気持ちが楽になった
「シェリルも今年学園に入学するだろ?僕も行くんだよ」
「嬉しいわ 一緒に学園に行けるなんて」
そこへ楽しい時間は終わりを告げる
「やあ アントニー 久しぶりだね」
「ロベルタ義兄さん お久しぶりです」
「エリオットも大きくなったな 私のこと 覚えていたかい?」
「お久しぶりです。叔父様もお変わりなく」
「ああ 紹介しよう 妻のクロエとミシェルだ」
アントニー叔父様は顔色が変わり
「シェリルの叔父にあたります アントニー バッカスと言います。隣は息子のエリオットです。」
エリオットは軽くお辞儀をして シェリルの方を見ると
「シェリル 一曲お相手願いますか?」
私は 一瞬驚いたが エリオットの出された手をとった
「こちらこそ お願いします」
ホールに出ると 音楽に合わせてステップを踏み出した
「エリオット 上手いのね」
「シェリルこそ 初めてにしては上手いよ」
「ありがとう 」
「あのさ 大丈夫かい?」
「何が?」
「いや あの新しい家族っていうか…」
「もしかして 全部見てた?」
どうやら 入場から全部見られてたらしい
「いじめられてるのかい?」
「それは ないわ 2人とも優しいわよ そういえばミシェルも同じ年だから 仲良くしてあげて」
「そうかい? 困ったことがあればいつでも相談にのるから3年は確実にすぐに相手できるぞ」
「もう〜エリオットったら」
お互い顔を見合わせて笑いあった。
曲が変わりそこへアントニー叔父様がやってきて
「次は 私のお相手願おう」
私は叔父様の手をとった
「叔母様は お元気でいらっしゃいますか?」
「ああ 元気にしてるよ 娘のカトリーヌがまだ幼いものだから領地でお留守番だよ」
「まあ エリオットに妹が」
叔父様の館は辺境にあり、山合に緑が広がっていて
エリオットとよく走り回った
とても素敵な場所
そしてお母様の実家でもある
「それより シェリル 大丈夫かい?」
「エリオットにも聞かれました同じこと」
「そうかい もし シェリルが嫌な目に遭っているのならいつでも私のところに来るといい、すぐにでも迎えに行くよ」
「叔父様 ありがとうございます。でも今年から学園もあるしエリオットもいてくれるから大丈夫です。」
叔父様は私の事を心配してくれている
お母様と同じ面影で何故か甘えてしまいそうになる
「叔父様 私……」
音楽が変わった
そこへ私の手をとり
「シェリル パパと踊ってくれるかい?」