16-終:地球に帰還してみた! チャンネル登録といいね、SNSのフォローもよろしくお願いします!
――翌朝
「大義でした。
人の子、ゾンビの子、エルフの子、ドワーフの子、そして、天使の子よ。
天照大神の名の下に、なんでも願いを聞き入れましょう」
天照大神の前に跪く一同。
なんでも願いを叶える。
ユウキたちの願いは決まっているとして、最初に頭を上げたのはプリングだった。
「ならばエルフを代表し、天照大神にかしこみかしこみ申す所存。
エルフの願いは……悪魔王バエルの蘇生です!」
「はぁっ!? し、師匠!? 何言ってんですか!?
神様がなんでも言うこと聞くって言って言質取ったんですよ!」
「黙れバカ弟子が!
あれほどの血湧き肉躍る死狂いを邪魔された身にもなるがよい!
私達の戦いの決着はまだついておらぬのだ!」
「わかりました。
しかし、その願い、私の一存では聞き届けることができません。
この番号札を持って、9番の窓口に向かいなさい」
「ありがとうございます!
ではなキリヤ! さらに精進しろよ!」
「ちょ、ま! 師匠! ねぇ師匠!?
もしかして、私の願いの権利消えてませんか!?
師匠!? ししょぉぉぉぉおおおお!」
少しかわいそうな気もするが、小動物にはいい気味だ。
「続き、天照大神様。
ドワーフを代表し、かしこみかしこみ申します。
私共の里は、溶鉱炉が老朽化しております。
修理しつつ騙し騙し使用してきましたが、私が破壊してしまったこともあり今は多くの問題が発生しています。
どうか、ドワーフの里に、中心部の圧力2000億気圧、温度1600万度の溶鉱炉をお授けください」
「わかりました。
その願い、確かに聞き届けましょう。
後日作業員を向かわせますので、この番号札を持って0番の窓口に向かいなさい」
「ありがとうございます」
それ、溶鉱炉ではなく核融合炉だよな?
「ゾンビの子らよ、そなたらの願いは……」
「滅相もありません!
私どもと致しましては、天照大神様が毎日1日の半分をおやすみいただければ十分であります!
かしこみかしこみ申し上げます!」
「わかりました。
では、次の焼肉祭りは私自ら一肌脱ぎましょう。
楽しみにしていてください」
「ひぇっ……!」
うーん、完全な被害者枠。
「そして天使の子よ。
なんでも願いを叶えるとは申しましたが、あなたの願いはなんでも叶えるわけには参りません。
理由はわかりますね?」
「私が……堕天使だからですね」
「然り。
その魂、生まれながらにして穢れありとまでは申しませんが、神々の中でそのような考え方が当たり前に残っている今、私の一存でなんでも願いを聞くわけにもいかない事情を理解されたく思います」
「はい……重々理解しているつもりです」
「その上で、願いがあれば申しなさい」
天照大神といえども、この世界では主神ではない。
言ってしまえばただの公務員だ。
胸糞の悪い話ではあるが、事情は理解できる。
「本来は、堕天使が差別されることのない世界を願いたいと思っていました。
しかし、それが叶えられぬ願いであることは、重々理解しております。
その上で、天照大神様にかしこみかしこみ申し上げます。
私と、孤児院の子どもたちの姿を、天使の姿に変えていただきたく思います」
3人には、何も言えなかった。
見たわけではないが、それほどまでに堕天使への潜在的な差別感情は強いのだろう。
その生活から解放されたいという嘆きにも近い願いに、口を挟む権利などない。
「わかりました。
しかし、堕天使が願うにしてはまだ大きすぎる願いと知りなさい」
ダメなのか。
こんな些細な願いでも、ダメなのか。
「よって代償を求めます。
我に、130歳以下の堕天使の子の心臓を1つ捧げなさい」
「な……」
「人の子よ、何か?」
「い、いえ! なんでもありません!」
だが、心臓って……こんなの、こんなのインチキ霊媒師と同じじゃないか!
「恐れながら天照大神様。
我等堕天使の寿命、長くとも120までであることはご理解の上でございましょうか?」
「無論」
「では、その契約。
死の間際の履行でも許されますでしょうか」
「無論」
「わかりました。では、私。
ルチ・レモンの心臓を捧げます。
どうか子どもたちを、天使の姿に変えていただきたく思います」
「承知しました。
それで、あなたは?」
「天照大神様との契約の日まで、吟遊詩人として堕天使の差別を少しでも軽くするため、尽力していきたく思います」
「ルチちゃん……!」
そうか、天照大神様は最初からそれを考えて……そうだよな。
差別を生むのは神じゃない。
世界に生きるすべての人間だ。
それを神の力で解決なんて、しちゃいけないんだ。
それがどんなに辛くても、どんなにわずかな効果でも、人の力で変えていかなければならない。
きっとルチちゃんには、その力が、あるんだろう。
「わかりました。
では、この番号札をもって3番の窓口まで」
「ありがとうございま……あれ? 私、目が……見え……」
「はて。何のことやら。私は知りません。
あなたは元より目が見えた。そうですね?」
「は……はい! 申し訳ありませんでした!」
良かった、とは言えない。
だが今はせめて、良かったと言わせてほしい。
ありがとう、天照大神様。
「おそらくレーシック手術だな。
太陽光メスなら可能だ」
「俺の感動を返せ」
このクソ眼鏡め。
いっそ代わりに網膜を焼いてもらえばいい。
「では、お待たせしました、人の子らよ。
そなたらの願いは、先に聞き届けたものでかわりありませんね?」
「はい! 俺達の地球への帰還、よろしくお願いします!」
「わかりました。
では、この番号札をもって3番の惑星まで」
「ありがとうござ……」
「待ってください~。
もう1つ、お願いを聞いてくださいませんか~?」
「お、おい! サダコ姉! 何言い出すんだよ!?」
「まぁまぁ~」
「なるほどな……サダコ姉らしい」
「ふむ。
既にあなた達の願いは聞いたつもりですが、言うだけ言ってみなさい」
「では、失礼させていただいて~」
そしてサダコ姉は、今までで一番の笑顔で。
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異世界オカルトチャンネル! 完




