15-4:猫耳の似合う堕天使からこの世界の神話の聞き取りをしてみた!
「では霊媒について改めて説明してもらえるか?」
翌日。
神話伝承を研究したいという一同の願いにルチは快く了承し、こうして3人から取材を受ける形となっていた。
「すっげぇ! エルフの姉ちゃんすっげぇ!
なぁなぁ、もっかいやってくれもっかい!」
「ふっ、これは本来門外不出の技ですが、良いでしょう!
特別にもう1度だけお見せします!
エルフ一刀流、秘剣、燕返し!」
「かっけぇぇぇえええええ! もっかい! もっかい!」
「1度だけと言いました!」
「一生のお願い!」
「なら仕方ありません! エルフ一刀流、秘剣、燕返し!」
「すげぇぇぇぇええええ!
俺にも! 俺にも教えてくれ!」
「ふふっ、いいでしょう!
これよりここを私の道場とします!
さぁ、木刀を持って、私と同様に蜻蛉の構えからこの立木に打ち込んでください!
掛け声を出して!」
「エイ!」
「もっと大きな声で!」
「キエーッ!」
「もっと気狂いの猿の叫びのように!」
「キィエーイ!」
「もっと人間性を捧げて!」
「キィィィィエエエエイ!」
「はいそのまま20本!」
いつからここは動物園になった? ユウキはため息をつきつつ窓を閉めた。
「まず、霊媒には儀式が必要です。
トカゲやヘビの抜け殻、コカの葉などの一部のハーブ、女性の経血などを大釜で煮込む方法の他に、ぬいぐるみに塩と髪の毛と動物の骨を入れて隠れる方法などもあります。
100本のろうそくを用意し、怪談を語るたびに1本ろうそくを吹き消す百物語もその1つです」
降霊術の方法の説明をはじめるルチ。
猫耳はゆっくりふわふわとした動きを取っている。
真剣な表情で聞き取りにあたるヨッシーから離れ、サダコ姉が小声で囁く。
「真剣な表情だけど、目の焦点が少し上にあるのよね~」
「言ってやるな。猫耳萌えなんだ」
「まぁユウキ君もたまに耳元や正面から見えるうなじに焦点があってるけど~」
「言ってくれるな。髪フェチなんだ」
「もしかしてキリヤちゃんの魔法のウサ耳もずっとそういう目で見てたのかしら~?」
「もしもそうならキリヤも本望だろうさ。
帰りの座席が2つしかなかったら、あいつは座敷牢に捨てて帰ろう」
ヨッシーは振り返らず軽くため息をつき聞き取りを続ける。
「それで、儀式で降りてくる相手は選べるのか?」
「いえ、選べません。
稀に強い思念を持った生者が生霊として降りる場合もありますが、ほとんどのケースでは強い未練を持った死人が降ります。
儀式の場に他の人が居る場合、その個人に対して強い未練を持った人物、すなわち、祖先が降りる確率が高くなります。
時として人間以外の動物霊が降りるケースもありますが、この場合術者は自ら動物霊を祓い追い出します」
相変わらずその目はゆっくりと動く猫耳を注視していた。
少々露骨ではあるが、暗い部屋の中、目のほとんど見えていないルチでは違和感に気付くこともできない。
「神が降りることもあるのか?」
「ありますが、神はほぼ不老不死のため絶対数が少なく、私も神を下ろしたことはこれまでに2度しかありません」
猫耳がぴくりと一度だけ大きく動く。
「すまない、よく聞こえなかった。
もう一度、ゆっくり同じことを言ってもらえるか?」
「はい。神は、ほぼ不老不死のため」
「…………」
「絶対数が、少なく」
「…………」
「私も、神を下ろしたことは、これまでに」
「…………」
「2度しか」
「……!」
「ありません」
「わかった。ありがとう。
では悪魔が降りることはあるのか?」
その聞き取りに思わずユウキも唸る。
俺もあの猫耳、欲しい。
「はい。悪魔が語るのは神への恨み言ばかりです。
忌み言葉が混ざることもあり、言葉がわからないこともあります。
私達は忌み言葉を発音する方法を学びますが、悪魔に体を貸した際にはその独自の呼吸法が維持できない場合もあります」
「なるほど。
それで君は冥界神やその妃の名前を怪談の中で発音できたのか。
良ければ後でその呼吸法も教えてくれ」
「わかりました」
こうしてその日の聞き取りは夕方まで続き。
「エルフ先生! ありがとうございました!」
「はい、ありがとうございました!
明日からは少し実践的な練習も取り入れていきましょう。
6人ずつ私を取り囲み、同時に斬りかかる多対1の練習をしてもらいますよ!」
「えー! そんなの、卑怯じゃないんですかエルフ先生!」
「騎士道における戦いは、主に勝利を捧げることに最も重きが置かれます。
そのためにはどんな卑怯な手段も当たり前、勝てばいいんですよ勝てば!
いいですか? 戦いは数です! 囲んでぼこす!
これがすべての基本ですよ!
はい、最後に先生の言葉を復唱!」
「勝てばいい! 戦いは数! 囲んでぼこす!」
そんなキリヤのバーサーカー道場の脇を、ハープを背負ったルチが横切る。
「あ、ルチお姉ちゃんお仕事いってらっしゃい!」
「ねーちゃん大丈夫か? 酒場まで手繋いでやろうか?」
「ありがとう。でも、大丈夫よ。
それと、異世界人のみなさんがご飯を作ってくれているから、おいしく食べてね」
「まじか! やったー!」
堕天使の子どもたちはまな板の上に召喚されていた悪魔の姿に恐れおののき、切ってもまだうぞうぞと蠢く邪悪な触手に嫌悪感を覚えていたが、最終的には全員でたこ焼きパーティを楽しみ、日中の疲れもあってか早めにベッドで寝息をたてるに至った。
「あっ……触手が……ダメです、そこは私の大切な……騎士の誇りが……くっ、殺せ!」
なんちゅう寝言だよ。
あんなにパクパクたこ焼き食べてたくせにこの小動物。
さておき。
「さて。聞き取りを整理しよう」
2人の前にメモを広げるユウキ。
「百物語でルチさんが語った51本の怪談神話はすべて彼女が霊媒により死者の口から蒐集したもの。
これはすべてサダコ姉とプロパガンダ・英雄譚・自然神話・分類不能で区分けした」
「ん? 待て。51本? その51本目はなんだ?」
「ステージで最初に歌った、宇宙創生の歌よ~」
「あぁ、あれか! って、あれも霊媒で蒐集したのか!?」
「しかもあれは、神を降ろして語られた神話だ」
「まじか! すげぇな!」
「あぁ。この流れで天使たちの信仰を紐解こうと思ったのだが……
その神話で状況が変わった」
「どういうことだ?」
「庁舎で天使が言ってたでしょ~? 宇宙を担当する神の座が空座、って~。
つまり、宇宙を担当する神自体は存在したのよ~。
その神様にお願いすれば、私達、元の地球に帰れるわ~」
「そういうことか!
で、でも、それを聞いた神の霊って、もう死んでるんだろ? なら……」
「いや……宇宙を創生した神は生きている。
その名は……」
すぅ、はぁ、と二度三度深呼吸をして。
「アマテラスノミカド。
彼女は今、どこかに隠れている。
天岩戸開く時、僕達は地球に帰還する」
次回、天使たちの信仰編完結! 異世界オカルトチャンネル最終話!
遥か12光年の宇宙の旅の終わりを見逃すな!




