13-2:雨乞いの考察をしつつこの世界の神の仕事を拝見してみた!
話が一段落し、一呼吸をついたタイミングでちょうどキリヤが戻って来る。
その頭の上には偽装用のうさみみがついておらず、こめかみからエルフ耳が姿を表している。
この神の国、イェール・カーンにおいてはエルフである身分を明かした方がいろいろと都合が良いらしい。
「みなさーん! お話聞いてくれるそうですー!
可能なら帰還の手続きもしてもらえるそうですよー!」
「まじか! やったぜ! まじで神様仏様だな!」
「神様なのはいいとして、仏様は違うんじゃないの~?
キリヤちゃん、神様のお名前なんて言うの~?」
「繝、繝上え繧ァですー」
「は?」
「繝、繝上え繧ァ様ですね」
「何言ってるのかわからん。
こんなこと今までに一度もなかったぞ」
「動画の字幕機能をONにしても文字化けする」
「忌み言葉、というやつかしら~」
・忌み言葉
口に出すことが禁じられている言葉こと。
主に神の名前や、死者の名前、呪いの言葉などが忌み言葉とされるケースが多い。
わかりやすく言えば「名前を読んではいけないあの人」
「というか私達、何のチートもないけど、言語理解だけはチートなのよ~」
「そういやエルフの里の古文書も何故か読めたもんな。
長様やプリング様は読めないって言ってたんだが、俺には世界中でわりと見かける日本語に見えた」
「その件に関して僕は解説を拒絶し見て見ぬふりをする。
チートとしか言えないからだ」
「まぁいいわ~。
で、その名前を呼べない神様はたった一人の全能神様なの~?」
「いえ、繝、繝上え繧ァ様は主神であり、他にも様々な神様がおられます。
繧シ繧ヲ繧ケ様、繧キ繝エ繧。様、繧ェ繝シ繝?ぅ繝ウ様、
繧繝輔Λ繝サ繝槭ぜ繝?繝シ様、それからえっと……」
「やめろやめろ! 耳がおかしくなるし、スマフォから動画を見るとバグる可能性もある」
「でも名前を呼べないのはちょっと困るから、役職で言ってもらえるかしら~」
「あ、はい! 主神様、雷の神様、破壊の神様、知恵の神様、正義の神様ですね」
「絶妙に特定できそうな感じね~。
もしかして、繝上え繧ァ様と、繧シ繧ヲ繧ケ様、繧キ繝エ繧。
様、繧ェ繝シ繝?ぅ繝ウ様、繧「繝輔Λ繝サ繝槭ぜ繝?繝シ様かしら~?」
「耳が! 耳がぁ!」
「あ、そうなるのね~。
まぁこの動画、日本以外からも見てくださってる方いるし、都合がいいかもしれないわ~。
詳細は内緒ね~」
「宗教的配慮助かる」
どこのVなら宗教配慮助かるとか言われんだ?
つーか以前言ってはいけない国(国ではない)の名前言って消えたVがいなかったか?
「ともあれ、神様達は基本的に困ってる人を助けてくれる仕事をされてますので!」
「でもお高いんでしょ~? もとい、対価は信仰かしら~?」
「いえ、善行です! ゾンビの里のこととドワーフの鉱山のこと話したらその場の端末で情報確認されて、すぐOKがでました!」
「エルフの里のことは話しても無意味か……つーか、参照できちゃうのな」
「これがほんとの閻魔帳ね~。
悪いことできないわ~」
まじこの世界で死ぬわけにはいかない。
「ありがたい限りだが、ここまでシステム化しているともはや神というよりも役所だな」
「イェール・カーンって名前から、これも名前は言わないけどシナイ半島の北のあたりかイタリア半島の真ん中編かと思っていたんだけど~、この感じだとメンフィスね~」
「どこそれ?」
「エジプト古王国時代の首都~。
今は何もないところだけど、三大ピラミッドで有名なギザから南へ20kmくらい~。
一応メンフィスとその墓地遺跡として世界遺産に登録されてるわ~」
「へぇ。オカルト好きとして一度は行ってみたいよな。
つーか、エジプト古王国時代ってそんな感じで神様がお役所仕事してんのな」
「王と神官たちが神様扱いなのよ~。
まだ研究中のところがほとんどなんだけどね~。
名古屋大学高等研究院准教授の河江先生のチャンネルが毎週土曜日19時に更新だから是非チェックしてみて~。
機会があればコラボもしたいわ~」
詳細は動画の概要欄から。
「なるほどな。
そう言われると正直立場上神を否定せざるをえない僕のスタンスでも問題なく接することができそうだ」
「ようは細分化されたお悩み相談担当みたいなものだしね~。
農耕神とか農林水産大臣みたいなものよ~」
「農林水産大臣に直接会いに行けるのもすげぇが、それで農業林業漁業の問題を解決してくれんのもすげぇよ」
「それで、僕達の場合誰が解決してくれるんだ?」
「異世界担当大臣~? それとも、宇宙政策担当大臣かな~」
「まぁその辺あわせて聞いてみようぜ」
ということでキリヤの後に続き一同は庁舎の中に入っていく。
作りこそファンタジーな神殿だが、そこに集まる人や会話の様子を見るに、現実の市役所の中といった方がしっくり来る。
「358番のカードをお持ちの方、窓口までどうぞ」
「まじ市役所」
「358番なんて数字、運が良くて最高ね~」
「タクシー数か?」
「カバラ数秘術~」
「わけわからんから解説字幕出さないでいいぞ」
・タクシー数
だが断る。1729のこと。
ドイツの天才数学者ラマヌジャンが、数学の話はまじで動画再生止める人多いんだからやめろ!
ということで、一同が窓口に進むと、そこでは天使が待っていた。
これまでの事情を話すと、天使は困った顔をしながら手元の機械を操作していく。
これが噂の閻魔帳か。随分ハイテクな閻魔帳もあったものだ。
「少々お待ち下さい」
そう言うと天使は窓口から離れ、いかにもエリートの先輩といったオーラの天使に取り次ぐ。
取り次がれた天使はその場でタブレットを操作し、軽く首を振った。
そして冒頭の。
「申し訳ありませんが、みなさんが地球に帰る方法はありません」
に、続くのだった。
「か、帰れないってどうして!? というかここはティーガーデンbなんだな!?」
「概ねそうです。
そして帰れない理由は、宇宙を担当する神の座が空座であるためです。
本当に申し訳ありません。
しかし皆様にはアップフィルドとアーティンでの善行が記録されておりますので、よろしければこの世界の住民票を所得されてはいかがでしょうか。
お望みなら6番、公共サービスと住宅補助に関しては3番、健康保険は4番、税務関係は1番の窓口へどうぞ」
そして一同は適当にパンフだけ受け取って庁舎を後にしたというわけだった。
「神様まじお役所仕事……」
「むしろらしくていいわ~。
私とか正直、いつ拉致監禁からの強制孕ませコンボを喰らうかと外の雨音にまで警戒してたもの~」
「自意識が高いのはよいことだな」
ともあれどうしたものかと一同が悩んでいると、突然周辺から黄色い叫び声が響いた。
「なんだなんだ?」
「農耕神様です! 農耕神様がお出になられるみたいですよ!」
「へー、繧ッ繝ュ繝弱せ様ね~」
「宗教的配慮助かる」
「くしゃみ助かるみたいに言いやがって!」
というか、耳に悪いしスマフォで見た時が心配なので、以後は【ピー】で表記する。
「やぁやぁ諸君! ありがとう!
これより農耕神であるこの僕が、日照りに悩む地域に雨を授けよう!
見学を希望される者は共に来るといい!」
農耕神を名乗る神は耽美系男子だった。
名前は言えないが姿は見えてOKと。
その背後では「農耕神一毛作!」「お米食べろ!」のうちわを振る天使の姿が。
アイドルか?
「ね、ね~、行ってみましょ~!」
「まぁ、そうだな。
行く宛もないし、実際気になるな」
「僕は立場上神は否定せざるをえないのだが……」
そう文句を言うヨッシーの手を引き、一同は神の後に続いて歩く。
「それじゃ、神様の力否定派のヨッシー、雨乞いって実際できるのか?」
「お、なんか当初のうちのチャンネルっぽくなってきたな」
「私は雨乞いなんてできないよ派かしら~」
「先にそっちから聞くかな。またどうして?」
「雨乞いの文化自体は世界各地にあるのよ~。
そのそれぞれの文化的背景を調べるのはとっても面白いわ~。
信仰は民俗学を語る上では欠かせないし、基本的に農耕民族である人間にとって雨が降るか否かは言葉通りの死活問題なのよね~。
それを認めた上で私が今回雨乞いに否定的なのは、多くの国々の雨乞いの儀式がかな~り血なまぐさいからよ~」
「うわっ、それはちょっと動画的に伏せてほしいな……」
「12歳以下の少女の心臓とか平然とお出しされるわ~」
「やめろっつってんだろ!」
「というわけで~。
祈るのは人として大切なことなんだけど、その儀式の対価があまりにもあんまりなもので、私としては効果を否定したい、というところね~。
まぁ、それだけ雨乞いという儀式を重要なものとして捉えてるってことはひとつ~」
「なるほどな」
これ以上追加情報を語らせるとまずい気がするのでヨッシーの話に移ろう。
「で、ヨッシーも雨乞い否定派?」
「いや、僕は雨乞い肯定派だ」
「お、意外。そのこころは?」
「まず、現代科学で雨乞いは可能だ。人工降雨だな。
気象制御技術の1つで、世界気象機関WMOが効果を認めている。
その方法は飛行機でヨウ化銀やドライアイスを散布するというもの。
実際に効果もある」
「まじか。すげぇな。
それって研究進めれば最近なにかと話題な水不足も解決するんじゃ?」
「そう単純にはいかない。
2018年のケースでイランが人工降雨に成功したんだが、これによりイラン国内で雨が降った結果、本来降るはずだったイスラエルにまで雲が流れた時にはもう雨が振らなかったんだ。
これをイスラエル側は『雨雲が盗まれた』と声明を出している」
「なるほどな。
何故ヨウ化銀やドライアイスで雨が降るのかいまいちわからなかったんだが、今のでピンと来たぜ。
そりゃ本当に雨乞いがしたいなら、飛行機から撒くのは水以外ありえないもんな」
「そういうことだ。
それと、飛行機を使わずにする、サダコ姉がイメージするような雨乞いの儀式だが、実は僕、雨乞いできるぞ」
「まじで!?」
「へ~、そこまで言うならやってみてもらいたいわ~」
「任せろ。
もとい、動画の前のみなさんもやってみよう。
字幕で用意するものを説明するぞ」
・用意するもの
スマートフォン
お住まいの国の地図
「スマフォ!? 異世界でもスマフォがあれば大丈夫とかいつの時代のなろう系!?」
「まぁまぁ。
ではスマフォを手にとって、日本の場合177……と、いいたいところだったんだが、どうやらこの電話番号、ネットの普及で現在使われていないみたいだな。
致し方ない。地図もしまってくれ。
代わりに気象庁のHPにアクセスし、気象衛星ひまわりによる日本周辺の気圧の図を確認してくれ」
「うん? ちょ、ちょっと待てよ! それって、ただの天気予報じゃね?」
「そうだが? だがほとんどの人は気圧の図なんて見ても雨がいつどこで降るかわからないだろう?
お前はわかるのか? 正確にわかるならお前は気象予報士になれる。
合格率はわずか4%だ」
「いやそうなんだろうが! ってことはまさか……」
「あぁ。雨が降りそうな場所に行って雨乞いのマネごとをすれば完了だ。
実際に、中世以後はこのやり方で何度も雨乞いを成功させた人物がいる」
「なるほど~。それは盲点だったわ~」
「なんだか疲れたな……みなさんは雨乞いはあると思いますか? 無いと思いますか? よければあなたの意見をコメントで聞かせてください!」
「討論してほしいオカルトネタもコメントで待ってるわ~」
と、動画が終わってしまいそうだがもう少し続き。
「あ! ついたみたいですよ! 農耕神様の雨乞いが始まります!」
「さて、どんなマジモノの神様の雨乞い。
なにがおきるやら」
ざわつく一同の前で農耕神が叫ぶ。
「出てこい! 邪悪な魔女にして悪魔ザリチュよ!
此度の干ばつが貴様のたくらみであることは判明しているぞ!」
「……は?」
予想外の展開に表情が凍りつく3人。
そして。
「バレてしまってはしょうがない……傲慢なる神【ピー】よ!
貴様の横暴もここまでだ!
【ピー】と【ピー】には世話になったが今回はそうはいかん!
【ピー】にも【ピー】の【ピー】が【ピー】だろうと伝えておけ!」
「うわぁぁぁぁああああ! 放送事故だぁ!」
しばらくお待ち下さい。




