表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界オカルトチャンネル! ~(怪談+科学+民俗学)×異世界 /(Q+S+F)I ⊢RICK~  作者: 猫長明
第3部醸造編、19章「山の怪異フルコース編」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

281/288

75-1:マタギの語る忌み数の正体を考察してみた!

 呑気に怪異の考察をしながら山道を歩いている最中。

 ふとユウキの足が止まる。


「どうした?」

「背中を引っ張られて……」

「振り返らない方がいいかもよ~?」


 と言いつつ自分はユウキの後ろを確認するサダコ姉だが。


「…………」


 真剣な表情をしたキリヤがユウキのリュックを掴んでいる。


「キリヤちゃん?」

「静かに」


 その様子にサダコ姉も冷静に周りを確認する。

 荒事担当要因としてのキリヤは戦えない一同にとっての生命線。

 こういう時は無条件に信頼する必要がある。


「ん……」


 ここでパラミも何かに気付き、タヌキ耳をぴこぴこと動き始める。


「来ます!」


 騎士の剣、菊一文字則宗を引き抜くキリヤ。

 がさりと草むらが揺れ、黒い巨体が現れる。


「熊か!」


 しかし流石はキリヤである。

 一同がその熊の姿に気付いた時には既に斬撃を受けて倒れたところである。


「やったのか……?」

「まだです!」


 倒れた熊を無視して反対側に跳躍するキリヤ。


「もう1匹いるのか!?」

「1匹じゃない。囲まれてる」


 ごくりと息を呑む3人。

 ひょっとしてこれはまずいのではないか?

 と、思ったのもつかの間。


「……うわ、幼女強い」

「本当に今更だが、キリヤさんのスペックが無茶苦茶すぎる」


 襲い来る群れをバッサバッサと斬り伏せ続ける2人。

 当の2人も最初こそ緊迫感のある表情で対応していたのだが。


「熊って食べると美味しい?」

「美味しいですよ! 内臓も回復薬になります!」


 呑気な会話をしながら無限に迫る熊に対処を続けている。


「また仲間を呼んだぞ!」


 一体どこから湧いてくるのか、それがまずファンタジーだ。


「まぁ仲間を呼ぶタイプの敵って、謎に無限湧きするしな」

「経験値稼ぎ放題です!」


 もうこいつは経験値を稼ぐ必要なんてないんじゃないかとも思うが、無限湧きするとわかるとついつい無限に倒し続けてしまうのがあるある。

 よくよく見るとキリヤもパラミもあえて最後の1匹を倒さず、仲間を呼ぶのを待ってから倒しているように見える。


「ある程度稼いだら先に進むぞー」

「はーい」


 安心しきった3人は熾烈な戦闘が続く中央で軽食を食べ始める始末。

 山登りで疲れが出始めていたところでもあったし、ちょうどいい休憩になっている。

 そんなこんなで30分ほど。


「そろそろ行くかー」

「キリヤさん、パラミさん。

 切り上げてくれ」

「わかりましたー」


 と、残った1匹が仲間を呼ぶのを待たずにトドメを刺そうとするのだが。


「待って! 今トドメを刺しちゃダメ!」


 サダコ姉が緊迫感のある表情で叫ぶ。


「わわっ!」


 斬るつもりで距離を詰めすぎてしまったキリヤ。

 振り下ろそうとした剣を強引に反らしたが、インレンジで無防備を晒せば手痛い反撃を受けて当然。


「まずっ……」


 巨木をなぎ倒すパワーの腕が振り下ろされるが。


「危ないよ」


 後ろからパラミに抱えられる形で回避。


「ありがとうございます!」


 ほっと胸を撫で下ろす。

 そこで改めて仲間を呼ばれるが。


「もういいわ! 倒しちゃって!」

「はい!」


 その場の2匹を倒し、ようやく一帯に静寂が訪れた。


「お前、何に気付いたんだ?

 今のはわりとまずかったように見えたが」

「ごめんなさい。もうワンテンポ早く気付くべきだったわ」

「何が問題だったんですか?」

「数ね。あそこで終えると36匹だったわ」


 スマフォの画面を見せてくるサダコ姉。

 どうやらカウンターアプリを起動し倒した熊の数を数えていたらしい。


「36? その数字は何かまずいの?」

「36がまずいのかどうかはわからないわ。

 けど、山において4と9と12は忌み数とされているの。

 36はこれらの数の合成数だからね。念の為よ」


4;忌み数


「忌み数か……」

「聞いたことがあるな。

 ぐまという習わしがあるらしい。

 熊狩りの時は、4匹ちょうどの熊を狩って終えることを嫌う。

 その場合1匹を逃がすか、5匹目を狩るまで山から降りないとか。

 9と12の方は、狩りの際に9人12人で行わないと聞いたな」


 日本において4と9は広く忌み数とされる場合が多い。

 これは死と苦をイメージさせるためと言われる。


「ただのゲン担ぎにも思うが」

「それでも、特定の数字が意味を持つことはカバラ数秘術でもやったでしょ~?

 そう信じられている以上警戒すべきだわ~」

「実際に四つ熊をやらかした狩人達が発狂したという怪談もある。

 信仰は蔑ろにするべきではないだろう」

「ふむ……」


 確かにそれはそのとおりだ。

 そもそも信仰とは、経験則のショートカット。

 よく言われるのが、イスラムにおける豚食の禁忌だ。

 豚肉が食中毒を誘発しやすい食べ物である。

 しかし、言うまでもなく豚肉を食べれば必ず食中毒になるわけでもないし、当時から豚肉が美味いことは誰もが知る話。

 ウィルスや細菌などという概念もない時代、人に豚肉を食べるべきではないという合理的な理由を説明することはできなかった。

 そこで、豚肉を信仰上の理由で禁忌としたのだ。

 これが信仰ショートカットだ。


 合理的に何故これらの忌み数がまずいのか、その理由はわからない。

 だが、今わからないというだけだ。

 豚食中毒の原因が目に見えないウィルスと細菌だったように、今は観測できない何かがその原因となっている可能性も考えられる。

 そういった事例があるからこそ、科学を信じようとも信仰を笑い飛ばすことはできないのだ。


「という話はわかっているのだが……

 何故かを考えず思考停止はできないな。

 サダコ姉、どう思う?」

「そうね~」


 しばし考えて。


「この忌み数はマタギの伝承なんだけど、マタギは山との調和を何よりも大事に考える人たちだったの~。

 世界全体の歴史を見ると、狩りや猟をする人間が獲物を取りすぎて資源枯渇に繋がるなんて日常茶飯事でしょ~?

 それが当たり前とされるからこそ西洋では最近、猟そのものを制限する風潮になっているんだけど、その点日本のマタギも漁師も異質なのよね~」

「捕鯨なんかがよく聞く話だな。

 あと、最近急に魚を食い始めた諸外国が無茶苦茶な数の魚を捕るみたいな話も聞いたことがある」

「漁獲制限というやつよね~。

 私は忌み数の正体は、これだと思うわ~」

「なるほどな……」


 確かに、至極納得できる話に聞こえる。


「制限を儲けずに狩りすぎた結果、種が絶滅したり生態系が崩壊したケースは多いわ~。

 モーリシャス島のドードーとかね~。

 これってある意味、神の祟りだと思うのよ~。

 そう考えたら、忌み数を無視することでの祟りって、ホントにあるのよね~」

「確かに。そう考えると深い話だ。

 深い話なんだが……」


 と、ここで周りを見渡して。


「無限湧きを喜んで稼ぎをやった後でいう話じゃねぇんだよ」


 なによりも恐ろしきはゲーム脳といったところだろうか。

 呆れ顔で笑うユウキの背後で、パラミはいつもの無表情を取って、ぼそりと一言。


「……気付かれたかと思った」

挿絵(By みてみん)

R・・・サイト内のランキング

E・・・ブックマークや評価で伸びるスコア変数

F・・・作者が小説を更新する頻度


挿絵(By みてみん)

M・・・作者のモチベーション


更新持続率はMに比例する。

以上の公式より、さらに続きが読みたい場合はEの値を増やすことが有効に働くことが数学的に証明できる。

ブックマークと評価よろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)

面白かった回に「いいね」を押すことで強化因子が加わり、学習が強化される(1903. Pavlov)


※いいね条件付が強化されると実験に使用しているゴールデンレトリバー(上写真)が賢くなります。

※過度な餌付けはご遠慮ください。


挿絵にはPixAI、Harukaを使用しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ