オカルトチャンネル異世界講座vol.12
♪~てててて~ん
「オカルトチャンネル! 異世界講座!」
♪~な~んでだ? な~んでかな?
「今日のテーマはRPG的異世界の花、戦闘職についての後編です~」
♪~てん、ててん
「前回いいとこで終わった上に1回休みが挟まりましたからね!
今回はいよいよゲームでもおなじみ、ファンタジーな戦闘職の話です!」
♪~ちゃらーん
「前回では魔法ありきの異世界での人間同士の戦争で活躍した戦闘職だったけど、今回はいよいよ対魔物のモンスターハンターな職業の話よ~。
盛り上がっていきましょ~」
・前衛のメインウェポンの花形は剣!
「ということで、ここからようやく剣の時代です!
バトルと言えば剣ですよ!
ファイター、ソードマン、サムライ、戦士、魔法剣士!
剣を使えない前衛職はもぐりです!」
「確かにその辺はイメージ通りよね~。
でも、対人での戦闘は槍がメインだったのに、どうして突然剣が活躍するようになるのかしら~?」
「それは戦う相手が変わったからですね。
前までは戦う相手は同じ人でした。
ぶっちゃけ人ってへなちょこなんですよ。
種族として耐久にパラメーターが全然振られてないんです」
「まぁそうよね~。人は簡単に死ぬわよね~。
だからこそ、戦争では重装甲を纏っていたのよね~」
「つまりゲーム的に言うなら、HPも防御力もへなちょこな所に、装備で防御力を上げていたのが人だったんです。
そんな敵相手には、防御無効やガード無効特性を持つ槍やハンマーがメインウェポンになったという話です」
「でも魔物は違うのよね~」
「そうです! 魔物は装備で身を固めません!
防御力も生身の人と変わりません。
違うのは圧倒的なHPです!」
「ということはゲーム的に言うなら、剣は攻撃力が高いから選ばれたの~?」
「お姉様、真面目に考えてください。
厳しい修練を積んだ剣士ならいざ知らず、素人のお姉様が剣でまともな攻撃力を出せると思いますか?」
「思わないわね~。
ハンマーを振り回したり、槍を振り下ろした方がいいわ~」
「その2つは重さと遠心力を攻撃力にできますからね。
しかし、剣の場合は刃を的確に相手に向ける必要があります。
向けられたにしても、斬撃でダメージを与えるにはある程度以上の筋力が必要。
つまり、剣としてだけ見た場合、攻撃力では槍やハンマーに劣ります」
「大剣は~?」
「モンハンで大剣使ったことありますかお姉様。
重くてまるで動けないでしょう」
「どうしても動きがもっさりしちゃうのよね~」
「しかし剣には槍や斧にはない明確な利点があります。
それは、HPが圧倒的な対魔物との戦闘だからこその特性。
つまり、腕や足、触手などを切り落とせる部位破壊能力です!」
「なるほど~。
言われてみれば当たり前なんだけど、これってゲームとかじゃあまり意識されないわよね~」
「部位破壊が実装されているゲームはありますけど、その場合も部位毎にHPが決まっていて、HPを削るという意味では剣も槍もハンマーも同じですからね」
「なるほど~。
剣にだけは、一撃必殺能力があるのね~」
「その通りです!
だいたいの魔物の部位は本体から切り落とせばすぐに動かなくなります!」
「その言い回しだと、切り落としちゃうと2対1になって逆に苦戦するパターンもありそうね~」
「そして、圧倒的なHPのある相手との戦いで重要なのは実は攻めよりも守りです!
何故なら、HPの高さはつまり長期戦になるという意味だからです!」
「その分こちらが攻撃される機会も増えるということね~。
そこで相手の部位を破壊できていれば~……」
「はい! 攻撃の手段が減ります!
最終的には威力35名中95のたいあたりだけ気にすればいいのです!」
「第四世代以前の仕様じゃないの~」
「まぁ実質わるあがきですね」
・デバッファーは魔物との戦闘で必要不可欠!
「もうひとつ、これまでの歴史では影に隠れていた職業が活躍します。
それが所謂、デバッファーです!」
「デバフ、つまり、状態異常やステータスを低下させることをメインにする職業ね~。
盗賊や狩人、呪術師みたいな印象かしら~」
「だいたいそうですね。
何故これらの職業が活躍するのかわかりますか?」
「それはやっぱり、相手のHPが多くて長期戦になるからでしょ~?」
「そのとおりです!」
「では逆にこちらの能力を強化するバッファーはどうなの~?」
「それは実はもう出てますよ。
軍の戦意を向上させる騎士はバッファーですし、魔法使いは自分を守らせるためや暗殺者を発見しやすくするために兵士にバフをかけていました。
そして、騎士も魔法使いも同じ仕事を対魔物戦でもすることになります。
長期戦ではデバフ同様、バフも当然重要です」
「ならどうしてここで急にデバッファーがでてくるのかしら~?」
「まず、対人では個々にデバフをかける意味が薄かったというのはあります。
しかしそれ以上に、どうしてもデバフに卑怯なイメージがあったことがこれまで使われなかった大きな理由ですね」
「なるほど~。戦場は騎士が名乗りをあげるような世界だったものね~。
そこでデバフなんて使ったら卑怯に感じちゃうわ~」
「忍者は平気で使いましたけどね」
「汚いわ~、さすが忍者、やることが汚いわ~」
「汚いとはいいますが、基本的には勝てばいいんですよ。
ただ、デバフの問題はむしろ戦闘終了後にあるんです」
「なるほどね~。戦争で勝利して領地を占領しても、そこの人がデバフの後遺症に苦しんでたらそもそも戦争の意味がなくなっちゃうのね~」
「単純に相手を殺すために戦争するなら別にいいんですけどね。
最終的に皆殺しにするのは同じなので」
「そういうたまに見えちゃうこの世界の非情さがリアルで好きよ~」
「むしろ問題なのは、戦闘後に相手じゃなくて土地に残るデバフですよ」
「毒ガスとか放射能汚染とかね~」
「そうです!
なので、モンスターハントでは平気で毒ガスや戦術核魔法を使います!
高い攻撃力とデバフ効果で一石二鳥です!」
「発想がえげつなさすぎるわ~」
「大丈夫ですよお姉様。相手は人間じゃないので」
「それ普通に同じ人間と戦う時にも言ってた気がするのよね~」
・新概念、探索職!
「そしてモンスターハントで忘れちゃいけないのが探索職です。
実はこれ、今までになかった概念なんですよ」
「斥候でしょ~?
戦争での斥候は重要だと思うんだけど~。
戦闘中も暗殺者を探すわけだし~」
「確かに。しかし、そういった対人戦での探索職は基本的にはすべて無用の役職になりました。
これから登場する新概念の探索職は、所謂ダンジョン攻略のため、罠を解除したり扉を開ける役職ですね」
「なるほどね~。モンスターとダンジョンはセットだからね~。
その手のローグライクゲーをやる時はパーティに必須なのに忘れてたわ~」
「これまでの戦争の目的は名誉であり敵を殺すことであり領土を拡張することでした。
しかし、これからのモンスターハントの目的は財宝やカネを回収することです。
探索職がいなくてはこれらを効率的にこなせません」
「それと、ダンジョン内の罠という新たな敵対概念が生まれちゃったからね~。
納得だわ~」
・重要度は同じなのに需要爆増! 回復職!
「そういえば今ダンジョン攻略系のローグライクゲーの話で思い出したんだけど、パーティに1人回復職も必要になるわよね~」
「流石ですお姉様! その通りです!」
「でも回復職自体は以前から居たわよね~」
「もちろんです。重要度は前と変わらず最重要です。
しかし、雇用需要は爆増しました。
何故かわかりますか?」
「それは、戦場でもパーティでも、回復職が1人必要なのは同じことだからでしょ~?」
「その通りです!
回復職は1人いればいいですからね。
戦場なら半径5kmに1人いれば大丈夫でした。
しかしモンスターハントでは、パーティ単位で1人必要です。
結果的に、価値は変わらないのに需要が爆増してしまったのですね」
・バランスの良いパーティは?
「それじゃ、モンスターハントでバランスのよいパーティ編成を教えて~」
「基本はやはり、前衛2人と後衛2人に+1ですね。
前衛に剣を使うアタッカーと、攻撃からパーティを守るディフェンダー、
後衛にデバッファーとヒーラーを置いて、残り1枠がフリーです。
この4人にサブで探索役技能を持つものがいないならここが探索職。
短剣を使い回避に特化するなら前衛で、弓を使い回避に劣るなら後衛です」
「前衛後衛の意味も人間同士の戦争の頃とは大きく変わったわね~」
「だいたいどのギルドもこの構築を推奨していますが、特殊なケースが3つあります。
1つ目が、探索職5人です」
「あ、それはわかるわ~。
戦闘は回避して、ダンジョン内のドロップだけ回収するのよね~」
「そのとおりです!
戦闘の意味が変わったからこその概念ですね!」
「次に、ディフェンダー1枠、探索職3枠、ヒーラー1枠のパーティです。
探索を2枠にしてディフェンダーを追加したり、2枠にしたまま4人編成にする場合もあります」
「これはなにかしら~?
探索中にエンカウントするリスクケアってわけじゃなさそうね~。
う~ん……わからないわ~」
「これは、ダンジョン内で死にかけているパーティを回復させ、報酬を受け取ることを目的としたパーティですね。
ディフェンダーは死にやすいので、2枠にしておくとディフェンダー欠損パーティにそのまま1枠を合流させることができます。
逆に4枠の場合、死にかけのメンバーを引き取ることができます」
「これこそまさに新概念だわ~。
そうよね~。そういうことも考えられるようになるのね~」
「最後は探索職1人と魔法使い×4ですね。
多分これが一番強いと思います」
「え~? なにこのパーティ、どうやって運用するの~?」
「戦術核魔法ですべてを消滅させてから探索役が放射能防御装備でドロップを回収します」
「世紀末ダンジョンアタックやめてもらえるかしら~。
しかしこれはいくらなんでも~……」
「南極条約違反だぞキリヤぁ!」
「うぎゃぁぁぁぁああああ!!」
「悪は滅びたわ~」
「相手がモンスターに変わったとはいえ騎士の名誉が失われたわけではない!
貴様もエルフの騎士を名乗る以上、非道に身を落とすな!」
「外道騎士は数あれど、キリヤちゃんにはくっ殺系の姫騎士でいてほしいわ~。
お師匠様~、私少しお仕置きしてもいいかしら~」
♪~てててて~ん
「今回ばかりは見逃そう」
♪~な~んでだ? な~んでかな?
「やったわ! 善は急げ、後は任せました!」
♪~てん、ててん
「……キャラ作り忘れてるぞー。
やれやれ、それではまたな」
♪~ちゃらーん
「それで今回は僕なんですか」
「そうだな。キリヤのやつは……」
ごめんなさいお姉様! ごめんなさい!
ほらもっと反省しなさい~。
ひゃん! ごめんなさいごめんなさい!
「ご覧の有様だよ」
「なんというか、その、申し訳ない……」
「まぁそれとは関係なしに、今日は君に修行をつけたくてな」
「それはまた何故」
「本編を見ていて思うところがあってな。
でははじめよう。ドイツ語でボールペンは?」
クーゲルシュライバー。
「腹から声を出せ!」
クーゲルシュライバー!
「もっと必殺技っぽく!」
クーゲルシュライバァァァァ!!
「よしその勢いで続けるぞ! 統一!」
アインハイトォ!
「黙示録!」
アポカリプス!
「買い物かご!」
アインカウフスヴァーデン!
「闇!」
ドゥンケルハイトォ!
「雷鳴!」
ドンナーグロール!
「掃除機!」
シュタウプザウカァァァァ!!
「破壊者!」
ツェアシュトゥーレア!
「魂の守護者!」
ゼーレンヴェヒタァ!
「幼稚園児!」
キンダーガーデンキングゥァァァ!
「黒い森!」
シュバルツヴァルト!
「黒い兄弟!」
シュバルツブルーダー!
「疾風怒濤!」
シュトゥルム! ウントゥッ! ドランクゥゥウゥ!!
「神経!」
ネルフ!
「奇跡!」
ヴンダー!
「F型装備!」
フィールド偏向制御運用実験機AFCエクスペリメント!
「高速道度!」
アウトバーン!
「速度制限!」
ゲシュヴィンディヒカイツベグレツングゥ!
「よぉし最後だ!
腹の底から声出していけ!」
はいっ!
「必殺ぅ……!」
ベザンバダァトドゥ……!
「スピード違反!」
ゲシュヴィンディッヒカイツユーバーシュ! ライトゥングゥゥゥゥ!!
「どうしてドイツ語ってこんなにかっこいいんだろうな」
「シュの音の風を斬る感じかなと思います」
「ゲとかヴとかを普通に使うのもいいな」
「わかります。それで、キリヤさんは引き取っても……」
「後で私も楽しむからそのままでいい」
「すまないキリヤさん。僕には君は救えないらしい……」




