66-2:改めて自分たちのチートを実感してみた!
「では早速筋トレです筋トレ!
私がいつも師匠のところで……」
「それよりも、だ!」
「あだぁ!」
うさみみの隙間に振り下ろされる鉄拳。
「地下ドッグの壁がぼこぼこじゃねぇか!
もうお前に舵輪は握らせねぇからな!」
「そんなー!」
ということで修理業者を呼ぶことになるのだが、流石にドッグの規模がでかい。
複数の職人を手配することになったのだが、これがまずかった。
「「げ」」
お互いの顔を見て開口一番、表情を歪める2人の職人。
「仲が悪いんですか?」
「いや、仲が悪いっつーか……」
「俺達、違う師匠とこで鍛えられたんすよ。
なので仕事のやり方が全然違うっつーか……」
「なるほど……しっかり調べずに呼びつけてしまってすみません。
とりあえず壁を直すだけなので、今回はお願いできませんか?」
「むぅ……」
「わかりました。やってみます」
こうして不安が残る中、作業を始める2人の職人。
何かトラブルがあっては困るなと後ろから見守るユウキだが。
「そこのボルトは?」
「ちっ……6センチだよ。自分で道具を取るから……」
「……? ならこいつだな」
「え? あ、あぁ。ありがとう」
ところどころ、おかしなところで首を傾げつつコミュニケーションを取り、阿吽の呼吸で作業を進めていく2人の職人。
傍目に見て明らかに作業は順調なのだが、どうも2人の様子がおかしい。
結局作業は半日で終わり、2人に給金を払うのだが。
「あの……何か問題がありましたか?」
「いや、問題はなかった……というか……」
「何故問題が起きなかったんだ……?」
一体何が起きていたのか。
いや、この場合何が起きなかったのか。
疑問を感じたユウキがさらに突っ込んで質問をすると。
「実は俺達、違う単位や規格を使ってるはずなんすよ。
それで普通ならコミュニケーションエラーが起きるんですけど……」
「今回は何故かそれがまるで起きず、スムーズに仕事ができたんです」
「あぁ! そういうことか!」
合点がいくユウキだが、2人の職人は首をかしげる。
「えっと……理由がわかったんすか?」
「まぁわかったといえばわかったんですけど、わからないと言えばわからないというか……
ともあれ、ありがとうございました。
早めに作業終えてくれたんで、色つけときますよ。
2人でうまいもんでも食って帰ってください」
と、結局最後まで2人の職人は狐につままれたような顔をしていたが、その日の夜は2人で楽しく飲むことができたらしい。
「そういうことが普通に起きるんだなぁ」
「何かあったのか?」
興味深そうに頷きつつ戻るユウキに何があったのかを問いかけるヨッシー。
「いや、俺達に何のチートもないってのも嘘だなと思ってさ。
全言語の自動翻訳。改めてとんでもないチートだよ。
これが機能していれば、俺達の周りでだけは共通規格が成立しちまうんだなぁって」
共通規格。現代に生きる人間にとっては当たり前でしかない。
ソニーの製品にもパナソニックの電池が使えるし、どのメーカーの文房具でも定規の10センチは同じ10センチだ。
こうした規格と単位の統一が行われたのは工業化末期。
それまでの職人は、所属毎に別々の規格や単位を使用していた。
当然ながら、異なる規格と単位を使う職人は連携して働くことができない。
統一した方がいいことは全員がわかっている。
問題は何に統一し、それを誰が音頭を取るかということになる。
つまり、それぞれの職人派閥がお互いの影響力を拮抗状態に保っており、1つの派閥が支配的にならないことが問題なのだ。
当然、特定の集団が支配的になればそこに利権が集中し、市場の秩序は崩れてしまう。
故に人々は意図的に拮抗状態を維持するのだが、それが共通規格の成立させないことに繋がる。
これは集団社会のジレンマのひとつだ。
そうなると困るのが社会を統治する王となる。
王としては小競り合いで全体の労働効率が低下する現象は容認しがたい。
そこで、王の鶴の一声が単位を共通化する。
王に言われてはしょうがないと容認された共通単位は、派閥間の後腐れを最小限の物にするのだ。
「話は聞かせてもらったわ~! 世界は滅亡するわ~!」
「な、なんだってー!」
「……と。一応乗ってやったが、どうしたキバヤシ」
「共通規格! 共通規格よ~。
それを定めることで労働効率を上げると同時に集団の結束力を高めるの~。
そこで生まれた結束と余剰労働力で死国探検隊を育てるの~」
「そりゃまた悠長な話だな。
というか、それ俺達のすることか?
ただでさえ異世界スローライフになりかけてるんだ。
俺達の目的はオカルトだぞ、オカルト」
「いえ、これは確かなオカルトのリアル体験になるわ~」
キバヤシになりきったサダコ姉。
存在しないメガネをくいっと上げて。
「単位は支配の象徴よ~。
すなわち、影から世界を支配することに等しいの~。
かつて、この方法で世界を支配した組織があったわ~。
それと同じものをこの世界に作ることは、契約の箱を手にいれるという最終目的にも繋がるのよ~。
箱には置くべき場所というものがあるんだからね~」
「……お前、それは、まさか……」
それはオカルトに触れた者なら誰もが知る名前。
実在する世界一有名な秘密結社。
「この異世界に、フリーメイソンを作りましょう~」
異世界オカルトチャンネル7!
第17章、秘密結社を作ろう! 開幕!
――異世界オカルトチャンネル7! ~空想魔撮シリーズ~
♪未来へ一歩一歩~
近づいていこう~
――song by「このLoveが聖なる書」
美浦恵理子
「遊びにおいでよ!
箱根、彫刻の山美術館!」
――異世界オカルトチャンネル7! ~空想魔撮シリーズ~
「こんな演説をされてしまったら、弱った人は盲信してしまいます……!」
「言い方は悪いけど、振られた女性にそっと寄り添うのとやり方は同じなのよ」
「なんか、親近感から同情を覚えちまうな……」
――このチャンネルは。
「フリーメイソンの世界支配は既に完了している」
「つまり、最後のレジスタンスは……」
「そうよ~。奴らは滅ぼすべき私達の敵なのよ~」
ゼウス
オーディン
イシュタル
「本当にフリーメイソンの入会の儀式は合理的だ」
「学がないと魔術的に見えるけどな」
「ある意味ブラックな社訓を叫ぶ社長といっしょにシュプレヒコールするのと心理的効果は同じなのよね~」
天照大神
ポセイドン
イルルヤンカシュ
「ならザギンでシースーはどうだい?」
「そいなぁま、ぼつぼつきばいやんせ!」
「俺達の前ではリントの言葉で喋れよ」
――ご覧の神々の提供でお送りします
「倒す必要はないわ! 目的はただ……」
「リュックはもう諦めろ!」
「もうここで死ぬ他ないのよ!」
――異世界オカルトチャンネル7! ~空想魔撮シリーズ~
「私達はまだ、本物の狗神を知らない」
――この後すぐ! 衝撃の結末を見逃すな!
「人々が集まる!」
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挿絵にはPixAI、Harukaを使用しています。




