49-2:相手を呪い殺す方法を真剣に相談してみた!
この呪いの正体を探る戦いにおいて、監修を務めるナイノメは様々なルールを設けている。
「期間は3ヶ月。
拠点はここ、イェール・カーンのいつもの一軒家よ。
門限は夜10時。朝は6時からね。
門限破りはルールで即敗北とするわ。
ただし、3ヶ月間で5日だけ外泊を認めるわ。
外に出て取材することもあるだろうからね。
その場合、3日前までに申請を出してね」
「つまり、事故物件に追い込んだり、逆に、清浄な結界に逃げることもできないのか」
「リフォームもできないわね~。ここ賃貸だし~」
「各自の部屋は本人以外立ち入り禁止よ」
「仕方ないわね~。合鍵返すわ~」
「お前また作ってたのか!? もういい加減にしろよ!」
「ただし、共有スペースである居間やトイレは引き続き共有ね。
相手の名前が書いてある持ち物を勝手に処分しちゃダメよ」
「つまり、そこに呪物を置くことはできてしまうんですね……」
「でも少なくとも自分の名前も書かないといけないんだな。諸刃の剣だ」
「呪物なんてものに本当に刃がついているなら、な」
「呪い肯定派の勝利条件は、誰の目にも明らかな状態で否定派の両名が呪われており、その対処が不可能な状態が続き私からのドクターストップが入った場合」
「ちゃんとドクターストップを入れてくれるのは安心できるな」
「及び、期間終了時点で呪いの効果がでており、その解呪方法が判明していない場合ね」
「呪いの効果はどう客観的に判断する?」
「健康診断を受けてもらい、各種体の基本的な値を測らせてもらい、そことの乖離値を見るわ」
「人間ドック受ける良い機会だわ~」
「呪い否定派の勝利条件は3ヶ月を五体満足で過ごすこと。
もしくは、期間終了時に自身にかけられている呪いの原因と効果と解呪方法を特定し、私にそれを伝えることよ」
「なるほど。自力で解けなくても原因と効果を特定し、解呪方法がわかっているならこちらの勝ちでいいんだな」
「神話では呪いの解呪に超レアアイテムが必要なケースなんかもよくあるしね~」
「ただしその場合も、ドクターストップが入った場合は終わりなんだな」
「それともう1つ、肯定派の敗北条件があるわ」
「ここまでで十分に思うけど、なにかしら~?」
「肯定派に呪いの効果が出ており、これを期間終了時点で自ら解呪できない場合、及び、私のドクターストップが入った場合ね」
「なるほどな。ミイラ取りがミイラになるなら終わりだ」
「狗神は禁止カードにした方がいいかもね~。
丑の刻参りは~……」
「門限があるからできないだろ」
こうして各種ルールが確定した後で、それぞれが自室に分かれて戦略相談に入る。
なおこの期間中、各自の部屋には監視カメラとマイクが備え付けられ、編集室でナイノメのみが知るパスワードで確認が可能となることを全員了承している。
プライバシーは気になるが、それよりも命の危険がある火遊びなのだ。
「それで……まじでやるんだな?」
「私達はいつだってガチだったでしょ~? ここで手心をかけるなら、それはもうヤラセなのよ~」
そう言われてしまうと強く出られないのがユウキである。
「……わかった。わかったよ。
オカルトとナイノメを信じよう。
ここからは俺も全力でヨッシーを呪ってやる」
「漢字間違えないでね~」
祝ってやることにはならないだろう。
「それじゃまずは作戦会議といくか。どう攻める?」
「そうね~。
大きく分けて、トップダウンとボトムアップの2つの攻め方があると思うわ~」
「ここでいうそれはどうなるんだ?」
「呪いの正体から探るのがトップダウンで、呪いの方法から探るのがボトムアップかしらね~」
「例えばコトリバコの場合、人間の思念や霊魂、及び、衛生管理の問題から攻めてコトリバコの作り方を自力で編み出すのがトップダウンで、地域の伝承を聞き込みしてコトリバコの作り方を調べるのがボトムアップってところか?」
「そんな感じね~。
私はトップダウンで攻めてみるわ~」
「なら俺はボトムアップだな。
怪談の聞き込みで慣れてるからいけそうだ。
しかし、トップダウンなんてそんなの、ヨッシーの本領だと思うんだが……」
一方の否定派陣営。
「なるほど、それがトップダウンとボトムアップの考え方なんですね」
「キリヤさんにしては理解が早くて助かるな」
「そうなるとやはりヨッシーさんはトップダウンから対処法を考えるべきだと思いますね」
「いや、僕は今回トップダウンの手法を捨てる」
まさかの発言に目を丸くするキリヤ。
「どうしてですか!?
だって原因から考えるトップダウンって科学の力を使う呪いへの対処法ですよね!?
ヨッシーさんが呪いに対抗するならベストな方法のはずです!」
「逆だよキリヤさん。
それが成立するなら、あえて今更呪いへの対処方法を考える必要がないんだ」
「あっ! そうか!
原因がわかってるならかけられた後でもすぐに対処できるけど、原因が想像もできないなら事前に調査しないと対処が遅れるんですね!」
「そういうことだ。
サダコ姉もその程度のことはわかっているはず。
僕が対処可能な呪いで攻めてくるはずがないんだ」
そんな会話を聞いたわけでもないのに。
「絶対にそう考えるわ~。ヨッシーならそう動くわ~」
「間違いないな。あいつはそういうやつだ」
喧嘩をするほど仲が良いとはよく言ったもの。
お互いがお互いの性格や行動パターンを完全に把握しており、その上で戦略をたてている。
しかし、ここでサダコ姉が一枚上手である。
「だからこそ、トップダウン側に盲点が生まれる。
私はその一点で突き殺す」
改めてユウキは身を震わせた。
だから、この女はヤバイ。
この女にだけは、逆らっていけないのだ。
この瞬間、既に勝負はついていたように見える。
しかし。
「でもお姉様はそこを攻めてきます。
あの方はそういう方です。
そしてそれは、堅牢な城を攻める際の定石でもあるのです」
こと、戦にかけては異世界最凶のバーサーカーとして戦術面からノウハウを叩き込まれたキリヤ。
その直感は的確に真実を見抜く。
「私がトップダウンでの防御に回ります。
私も、いつまでもお姉様のいいように扱われたくありませんし、なにより、死にたくもないので」
異世界オカルトチャンネル7! 第3部醸造編開幕!
第13章、呪術決闘編!
はたして呪い呪われのオカルトバトルの結末は!?
刮目せよ、これが呪いの正体だ!




